日本で映像制作をされている方からよく「どうすれば自分の作品のクオリティを上げられますか?」と聞かれます。・・・もちろん、皆さんそれぞれ苦手な部分があるとは思うのですが、一つだけ多くの方に共通している大きな弱点があります。それは「台詞に頼りすぎている」という部分です。(続
これは日本とそれ以外の「脚本」の「立ち位置」が違うことに主な原因があります。多くの場合、日本の脚本は最低限の「ト書き」と「台詞」で構成されています。そしてそれを俳優や演出家が読み解き、そこに「演出」を足していきます。これに対しハリウッドの脚本は「演出」がメインで構成されています。
つまり、脚本家があらかじめシーンの「演出」を脚本に書き込んでいるのです。・・・たとえば、↓このような日本の脚本があったとします。「剛」と「薫」というキャラクターが、家の権利書を探して剛の実家にやって来たシーンです。ト書きと、セリフで構成されているのがお分かり頂けるかと思います。
これと全く同じシーンを、ハリウッドの方式で書き直すと↓こうなります。まだ脚本段階であるにも関わらず、シーンの「雰囲気」や「映すべき画」が明確に描写されているのがお分かり頂けるかと思います。つまり、まるでアニメの「絵コンテ」のように、脚本家が「画」を書き込んでいるのです。
この方式ですと「画を見たら分かる」セリフは最初から書く必要がなくなりますので、説明台詞が必要なくなり「台詞に全く頼らない脚本」になるわけです。それから、ハリウッド形式の脚本では「・・・」という、読む人の想像に任せる描写はありません。常に具体的に「何を」「どう」見せるのか書きます。
しかし、このような形式の脚本を見たら、「ここまで脚本段階で演出されたら、監督の自分の出る幕がないじゃないか」と思われる方が多くいらっしゃるかと思います。・・・実はここが何より一番重要なのですが、何とハリウッド形式では「脚本家の演出を変更/却下できる」んです。
つまり、脚本家がそのシーンで描きたかった「演出意図」だけを汲み取り、その「描き方」は、監督が自分流に変更できてしまうんです。だからたとえ脚本に演出が組み込まれていたとしても、演出家からブーイングが出ることはありません。
この「台詞に頼らない」作品作りにトライしてみたい方は、ぜひ一度実験で、「これでもか」というレベルで演出を脚本に書きまくってみる事をオススメします。「どのような画を見せればそのシーンが成立するのか」を考えて。その際、日本の「縦書き方式」ですとスペースが足りなくなるかもしれません。
もちろん、現在の日本の脚本のスタンダードとは全く違いますので、今の方式が良いと思っている方からは怒られてしまうかと思います。ですので、もし実験される場合は理解のある方と一緒にやってみる事をオススメします。そしてそれで実際に完成品が良くなれば、次作でその方式を取る説得力が出ます。
試しに日本の「縦書き方式」ではなく、ハリウッド形式の脚本を書いてみたいという方は、WriterDuet というサイトをオススメします。このサイトでは無料トライアルで期間制限無しで3本までハリウッド形式の脚本を書いて保存することができます。日本語にも対応しています。
writerduet.com

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2 Jan
"This is NOT Chicken Nanban. Are you joking?"
「これはチキン南蛮ではありません。ふざけているのですか?」
"That looks like a bunch of Karaage with tartar sauce. Get off my lawn."
「これは唐揚げにタルタルソースが掛かっているだけに見えます。私の庭から今すぐ出て下さい。」
"Are you sure that's tartar sauce and not just mayo? I don't trust you."
「これがタルタルソースであることは確かですか?マヨネーズではなくて?私はあなたを信用していません。」
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2 Dec 21
今のハリウッドのAsian Americanヒャッホイの流れで、ただでさえ恐ろしく数少ない日本人役すら日本語が喋れない役者に取られ、しかも周りがそれを「いいぞ!!Representation Matters!」と称える様を見る、在米の日本人役者達の気持ちは、"What does natto taste like?" の答えよりも複雑。
↑は「在米日本人俳優のふがいなさ」に関するツイートではなくて、現状のAsian Americanの役者をキャストすることが業界で評価される「Asian American Representation」の大波が「ハリウッドの日本人のrepresentation」を押し流している現状に関するツイートです。
現在ハリウッドではAsian "American" を主役級キャストすると、全米のアジア系の団体から称賛ツイートされます。そしてそれを他のAsian Americanの俳優達もリツイートして、一気に話題になります。・・・でもこれが在米日本人だった場合、残念ながら↑のように話題にはなりません。
Read 10 tweets
9 Jun 20
殆どのキャストが有色人種なのに主人公だけが白人だったり、ピンチになると白人キャラがさっそうと救ってくれる現象をハリウッドでは「White Savior(白人の救世主)」と呼び、近年批判の対象になっています。「ラストサムライ」や「アウトサイダー」などが顕著な例です。
一方、原作では有色人種だったはずのキャラを白人に変えたり、メイクで無理やりアジア人を演ずるのは「#Whitewashing(白塗り)」と呼ばれていて、猛烈な批判の対象になります。「ドラゴンボール」「攻殻機動隊」などがそれです。
それから近年、ストレート(cis)の俳優がゲイの役を演ずると過剰に評価される傾向(「体当たり演技」「難しい役に挑戦」)と、反対にゲイの俳優はストレートの役を演じさせて貰えない不公平な現状に対し、批判の声が強くなってきています。※cis= cisgender(シスジェンダー)
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