このスレッドでは、良い議論ができたとおもう。いまだに機械的な測定機だけで、古典確率や量子力学の確率論を展開できると誤解している人にも参考になるはず。フォンノイマン鎖の終端としての「意識」の存在の前提は、古典でも量子でも不可欠です。
たとえば古典的なサイコロを振った時、仮にその目が１なのか６なのかが判然とせず、その両方が混ざったような認知をしてしまうならば、それは「意識」と呼びません。
そういう場合には、確率論は無力です。認知の中で、独立背反事象が体験として定義できて、各時刻にはその中のただ１つの事象だけを体験するという性質をもつのが、フォンノイマン鎖の終端である「意識」です。この意識の存在は、古典確率論でも量子力学でも前提（公理）なのです。
この「意識」をより基本的な科学理論から導出しようとすることは原理的にできません。それは意識のハードプロブレムとして知られています。ですから意識の存在は飽くまで公理としておくしかないのです。
意識をもたない機械だけで確率論は実際使えているじゃないかと思う人は、次のようなことを思い出して欲しい。例えば、不均一なコイン一万個をロボットが投げれば、その表と裏がそれぞれ何回出るかを、ロボットは数えられるじゃないかと。 
でもここには、既に暗黙の了解が入っています。ロボット作成時に確かにロボットはコインの表と裏を正しく読み取れるかのチェックをしなければいけません。それは意識をもった観測者がしなくてはいけません。
その観測者にとって、高い確率でロボットがコインの状態識別を達成できていたら、その機械を動かして、コイントスを実行させましょう。あるときには、ロボットは下記のような報告を観測者にします。
ここで自動的に出現した表と裏のヒストグラムをロボットが用意してくれるとしても良いです。
この調子で、観測者はこの機械を続けて動かします。
そして観測者は、試行回数無限大の極限を考えることもできます。
それで、観測者自身にとっての、コイントスの確率を定義することができるわけです。
そのときには、ロボットが自分に報告をするときの独立背反事象を、観測者自身で分類しておく必要があります。
たとえば一万回の試行の場合、意識をもった観測者は、以下の独立事象の中の１つを体験することになります。
同様に考えて、一般のN回の試行でも、観測者は独立事象の現る確率を計算することもできます。
ですから、意識をもたない機械のロボットで実験を自動的にする場合でも、最後の最後には意識をもった観測者が、そのデータを読んで、各試行でのただ１つの事象を認知しているのです。「意識」を採り入れない確率論というのは、原理的はありません。
ただここで、もしロボットに意識があれば、人間の観測者と同じ認知をし、同じ確率を計算できることでしょう。普通の確率論に基づいた機械設計では、意識をもったロボットの立場の前提で計算をしているので、外の観測者やその意識を無視しているだけなのです。
ロボットにしろ、人間にしろ、話のどこかに意識をもった観測者をいれないと、確率論の厳密な議論は成り立たないのです。量子力学におけるフォンノイマン鎖の終端としての「意識」は、古典確率論ですら前提なのです。
もしアリスとボブという２人の観測者がいて、アリスはコイントスの現場を見れず、一方ボブはコイントスの現場にいて、初期値の情報を少し得られるのならば、アリスとボブで、コインの表と裏の出る確率は変化します。ボブは情報に応じた条件付き確率を予想に使えるからです。
つまり古典確率でさえも、確率は観測者依存性をもっているのです。
