Thread by @mokosamurai777

地理に関心がある皆さんへ。
国から系統地理を見ると、地理の要素や要因をより鮮明に理解できます。地理は論理のイメージ化、俯瞰・具体化できると楽しい。
本日の一国は「#マーシャル諸島」。オセアニア、ラタック、ラリック2つの列島で、「真珠の首飾り」と称される島国です。
では、参りましょう。

マーシャル諸島共和国は、オセアニア地域、南西太平洋上に浮かぶ5つの島、29の環礁、1,000を超える小島からなる島嶼国です。
南にキリバスやナウル、西にミクロネシア連邦があります。
東側のラタック諸島、西側のラリック諸島はそれぞれ「日の出」「日没」を指しており、北西から南東方向に向かって

並行に走っています。

国名は、イギリス人船長ジョン・マーシャルの名に由来します。
ヨーロッパ人で初めてこの地に到達したのはフェルディナンド・マゼラン或いはアルバロ・デ・サーベドラとも言われていますが、この地を経由するオーストラリアから中国への航路を開拓したのがジョン・マーシャル。

それ以前には、マーシャル諸島やギルバート諸島はきちんと地図に描かれていなかったため、彼の名がつけられることになったようです。
ちなみに初の上陸者はスペイン人探検家のアロンソ・デ・サラザールで、1526年のことでした。
先住民はミクロネシア系の人々で、スペイン領からドイツ領、

日本の占領下時代、アメリカ信託統治領時代を経て、1979年に独立しています。

国土面積は181㎢しかなく、いわゆるマイクロステートの一つ。また、北のウェーク島（アメリカ領）の領有権を主張しています。
北緯5度から15度、南北およそ1,300㎞に渡って島々が点在しており、ラタック諸島にある

首都マジュロと、ラリック諸島にあるイーバイ島の人口が多く、特にイーバイ島は人口密度の高さが世界有数です（0.32㎢におよそ1万人が住んでいる）。
これらの群島は古代の海底火山の名残で、長年の侵食や沈下により中央島が海没、環礁となっている島が多いことも特徴。
中央には大きなラグーン

（礁湖）が形成されており、クェゼリン環礁はおよそ100の小島で構成された世界最大のラグーン（およそ840㎢）を持ち、この1つのラグーンの面積だけで国土面積の数倍もあります。
また、このような島々が多いことから国土の大半は低地で、平均標高は2mほどしかありません。
温暖化による海面上昇の

影響を、極めて強く受ける国の一つと言えるでしょう。

気候は赤道に近く、海洋性気候ということもあり典型的な熱帯雨林気候（Af）が支配的です。
12月から4月までは比較的弱い乾季があるものの、基本的には年間を通して高温多雨。
首都マジュロの1月平均気温は27.9℃、7月は28.1℃、年降水量は

3,300mmに達します。

経済は、ココナツ油脂（コプラ）と魚介類。しかし、大幅な輸入超過です。
また、タックスヘイブン（租税回避地）としての一面を持ち、便宜置籍船国としてはパナマに次ぐ世界2位です。アメリカとは自由連合盟約を結んでいることから多くの援助があります。
また、一部に

アメリカ軍の施設が存在し、その賃料も支払われています。

マーシャル諸島と言えば太平洋戦争時の激戦地であると共に、主要環礁の一つ、ビキニ環礁はアメリカの核実験場としても有名です（日本では第五福竜丸事件として）。
他にもいくつかの環礁で計70回近い核実験が行われ、それらの島々は今でも

ほぼ全てが高レベルに汚染されており、ごく一部を除き島民は帰還することができていません。
また、除染の過程で取り除かれた土砂などは、同じマーシャル諸島内のルニット島（18回実験が行われ、巨大なクレーターが形成され、汚染がひどく永久に封鎖）の「最終処分場」に運び込まれ、巨大な

コンクリート製のドーム（ルニット・ドーム）の中に閉じ込められています。
しかし、このドームからの汚染土壌の流出が懸念されており、今なお核実験の影響は強く残っている状況です。
国民一人当たりGNIはおよそ5,000ドルです。

民族はミクロネシア系のマーシャル人が95％で大半を占めています。

公用語はマーシャル語と英語。
宗教はキリスト教プロテスタントが85％、カトリックが10％ほどと、大半がキリスト教徒です。
ちなみに人口は4.2万人ほどで、アメリカを中心におよそ1万人の移民がいます。

日本史ではビキニ環礁などの特定地名で必ず耳にするマーシャル諸島。ただ、国としての知名度は

日本では高くはありません。
太平洋戦争、第五福竜丸事件など、ネガティブな歴史の話が前面に出がちですが、近年は観光業にも力を入れており、核実験所とならなかった地域は手つかずの自然も多く残る観光スポットでもあります。
環礁が並ぶ姿は「真珠の首飾り」と呼ぶにふさわしい美しさがあります。

また、日本占領下の時代に生まれていた高齢者を中心に、日本語を解する人もいます。
海面が1m上昇すると国土の4割が水没すると言われていることから環境対策にも熱心で、2050年にCO2排出量実質ゼロを目指す国でもあります。
機会があれば訪れてみては如何でしょうか。
今日はこれくらいで。

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