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最近では量子力学は情報理論の一種であるという理解が広がってきました。波動関数(量子状態)は、物理的に実在するモノではなく、観測者にとっての対象系の情報の束です。そして前世紀に騒がれた「観測問題」も、そもそも存在しなかったことが分かっています。
波動関数の収縮の話をしましょう。例えば1つの粒子の波動関数の絶対値の2乗は、その粒子の存在確率密度を与えます。ここでは、地球と月以外にその粒子は存在していない場合を考えてみましょう。
地球に粒子があるかないかを測定で調べて、あると分かったまさにその瞬間、月に存在しないことが分かったので、月の領域の波動関数は瞬間に零になります。
地球での測定の物理的な影響は、高々光速度以下の速さで月に届きます。一方測定をしたことで光速度を越えて波動関数の形が変化するということは、波動関数が決して実在する物体ではないということを意味します。波動関数は情報の束に過ぎず、測定で観測者の知識が増えると情報として更新されるのです。
量子状態(波動関数)の収縮で一番誤解が多いのは、1つの系の量子状態は誰にとっても同じで、普遍的だと勘違いすることです。物理的な実在ではなく、単なる情報の束なので、実際は観測者毎にちがうのです。
例えば量子ビット系が上向き状態と下向き状態の量子的な重ね合わせにある場合で、その系をアリスが先に測定をし、その後でボブがその系を測定するとしましょう。
アリスが量子ビットを観測すると、上向き状態が測定されたとします。するとアリスにとっては、知識の増加としての「波動関数の収縮」が起きて、測定後には量子ビット系は上向き状態になります。
アリスの測定直後、ボブはアリスから結果を知らされてもいないし、自分ではまだ量子ビット系を測定していません。重要なのは、波動関数は実在ではないので、「このときボブにとっても量子ビット系は上向き状態になった」と言うことはできないことです。
ボブは、アリスの測定結果を知らないし、また測定もまだしてません。その場合に、ボブにとっては、量子ビット系とマクロな量子系としてのアリスの合成系が、このような量子的重ね合わせ状態になるのです。
ボブがその状態にある量子ビット系とアリスの測定をすると、50%の確率で量子ビット系が上向き状態に見つかるし、50%の確率で下向き状態に見つかるのです。
このように、アリスが測定した後の「量子ビット系が収縮した上向き状態」は、ボブにとっての量子ビット系の量子状態ではないのです。観測者毎に情報の束としての量子状態は異なります。
なおアリスとボブの測定結果には、完全な相関があります。ボブが上向き状態と観測した時には、隣のアリスに聞いても、必ず上向きだねと彼女も答える。ボブが下向きと観測するなら、アリスも必ず下向きと答える。アリスが上向きでボブが下向きという結果が起こる確率は零です。
ボブにとって実現している、アリスと量子ビット系の重ね合わせ状態は、量子力学の線形性からの帰結です。でも実はボブが量子ビットが上向き状態になったことを知らないだけだろうと思う人もいるかもしれません。実際は量子ビットは上向きなのだと主張するかもしれない。しかしそれはあり得ないのです。
例えば、アリスと量子ビットが測定のための相互作用するとき、相互作用の入れ方には自由度があって、下記の式のように連続変数θに依存した重ね合わせ状態を作ることができます。ボブにとっては、このθは観測量となって、原理的にはそれが実測できるのです。
だからアリスが上向きの量子ビットを観測したとき、古典力学のように「機械論的に測定相互作用が量子ビットを強制的に上向きにしただけ」という理解の仕方は、間違っているのです。
素朴な実在論で量子力学は理解することは、21世紀の現在ではとても無理筋な話なのです。量子力学は情報理論の一種であり、量子状態は情報の束に過ぎず、そして量子状態は各観測者毎に定義され、そして一般には観測者毎に違う。これが素直な理解の仕方です。
情報的に正しくコペンハーゲン解釈を理解しないと、「観測問題」があると誤解をしてしまう羽目になります。物理学徒の皆さんは、この辺りをきちんと整理して、いまだ「量子力学には観測問題はある」と主張してしまう人達に正しい理解を教えてあげてください。
21世紀の現在では「量子力学には観測問題がある」と言うのは「相対性理論は間違っている」と言うのと同じくらいトンデモなのですから、物理学徒は標準的な量子力学をしっかりと学びましょう。
量子力学が情報理論の一種であることに関しては、下記のスレッドをご覧ください。

ちなみに、アリスの測定の後、アリスがボブにその結果を教えるのならば、ボブにとってのアリスと量子ビットの重ね合わせ量子状態にも、そのとき初めて「波動関数の収縮」が起きて、アリスにとっての量子ビット状態と同じものになります。
しかしその外の独立した観測者であるクリスにとっては、量子ビット+アリス+ボブの合成系が、量子的な重ね合わせになるのです。
量子力学が情報理論の一種であることに関しては、下記のスレッドをご覧ください。

なお量子的にもつれた2量子ビット系をアリスが測定する場合での、外部にいるボブにとっての量子状態については、下記ブログ記事をご参考に。波動関数の収縮は決してパラドックスを起こさないし、コペンハーゲン解釈に観測問題はないということが、分かるはずです。

mhotta.hatenablog.com/entry/2014/04/…
θに依存したアリスと量子ビットの合成系状態の式が落ちていました。これです。
θが観測できるということは、重ね合わせの中の「(上向き量子ビット)+(上だと観測したアリス)」と一緒に「(下向き量子ビット)+(下だと観測したアリス)」があることを示してます。つまり実はそのどちらか片方しかないという可能性を完全否定しています。つまり両方ともあるということです。
量子力学のシュレーディンガー方程式は、量子情報物理学の基礎であり、そして象徴的アイテムです。出てくる量子状態|ψ(t)〉は、物理量の観測値の確率分布の集合であるため、系の「情報」の束です。その各情報の流れは動力学の象徴としてのハミルトニアンHに支配されていることを示す方程式なのです。
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