Thread by @influenzer3

●米国の抗体保有率は5月時点で80%を超えていた可能性がある
→献血血液を検体とした検討であり、その時点で母集団バイアスがあるため、単純に一般人口の抗体保有率と解釈する事はできない点に注意要です。
実際に今回検討された母集団はワクチン接種率が一般人口よりはるかに高かったようです。

しかし参考になるデータではあります。
limitationは多いですが、参考になる点の多い検討だと思います。
要点は以下かと。

1) 米国レベルの感染爆発でも、今年5月時点の感染による抗体陽転者は人口の2割程度
→自然感染による集団免疫獲得はかなり難しく、あまりにもリスクが高すぎる。
→日本は感染による免疫保有者は少ないので、抗体保有者はまだ米国よりも少ない可能性の方が高い。

2) 16歳以上の抗体陽性率が8割近くでも、その後に大きな感染拡大があった
→集団免疫に必要な抗体陽性率はもっと高いか、もしくは16歳未満の免疫獲得が不可欠。
→日本の現在のワクチン接種率でも、マスク着用などの感染対策をやめる事は大きなリスクがある。

3) 自然感染率に男女差は全く存在しない
4) 米国レベルの検査体制でも、感染者の半数以上を見落としている
→検査体制拡充に取り組まなかった日本では、間違いなくこれよりも遥かに見落としが多いでしょう。

Estimated US Infection- and Vaccine-Induced SARS-CoV-2 Seroprevalence Based on Blood Donations, July 2020-May 2021
jamanetwork.com/journals/jama/…

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・SARS-CoV-2感染既往者およびワクチン接種者は、その後の感染リスクが低下する。これらの理由によりSARS-CoV-2抗体が陽性となっている米国人の割合は分かっていない。

・米国では2020年書等から2021年8月13日までにCOVID-19症例が約3630万件報告されている。ただし、COVID-19の軽症例や無症状の感染者が診断されていない可能性があるため、この感染者総数は過小評価されていると考えられる。

血清抗体陽性率の調査により、自然感染あるいはワクチン接種によりSARS-CoV-2特異的抗体の保有率を推定する事が可能になる。
・今回、米国における16歳以上の一般人口における、感染あるいはワクチン接種による抗体陽性率の動向の推定を行った。

・全米50州、ワシントンDC、プエルトリコからの献血血液を扱っている17組織を、66か所の研究特定地域(study-specific regions)に分割した。これは全体で全米人口の74%を捕捉している。2020年7月から2021年5月までの期間に、月1回の反復横断検討を実施した。

・それぞれの研究特定地域において、毎月中央値約2000人の献血者からの検体が採取され、検査が行われた。合計で1,594,363検体が取集、検査された。検体回収の最終日は2021年5月31日だった。

・主要評価項目は、SARS-CoV-2の抗spike抗体および抗nucleocapsid抗体の陽性率とした。抗体陽性率(Seroprevalence)は献血者と一般人口の人口統計学的差異を考慮した重みづけを行って評価した。

感染による抗体陽性率は抗spike抗体および抗nucleocapsid抗体の両者が陽性である集団の割合と定義した。感染とワクチンの両者を合わせた抗体陽性率は抗spike抗体を持つ集団の割合と定義した。抗体陽性率を累計COVID-19発生率と比較した。

(結果)
・検討された1,443,519検体のうち、733,052人(50.8%)が女性、174,842人(12.1%)が16-29歳、292,258人(20.2%)が65歳以上、36,654人(2.5%)が非ヒスパニック系黒人、88,773人)6.1%)がヒスパニック系であった。

・感染に関連した抗体陽性率の推定値は、2020年7月の3.5%(3.2- 3.8)から、2020年12月に11.5%( 11.1- 11.8)、2021年5月には20.2%(19.9- 20.6)に上昇していた。

・2020年12月4日にFDAがワクチン接種にEUAを発行した。その結果、2021年5月の感染およびワクチン接種の両者による抗体陽性率の推定値は83.3%(82.9- 83.7)となっていた。

・2021年5月時点で感染による抗体陽性率の推定値は、中西部(23.5%)および南部(22.2%)は、北東部(19.3%)および西部(16.7%)よりも有意に高かった。一方、ワクチン接種も含んだ抗体陽性率は、北東部(87.2%)は他の地域よりも有意に高く、南部(80.2%)は有意に低かった。

・2021年5月時点で、感染による抗体陽性率に男女差はなかった(男20.3% vs 女20.2%)。しかし、ワクチンも含んだ抗体陽性率は女性84.2%(83.7- 84.6)、男性82.3%(81.8- 82.9)と女性が高かった。

・2021年5月時点で、COVID-19報告症例1例あたり、2.1件( 2.0-2.1)のSARS-CoV-2感染が発生していたと推定された。2020年7月の3.1件(2.8- 3.4)から2021年の5月は2.1件(2.0-2.1)へ減少が見られていた。

(結論)
・2020年7月から2021年5月までに米国で行われた献血血液のサンプルに基づくと、ワクチン接種および感染によるSARS-CoV-2抗体陽性率は時間経過とともに上昇しており、その程度は、年齢、人種、民族、地域により異なっていた。

・人口統計学的差異で重みづけ調整を行ってはいるが、献血血液サンプルから得られた本データは、全米の全人口を反映していない可能性はある。

・感染により抗体陽性となった人は、発症率が80-95%低下しワクチンの有効性と同等である事が示されている。しかし変異株が存在する状況下では、感染者の防御能がワクチン接種者よりも急速に減弱する可能性がある。

・limitationは多い。献血者集団と米国一般人口は異なる。抗体検査の感度は100%ではなく6か月後には感度が低下する。急性期のCOVID-19患者はLong COVIDの患者は献血者に含まれない可能性が高く、この分を過小評価している可能性がある、

ワクチン接種率が今回の母集団では73.3%であったがこれは米国一般人口の57.0%より高い。研究参加機関が抗体検査実施を宣伝したため感染した人を集めてしまった可能性がある、16歳未満が検討に含まれていない、検討期間はデルタ株が急増する前の期間である・・・などである。
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(続く)