●HEPAフィルター空気清浄機は空気中のSARS-CoV-2を効率良く除去する
→natureの未査読論文に関する記事です。
COVID-19病棟に空気清浄機を設置する事で、空気中からウイルスが除去されているのを確認。
PPE着用でもマスクの漏れ等で起こり得る、院内感染を防ぐ手段として有用であると結論しています。
ウイルスのみでなく、病原性細菌が病棟の空気中を浮遊しているという興味深い知見も得られたようです。
個人的には一般外来での空気清浄機の使用も検討して良いのではないかと考えました。
COVID-19病棟ではfull PPEを着用し、病棟の換気も確保されています。
ところが外来では室内の障害物の多さ、診療上の会話量も含め、病棟よりも換気に関しては条件が悪い可能性が高いです。
無症状感染者が患者として来院する可能性、医療者のPPEも通常はサージカルマスクのみである点も、外来での感染リスクを高めていそうです。
空気清浄機を設置したほうがいいかも・・・です。
Real-world data show that filters clean COVID-causing virus from air
nature.com/articles/d4158…
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・COVID-19患者が多数受診する医療機関における検討により、ポータブル空気清浄機(portable air filters)により空気中のSARS-CoV-2ウイルス粒子を効率よく除去できる事が確認された。リアルワールドで効果が証明された最初の報告である。
著者らは、医療機関において患者や医療スタッフがSARS-CoV-2に感染するリスクを減少させる手段としてエアフィルターが有効である事を示唆している、と述べた。
・PPEの適切な使用にも関わらず、医療機関において患者から医療従事者への感染例が多く報告されてきた。このような感染事例の原因の一つとして、空気中のウイルス粒子が疑われている。これはSARS-CoV-2の主要な感染経路の一つである。
・空気清浄機の性能に関する初期の検討では、コントロールされた条件下における非感染性粒子(inactive particles)を除去する能力で評価されていた。
そのため、「実際の病棟のような環境で、エアフィルターがSARS-CoV-2をどの程度効率的に除去できるのかについては分かっていなかった」と共著者のVilas Navapurkar氏は語った。
「イギリスの医療機関では、隔離病棟が満床になった時に魅力的な追加対策として(attractive solution)、ポータブル空気清浄機を設置している。しかし、これが本当に有効な手段なのか、あるいは単に偽の安心感を与えているだけなのかを知っておく事は重要です」。
・ 空気清浄機が実際の現場で機能するかを検討するため、Navapurkar氏らのチームは、2か所の満床COVID-19病棟(一般病床とICU)に空気清浄機を設置した。
設置された空気清浄機は超微粒子を捕捉可能なHEPA filter機能を持つものだった。研究チームは、空気清浄機を稼働させた1週間と、停止させていた2週間の間に、病棟の空気サンプルを採取した。
・一般病棟では、空気清浄機がオフの時にはSARS-CoV-2粒子が検出されたが、空気清浄機稼働時には検出されなかった。驚くべき事に、ICU病棟では空気清浄機が稼働していない時でもウイルス粒子は検出されなかった。
著者らはそれについて、病期後期ではウイルス量が少ないなどの複数の理由を可能性として挙げている。以上より、ICUよりも一般病棟において、HEPAフィルター空気清浄機設置は空気中のウイルスを除去する方法として重要であると、結論づけた。
・カナダ・トロント大学のDavid Fisman氏は「この検討は、カナダの医療機関ではほとんど使用されていないHEPAフィルター空気清浄機が、空気感染リスクを減少させる安価な方法である事を示唆している」と述べた。
・研究者らは、空気清浄機がSARS-CoV-2の除去作用にとどまらないことも見出した。空気清浄機をオフにした時には、一般病棟およびICUの両病棟において、検出可能なレベルで院内感染の原因菌が空気中から検出できたのだ。
S. aureus、E. coli、S. pyogenesなどである。空気清浄機はこれらをほぼ完全に除去できていた。これらの菌は一般的には空気感染で伝播するとは考えられていない。しかし、「今回の検討は、これらの病原菌による感染症もエアロゾルとして拡散しうる事を示している」とFisman氏は述べている。
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→10年以上前に、結核病棟でMRSA保菌者数が急増し、患者と病棟スタッフ全員を含めた鼻腔保菌調査をした事があります。
それまでの私の経験では、一般病棟でMRSAが拡大した場合は、病棟勤務のスタッフからも保菌者が見つかるのが普通でした。
ところが驚いた事に、結核病棟での調査では勤務スタッフの保菌者はなんとゼロ。
当時は、結核病棟ではスタッフが必ずN95マスクを着用するために、鼻腔含めた周囲を触らずに手指消毒できた結果なのだろうと考察しました。
しかし、もしかしたら空気中を漂うMRSAをマスクでトラップしていた効果もあったのかもしれません。
→MRSAが空気中を漂って、空気感染的に病棟内に拡散したという報告はすでに出ています。
MRSAの保菌または感染状態である患者の24病室で、患者の頭部から0.5、1、2-3 mの距離からエアサンプリングを実施。
24病室中21病室で空気中から患者と同じ株のMRSAが検出できた。
MRSA数は患者からの距離とは関連しなかったと。
Aerial dispersal of meticillin-resistant Staphylococcus aureus in hospital rooms by infected or colonised patients
ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19162372
→SARS-CoV-2では「空気感染」の意味をあえて「狭義に」定義する事で、「空気感染などしない」という不毛な議論が行われてきました。
いや、まだ行われているといったほうが良いのかもしれません。
しかし、臨床現場における感染対策という観点からは、「空気感染」をあえて狭義に解釈して「エアロゾル感染」や「マイクロ飛沫感染」などという用語を持ち出す意義はほとんど見出せません。
2m以上離れるあるいは無人の部屋であっても空気中の病原体を吸い込む事で感染する事、感染対策としては部屋の換気とN95マスクの使用が重要である、という点で全く同じです。
(続く)

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イギリスのICU/人工呼吸器重症者:
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→ICU/人工呼吸器重症者
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www3.nhk.or.jp/news/html/2021…
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