今日の「#地理お役立ちニュース」は、イラク南部、ティグリス・ユーフラテス川の水位低下について。
先日、ヴェネツィアの運河で水位が低下し、運河の底の泥が露出、悪臭も発生して大変なことになっているというニュースがありましたが、そちら(異常な降水量の少なさ)とはやや原因が異なるようです。
ティグリス・ユーフラテス川といえば、世界史で一度は耳にする古代メソポタミア文明を育んだ大河です。
源流域は近いですが、ティグリス川とユーフラテス川に分かれており、イラク南部で合流した後はシャトルアラブ川と呼ばれています。
メソポタミアという言葉は、ギリシャ語の「川の間」という意味で
まさしく両河川の間の地域がメソポタミア文明の中心地だったことを示唆しています。
源流域はトルコ南部を走るトロス山脈から連なる山地の東端付近にあたり、雪解け水も多く供給されています。そのため、春になると洪水を繰り返していました。
この辺りはナイル川と話が似ています。
しかし近年は、
洪水防御(治水)のためだけではなく、農業用水などの利水目的のために流域のトルコ、シリア、イラクにおいて多数のダムが建設されました。
これにより下流の水量が大きく減少し、国家間の諍いの種になっています。
複数の国を跨って流れる河川、いわゆる国際河川の水資源の管理は大変難しく、
上流部の国がダムを建設し、下流域の国が反発するという構図が度々見られます。
今回の水量減少は異常気象によるものというよりは、かねてより問題となっていた「水のため込み過ぎ」が原因だった可能性が高そうです。
ただ、これらの地域は乾燥地が多く、水資源の重要性が高いことも確か。
下流域から放水せよ!と言われても、簡単に首を縦に振ることができないであろうことは想像に難くありません。
今回はイラク北部(モスルダムなど)からの放水をふやすとのことで解決に向かいそうですが、根本的な問題はそのままですね。
難しい問題ですし、今後どうなる事か…。
今回はこれくらいで。

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