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東京大学医科学研究所システムウイルス学分野教授 The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan) Consortium主宰 一般社団法人G2P-Japan代表理事 週プレNEWSでコラム連載中→https://t.co/zLvSNcurTq

Oct 10, 2022, 18 tweets

#拡散希望 速報🔔 G2P-Japan🇯🇵の論文第14弾(カウントどこかでずれてました)を、Cell Host & Microbe @cellhostmicrobe に発表しました。本研究では、#オミクロン BA.2.75株(通称 #ケンタウロス)のウイルス学的性状を解明しました。
以下、本研究の概要です。1/18
cell.com/cell-host-micr…

2022年5月、インド🇮🇳で、スパイクタンパク質に新たな変異を獲得した #オミクロン 系統の亜株「BA.2.75」が確認されました。BA.5による第7波真っ只中の日本においても、BA.2.75の市中感染は各所で確認されています。2/18

これまでに見られなかった変異の出現や世界各国での検出を受けて、WHOは7月7日に、BA.2.75株を「懸念される変異株(VOC)における監視下の系統(VOC-LUM; variant of concern linages under monitoring)」に分類し、注視しています。3/18
who.int/activities/tra…

BA.2.75は、「第2世代BA.2 (second-generation BA.2 subvariant)」とも呼ばれています。ちなみに、BA.2.75株の #ケンタウロス という俗称は、以下のツイートが発端です↓ 4/18

BA.2.75は、BA.5と同様、BA.2の子孫として出現した変異株です。しかし、BA.2.75とBA.5は、系統的には異なる変異株です。つまり、BA.2.75は、BA.5とは独立に、BA.2から派生した変異株です。5/18

本研究ではまず、インド🇮🇳から報告されたウイルス配列の数理統計解析によって、BA.2.75の実行再生算数(図中「Re」)が、現在(日本🇯🇵を含む)世界で主流のBA.5よりも約1.2倍高いことを明らかにしました。つまり、BA.5よりも流行しやすいポテンシャルを持っていることを示唆します。6/18

次に、中和試験を実施しました。その結果、
1⃣ 3回ワクチン接種者の血清に対するBA.2.75の抵抗性は、親株であるBA.2と同程度でした。(※BA.5はBA.2よりも約2倍抵抗性)。7/18

2⃣ 4回ワクチン接種者の血清に対するBA.2.75の抵抗性は、親株であるBA.2の1.7倍でした。(※BA.5はBA.2よりも約1.2倍抵抗性)。8/18

3⃣ BA.1あるいはBA.2に感染したワクチン接種者(つまり、オミクロンのブレイクスルー感染者)の血清に対するBA.2.75の抵抗性は、親株であるBA.2と同程度でした。(※BA.5はBA.2よりも約2〜3倍抵抗性)。9/18

4⃣ BA.5ブレイクスルー感染者の血清に対するBA.2.75の抵抗性は、BA.5の1.7倍でした。10/18

5⃣ BA.5感染ハムスターの血清に対するBA.2.75の抵抗性は、BA.5の11倍でした。つまり、BA.2.75とBA.5は、免疫原性(抗体を誘導し、抗体で認識される性質)がまったく異なることを示唆しています。11/18

6⃣ BA.2.75とBA.5の免疫原性の違いは、BA.2.75感染ハムスターの血清を用いた中和試験の結果からも示唆されています。12/18

7⃣ そして、BA.2.75に対する10種類の中和抗体薬の効果も評価しました。この結果の詳細は、↓のG2P-Japan🇯🇵プレプリント第11弾の解説を参照ください。13/18

BA.2.75に対する3つの治療抗体薬、レムデシビル(図中「Remdesivir」)、モルヌピラビル(図中「EIDD-1931」)、パクスロビド(図中「Nirmatrelvir」;パクスロビドの成分のひとつ)の効果も評価しました。これらの薬は、BA.2.75にも有効でした。14/18

BA.2.75は、ACE2への結合力がきわめて強い株であることを実証しました。また、クライオ電子顕微鏡を用い、BA.2.75のスパイクタンパク質の構造を解明することで、ACE2への高い結合性の原理を明らかにしました。15/18

細胞融合実験の結果、BA.2.75の融合力は、BA.5と同様に、親株のBA.2よりも高いことを明らかにしました。16/18

最後に、Delta, BA.2, BA.5, BA.2.75の臨床分離株とハムスターを用いた感染実験を実施した結果、BA.2.75とBA.5のハムスターにおける病原性は、親株のBA.2よりも高いことを明らかにしました。17/18

まとめ▶️ BA.2.75は、
1. BA.5より流行しやすい
2. BA.5, BA.2とは免疫学的性質が違う
3. 病原性ポテンシャルはBA.2よりも高い
ことが明らかになりました。

↓は、本研究のまとめポンチ絵です。18/18

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