Thread by @influenzer3

●オミクロン株は従来株とは異なる経路で細胞内に侵入する(プレプリント)
→従来のSARS-CoV-2は、ACE2とTMPRSS2の共存している細胞内に侵入可能でした。

ところがオミクロン株はACE2で結合後にendocytosisで取り込まれ、その後カテプシンの作用により細胞内に侵入するという感染経路がメインである可能性があるようです。
主要な感染経路が異なるわけですから、従来株とは主要感染細胞の種類やウイルス分布が大きく異なってくる可能性が出てきます。

感染にTMPRSS2を要しないので、理論的にはさらに多様な細胞に感染しうる可能性があるのでしょう。
これまでで積み上げてきた剖検例を用いた感染臓器・細胞などの知見は、オミクロン株で再度検討しなおす必要がありそうです。

さらに感染経路が異なる事で、細胞に加わる刺激のパターンが変化し、重症化に関わる宿主の免疫応答が変わってくる可能性もあります。
オミクロン株の重症化率低下が起こりうる理論的根拠(生物学的違い)にもなりうるかもしれません。

本論文は情報量が多いのですが、boosterワクチン接種後の中和抗体価はアストラprime＋モデルナboostが最も高いという結果も出しています。

なんとファイザー3回接種ではオミクロン株に対する中和抗体自体は変化しません。
しかし、リアルワールドでのワクチン効果(VE)は3回接種でしっかり上昇しています。中和抗体以外の免疫が関与しているのでしょう。

本論文はオミクロン株の各変異の詳細な説明がintroductionに記載されていました。良くまとまっていますので、これだけでも一読の価値ありです。

The hyper-transmissible SARS-CoV-2 Omicron variant exhibits significant antigenic change, vaccine escape and a switch in cell entry mechanism
medrxiv.org/content/10.110…

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・ワクチンにより初期のSARS-CoV-2のspike proteinに対する免疫応答を誘導する事は、COVID-19に対する公衆衛生戦略の鍵となっている。

・これまでのSARS-CoV-2感染の大きな波(Successive waves of SARS-CoV-2 infections)は、感染力を増強し、かつ免疫機構から逃避する高度の変異を獲得する事によって起こってきた。これまでのVOCのうち、ベータ株とガンマ株は免疫逃避変異を有し、局所的に拡大したが世界拡散する事はなかった。

アルファ株とデルタ株はいずれも世界の優勢株となったが、両者ともにfurin切断部位である681位に変異を持ち、これは細胞侵入能を増強するものであると考えられている。

・オミクロン株はVOCとなった5番目の変異株であり、優勢株となった3番目のVOC変異株である。感染力の突然の増強(a step change)が特徴であり、著明な抗原性および生物学的な変化が起こっていることを示唆している。

本変異株は45個のアミノ酸変異を有しており、うち30個はspike protein上に存在し、そのうちの15個は抗体の中和能に大きく関連するRBD領域に存在している。

RBD上の6つの変異(G339D、N440K、S477N、T478K、Q498R、N501Y)はヒトACEとの結合親和性と関連しており、その結果、武漢株よりも2.4倍高い結合親和性を持っている。

同じくRBD上の7つの変異(K417N、G446S、E484A、Q493R、G496S、Q498R、N501Y)は中和抗体の結合低下と関連しており、RBD特異抗体の主要な3つのクラスのすべてに影響を与えている。

NTD領域には3つの欠失部位(69-70, 143-145, 211)と1つの挿入(214)もある。69-70欠失はアルファ株とイータ株にも存在しており、細胞との融合性上昇による感染力増強と関連している。またこの欠失があるため、TaqPathTM法ではSGTFが見られ、オミクロン株の推定にも用いられている。

furin切断部位(FCS)の2つの変異(N679K, P681H)はfurinによる切断が促進される事で感染力が増強する事が他の変異株で分かっている。FCS近傍のH655Y変異の役割についてはまだよく分かっていない。

spike proten以外ではNSP6(105-107)の欠失により感染細胞のオートファジーを介した免疫から逃避している可能性がある。
・今回、免疫回避やウイルス感染増強の原因となりうるオミクロン株の抗原性と生物学的特性を検討した。

・検討の結果、ワクチン接種終了者(2回)からの血清の中和活性と、リアルワールドでのワクチンの有効の両者が著しく低下している事、そしてmRNAワクチンのbooster接種により有効性が一部回復する事が分かった。

さらに自然感染による免疫の場合には、2回ワクチン接種よりは有効性が高いが、booster接種後よりは劣る事を確認した。

・最後に、我々はオミクロン株にin vitroにおける細胞侵入過程において、TMPRSS2非依存性の侵入経路にシフトしているという重大な変化が起こっている事を発見した。
・以上の発見は、オミクロン株の世界的な急速拡散の原因と、感染後の重症化率に変化が起こっている可能性を示唆するものである。
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・ワクチン接種後の各抗体価と中和抗体の違い
Aはspike全体、RBD、NTD領域に対する各ワクチン(ファイザー、アストラ、モデルナ)接種14日後の抗体価を示しています。
ワクチンではN抗体は誘導されないので、コントロールと考えて良いでしょう。

spike全体、RBD領域、NTD領域のいずれもmRNAワクチンの抗体誘導能が有意に高いです。
Bはpseudovirusを用いた中和アッセイです。
武漢株と比較したオミクロン株に対する中和抗体価はファイザーで33倍、アストラで14倍、モデルナで74倍低下。

ただし中和抗体価の絶対値はモデルナ＞ファイザー＞アストラの順になっています。
（続く）