これから先、嫌というほど「日銀の政策変更で変動金利が上がる」「住宅ローン破綻が急増する」みたいな記事が(日経はないと思うけど)出てくるよ。煽り系ニュースにそわそわしなくてすむように、変動金利ローンのおさらいしておきましょうね。今日の #こぐまざっくり解説
nikkei.com/article/DGXZQO…
【大前提】
適用金利=基準金利(変動) - 優遇幅
基準金利=短期プライムレート + 1.0%
短プラ=TONA(ほぼ政策金利) + 1.2~1.5%

今は基準金利がどこも2.5%弱ぐらいだけど、そこから2.0%超の優遇幅を差し引いて足元0.4%を切る適用金利になっているくまね。
話題に日銀だけど、今はマイナス金利政策(+YCC)というのをやっていて、金融機関が日銀に置いている預金(日銀当座預金という)の政策金利残高(ざっくりいうと余分)にー0.10%という金利をつけている。結果として短期金利は低く抑えられて、TONA(無担保コール翌日物)は概ね‐0.05%~0%ぐらいにいるわけね。
結果として短期プライムレートも2009年1月から変わってなくて、今は1.475%なの。これに1%を足した2.475%が多くの銀行で変動金利の基準金利になっている。

変動ローンの適用金利が上がるのか、それはどれくらいかってのは、短プラがかつてどうだったか、これからどうなるかってことを考えれば良い。
かつて基準金利、短プラ、TONAを見てみよう。2007年のTONAが0.5%の時に、短プラは1.875%でスプレッドは1.375%だ。過去20年で見るとこのスプレッドは概ね1.1~1.5%程度と考えておけば良さそうくまね。
多少幅はあるものの政策金利が上がれば(利上げ)、その幅と同じだけ変動ローンの適用金利は上がると思っていいだろう。足元の変動ローン金利(新規)は、低いところだと0.3%台になっている。これが同じ銀行が提供するフラット35の固定金利1.3%台と同じ金利負担になるのはどういった状況だと思う?
そう、日銀が現状のマイナス金利政策を解除して、その後0.25%幅の利上げを4回やってやっとこさ同じ水準になる。まあ確たることは言えないのだが、これまでの政策運営や日本経済の現状を考えると、そこまでいくにも相応の期間が必要になりそうくまね。
じゃあ、1%の利上げなんてもんじゃなく3%、いや5%といった水準まで利上げされるだろうか?(煽り記事はえてしてそういう破滅シナリオで恐怖を煽る)

おそらくそのようなことが起こるのはインフレが加速してハイパーインフレのリスクが見えてきた時なんじゃないかな。
個人的にはそうそう起こらないテイルリスクだと思っている。少なくとも今はね。とはいえ、ある程度テイルに備えたいと思うのならば、繰り上げ返済の原資を確保しておくとか、インフレ高進した時にプラスになりそうな投資をしておけば良いと思う。
僕は金融機関勤めなので「○○がいいですよ!」みたいなことはTwitterで言わない。でも、煽り記事に惑わされて過度に変動ローンを恐れないでも良いと思う。やっちゃダメなのは、もしもの時の備えなしに、自分の収入を超えた過度なレバレッジでローンを組むこと。
冷静に考えて、自分の資力にあったローンを組むのであれば変動ローンも危険物ではない。「変動する」ことは確かにリスク(不確実性)ではある。でも、しっかりと理解すれば、自分が取ったリスクに見合うリターンがある。それを自分で考えることが金融リテラシーだとこぐまは思うよ。
それでも不安な人は(僕は立場上アドバイスとかできないので)専門家に相談してみるといいくま。コラム書いてPV稼いでるFPとか怪しげな人も多いけど、モゲ澤さん @takashishiozawa はいつも分かりやすく解説してくれてるので参考にすると良いくま。

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Jan 30
中央清算機関の話が出ているので良い機会だからデリバティブに関するありがちな誤解についてお話ししようくまか。世界の店頭デリバティブ残高は4京円を超え…とデリバティブ取引のリスクが喧伝されるじゃない?しかしこの「残高」が曲者なのよ。#こぐまざっくり解説 nikkei.com/article/DGXZQO…
単純化した例を考えてみよう。

金利スワップ、5年OIS、10億円、固定受けサイドの時価が10万円プラスって取引があるとする。

AはBとOIS固定受けを、
BはCとOIS固定受けを、
CはAとOIS固定受けを、
それぞれ想定元本10億円ずつ取引した。
3人はそれぞれOISの固定受けと固定払いを10億円ずつ契約している。自分にとっての時価評価額は固定受けのプラス10万円と固定払いのマイナス10万円でネットゼロになる。

マーケット全体には3人が行った3本のOIS、想定元本30億円分の取引がある。
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Oct 27, 2022
明日は日銀政策決定会合くまね。ワイら庶民、金融政策には興味がなくても住宅ローンがどうなるかは気になるところ。以前 #こぐまざっくり解説 した住宅ローン金利、金融政策との関係を簡単にまとめておくくまね。まずはローン金利に関係ありそうな日銀の金融政策を整理しておきましょうくま。
現行の(ローンに影響する)金融政策は
①マイナス金利
②YCC(イールドカーブコントロール)
のふたつくま。①は金融機関が日銀に預ける当座預金の一部残高について-0.10%のマイナス付利を行うもの。短期金利を低く抑え、国内企業にお金が十分回るようにしている。
②は長期金利(10年国債金利)を0%を中心に上下0.25%のバンド内に抑えこみ、長期ゾーンまで金融緩和の効果を徹底させるもの。これによって現状は10年金利のみが0.25%に抑さえつけられて凹む歪なイールドカーブが形成されているくま。
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Oct 19, 2022
前回から1ヶ月くらいあいたね。多くの人にとって身近な問題である住宅ローン。こぐまも詳しいわけじゃないけど、前回は変動金利ローンについてお話したから今回は固定、特にフラット35について考えてみたくまよ。今日の #こぐまざっくり解説 はみんな気になるフラット35、金利は上がるの?くま。
これからフラット35で持ち家購入を考えてる人、今は変動金利でローンを組んでいるけど、金利が低いうちに固定への借り換えを考えている人、みんな気になるフラット35の金利について、どのようにローンが提供されているのか基本を学びながら一緒に考えてみましょうくま。
フラット35は住宅金融支援機構(以下、「機構」)をバックに民間金融機関が提供する長期(21~35年)固定金利の住宅ローン。もともとは住宅金融公庫が財政投融資制度の資金を用いて持ち家取得を推進するために融資してたけど、構造改革を受けて公庫は廃止、独立行政法人化されて今に至るくま。
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Oct 6, 2022
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これは将来の年金負債が現状保有している資産で全てカバーされていることを意味するくまね。ファンディングレシオが100%を超えた年金基金は次にどうしたいか。そう、この利益を確定させたいと思うくまよね。年金バイアウトを通じた基金の清算を狙う。年金基金の運営って企業にとって重荷だからね。
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Oct 4, 2022
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