Thread by @mokosamurai777

地理に関心がある皆さんへ。
国から系統地理を見ると、地理の要素や要因をより鮮明に理解できます。地理の学びは物事を見る解像度を引き上げてくれます。
本日の一国は「#シンガポール」。マレー半島の先端に位置する都市国家。今も埋め立てにより領土拡張を続ける島国です。
では、参りましょう。

シンガポール共和国は、マレー半島の先端、赤道直下に位置する島国です。
ジョホール水道で半島部のマレーシアと接し、西はマラッカ海峡、南はシンガポール海峡と接しています。
大小合わせておよそ70の島々からなる、国土面積720㎢ほどのマイクロステートです。
埋め立てにより領土が拡大しており、

建国以来国土面積はおよそ1.25倍に拡大しています。
国名は、サンスクリット語の「ライオン＝シンハ」と「町＝プーラ」を合わせたものが元という説があります（諸説あり）。
独立前の「マラヤ連邦」のマラヤも、サンスクリット語の「山地」ら来ており、共にインド系の言葉がルーツになっています。

ちなみに、有名なマーライオンの逸話にも、11世紀、マレーシアの王子が今のシンガポールを発見した際、ライオンが現れたことから頭部がライオンに（実際はトラだったという説も）、そして体が魚なのは、かつてこの地がテマセック（マレー語で「水域」という意味）だったことに由来し、海のイメージを

魚の意匠で表現したものです。
シンガポールの地の最初に記録に現れるのは、2世紀頃プトレマイオスによるとされます（彼はマレー半島を「黄金半島」と名付けた）。これについては正確ではなく、3世紀の中国の書物によるという説もあります。
いずれにしても、この地域は7世紀頃には先述のテマセック

という呼び名で船舶の寄港地として知られるようになり、1299年、スマトラ島から渡ってきた仏教国シュリーヴィジャヤ王国の王子によりシンガプーラ王国が建てられました。
しかし、14世紀終わり頃には外部からの攻撃を受け、衰退したと考えられています。
その頃から先述のテマセックと呼ばれており、

船舶の寄港地としてその名は残っていました（ヒンドゥー教国、マジャパヒト王国の影響下にあったと考えられる）。
15世紀にはマラッカ王国の支配下に入り、1511年、ポルトガルにより占領、1824年にはイギリス植民地となり、交通の要衝である利点を生かし、中継貿易を営み発展しました。

第二次世界大戦では日本による占領を受け、1963年、現在のマレーシアと連邦を組む形で独立。しかし、1965年、マレーシア連邦からも独立し、現在に至ります。
マレーシア連邦から独立したのは、マレーシアはマレー人主体であるのに対し、シンガポールは華僑が多く、様々な方針が合わずに対立する状況が

続いたため。
1964年にはマレー人と華僑の間で死傷者を伴う大きな騒乱に発展したことから、関係修復は不可能と判断し、手続き的にはマレーシア連邦からの「追放」という形で独立が達成されました。
なお、現在もイギリス連邦加盟国です。

同国の国土はシンガポール島を中心とする島々で構成されます。

大半の地域は標高15m以下の低地ですが、最高点は標高165mのブキッ・ティマ山。シンガポール島の中央部に位置する花崗岩質の丘です。
また、北西部は同じく丘で構成されており、東部には砂地が広がっています。
先述の通り、独立以来、近隣諸国からの輸入や海底からの採取による土砂で周囲を埋め立て、

建国時の国土面積（580㎢）から現在は720㎢くらいまで拡大しています。

気候は赤道直下であることから、全域が熱帯雨林気候（Af）。明確な季節変化には乏しく、年間を通して高温多湿。
ちなみにブキッ・ティマ山は標高が高いため、他の地域よりは涼しくなっています。
都市部の気候は年平均気温

27℃ほど。年降水量は2,200㎜ほどでかなり蒸し暑い気候です。
11月から3月は北東モンスーン、5月から9月は南西モンスーンの影響下に入ります。
モンスーンが弱まる時期は降水量も減少。ちなみにブキッ・ティマ山を含む丘陵地帯はしっかり気候にも影響を及ぼし、風上の方が降水量が多くなる傾向が

あります。
降水量は多いものの水源が乏しいため、貯水池とマレーシアからのパイプラインを通した水の輸入で水資源を賄っています。
これは同国の安全保障上の弱点でもあるため、海水淡水化設備の導入、水路の出口に稼働堰ダム（マリーナ・バレッジ）を建設するなどの水資源確保の対策も進めています。

産業は、農業は国土の制約からそれほど盛んではない（豚や家禽類は多い）ですが、高付加価値の製造業、流通、記入、情報通信の拠点として確固たる立場を築いており、アジアNIEsの一角、そしてASEAN諸国の中ではトップを走る経済力を誇ります。
ただ、水資源、食糧の大半を輸入に頼る現状があり、それを

克服することが課題となっています。
国民一人当たりGNIは59,000ドル。やはり高いですね。

そして民族は中国系75％、マレー系13％、インド系10％。中国系の住民が多数派を占めます。
華人の国でありながら、文化的にはマレー文化圏の影響が強い、さらにかつてのヒンドゥー教系の王国による支配、

イギリス植民地としての歴史を反映して、公用語は中国語、英語、マレー語、タミル語の4言語が公用語となっています。
西欧化と経済大国としての発展を成し遂げながら、様々な文化圏の狭間にある複雑な国情があり、今後「シンガポール人」というアイデンティティがどこまで浸透するのか注目されます。

宗教は仏教が3割、キリスト教徒2割、イスラム教と道教が1割を超え、ヒンドゥー教が5％ほど。
この辺りにも多様性が伺えます。

このように、小さな国土に複雑な歴史と文化を抱えたシンガポール。「華人の国」と言われますが、一言でそうも断言できない、という実際の所はあります。
しかし、世界有数の

富裕国であることは事実で、今後も地の利と経済力を背景に、東南アジアの主要国として存在感を発揮していくでしょう。
今日はこれくらいで。