【コピー1行から読み解く事業の行方】

こちらのショコラのD2C
branche-chocolat.jp
の1行目のコピー
   「至福の正方形」
というのを見て、ここが黒字軌道に乗るのは難しいだろうなと思いました
今のEC市場のCPO相場だと何度もリピートが起きるか、単価が高いかのいずれかでないと採算があいません。
この価格帯だとリピートが起きないと採算があいませんが、リピートが起きるコミュニケーション設計になっていないので、採算を合わせるのは難しいのではないかと思った次第です。
リピートをさせるには商品そのものが良いことは前提として、そもそも「リピートしやすい人」を顧客層の核として取り込まないといけません。

この商品を最もリピートしやすい人とは日常的にスイーツを食べたり、取り寄せたりしている人(以下「かなりのスイーツ好きの人」)です。
商品には「本質価値」と「付随価値」があり、付随価値(この場合ビジュアル)に惹かれた人も購入はしますが、本質価値(この場合、味)に惹かれた人しかリピーターになり得ないのです。
リピーターを獲得しなければ成り立たないビジネスモデルなのでリピーター獲得が命です。だから、リピーターになってくれる人を獲得しようとすると、本質価値である「味」に興味がある人を獲得しなければなりません。
しかし、スイーツの味に造詣が深い人からすれば、一行目で「至福の正方形」という「味」ではなく「形」をアピールされた時点で「一番のウリはビジュアルですか」となって萎えるのです(もちろん個人差あり)
説明の内容比率が「味」よりも「ビジュアル」の比率が高すぎるので「味に自信あり」の商品ではないと逆アピールしている形になっています。
これだと、美味しいものを探している「かなりのスイーツ好き」は他のもっと美味しそうなスイーツを探しにいってしまいます。
正方形の美しい形なのは見たらわかります。
だからこそ、コピーでは味に言及して欲しいのです。
このLPは美しいので、「スイーツに興味が薄い層」を取り込むことに成功すると思いますし、作成者意図は「スイーツに興味が薄い人も欲しがるLP」を作ったのだと思います。
ただ、そこは広告屋としては正解かもしれませんが、D2Cの事業観点で考えると、スイーツに興味が薄い層はリピート率は低いので、この人たちだけでは採算が合わないということを知っていなければなりません。
一方、あえて生活家電に興味が薄い層を取り込んだバルミューダ、既存のジムやダイエットユーザー以外を取り込んだライザップは成功しています。あれは「客単価が高い」からであり、リピートさせることで利益化しているのではありません。そもそもビジネス構造が違うのです。
スイーツに興味がある人を核として、周辺の興味がない人を取り込む形にしないと採算が合わないのですが、このLPではビジュアルばかりに拘っていて、味が伝わってこない(職人の具体的な話がない)のでスイーツに興味がある人を取り溢しているのです。
これは、イノベーター理論でいうと
スイーツマーケットのイノベーターを取り込まず、デザイン、おしゃれ、流行マーケットのイノベーターを取り込んでいる状態です。
もちろんビジュアルに惹かれて購入した人も美味しければ一定のリピートはしてくれますが、やはり「味」にこだわる人に比べると、リピート率は低いでしょう。
スイーツにしては高価格であり、よっぽど美味しくなければ何度も買わないでしょうから、よっぽど美味しくても何度も買うのはやはり、「かなりのスイーツ好き」に限られます
だから、最初のユーザーはスイーツマーケットのイノベーターの取り込みをし、この人たちを起点として「高いけど美味しい」という話題で広げないといけないのです。

「ビジュアルがいい」に興味を持っただけの人がSNS拡散をしても、一過性の広がりにしかなりません。
だから、この「至福の正方形」を1番の売りにした売り方では核となるリピート客を取り込めないので、LTVが低く、採算を合わすのが難しいと感じたのです。
消費者は最初の1行にその事業の想いを感じ取ります。

通販は、たった一行で事業がうまくいったり
失敗したりを左右する可能性があることを知ってください。

たかが一行

されど一行

魂を込めた一行を綴りましょう
※なお、広告費を注ぎ込めば売上は上がるし、PRを頑張れば、話題になることは可能です。ただ、売上が上がっても話題にはなっても黒字化は別問題で、あくまでも「黒字軌道に乗るのは難しい」という話です。
※ただし、現時点の私見です。市場ニーズは変わるので、私がわかっていない感覚のニーズがあることは多分に考えられますので、私の意見だけで、これはダメだと思わないでください。

私の予想が外れた方が、新たなマーケットに気づけるので、外れることを祈っています。

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1 Nov
【AB-Xテストのススメ】

AB-Xテストとは私の造語でABテストの進化形だ。

まず、ABテストの誤用について言う。
ABテストではABCの3つの広告をスプリットで出稿して、一番成果が良かったものを「正」としてしまうことだ。
しかし、現実的にはAもBもCも「誤」と言うことはある。
全部、CPOが採算割れしている場合などだ。
ただ、1番Bの成果がマシだったからBを「正」として、Bを起点に採算が合うように改良していこうとしてしまう。
多少の改良で間に合うのであれば良いが、CVRやCTRを2〜3倍にしないと採算が合わない場合などはBを弄ったところで到底間に合わない。
全く違うタイプのXやYやZの広告を作るべきなときもあるのだ。
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