今日は木下喬弘氏の「『適用できない』って難しいですよ、定理ですからね」発言で完全に脱力してしまったのですが、彼は正三角形でもピタゴラスの定理が適用できると考えているのでしょうかね?
三角形というのは色々なものがあるのですが、直角三角形の場合に限って3辺の長さに特別な関係が成り立ち、これをピタゴラスの定理というのですね。だから当然ながら正三角形では成り立たない。
つまり「『適用できない』って難しいですよ、定理ですからね」というのは、全く逆で、適用できる条件が限定されているのが定理なのです。説明するまでもないとは思いますが。
ところで、上記木下氏の馬鹿さ加減はさておき、少なくない人が数学とか定理の理解として、「先生にそう教わった」とか「教科書にそう書いてあった」とかいう理由で正しさを理解しているのではないかなと思うところもあったりします。
例えば、直角三角形の縦と横の辺の長さが与えてられたときに斜めの辺の長さを求める問題を出題し、その計算をした人に「どうしてそれで正しいの?」と聞いたりすると、一番多いのは「え~、違うの?」となるわけですが、次に多いのが「そう教わった」「そう書いてあった」なのではないでしょうか?
でも「どうしてそれで正しいの?」という問いに対して、こちらが期待する回答は「この三角形は直角三角形だからです」だったりするのです。

この気持ち解っていただけるでしょうか?
一方、この国では、PCR検査の拡充をめぐって全国民的大論争があり、その中でこのような計算方法を使ったPCR検査のデメリットの主張がなされたのですが、これと同じことを思っていたのですね。
それに関連する指摘としてスレッドを書いて、こんなことを指摘した思います。
つまり、ピタゴラスの定理の試験問題って、ピタゴラスの定理を使えば解けるように最初から直角三角形だったりして、そういう問題ばかり解いているから、「どうしてそれで正しいの?」という問いに対して「この三角形は直角三角形だからです」との回答にならないのかなと。
そして、このマス目算は医師国家試験の頻出問題との話があるのですが、ピタゴラスの定理の試験問題と同じ落とし穴があったのかなと思うのです。つまり、最初からこのマス目算を使えば解けるようになっていただけなのに、どんな検査方法でも成り立つと理解してしまった。
でも、こんなマス目算がどんな検査方法に対しても成り立つのかというとそんなことはないのです。ピタゴラスの定理が正三角形では成り立たないように。

このマス目算については「直角三角形だから」みたいな部分も正しく指摘しているTWも散見できるので、いい加減に議論も下火になるでしょうか。
ところで、上記説明した考え方については身に付けておいた方がよいとおもうのです。大人になってからも自分の主張が正しいという根拠を示す場面もあるわけで、「どうしてそれで正しいの?」という問いに対して「そう教わった」「そう書いてあった」みたいな回答はよくないのではないかと。
それに、他人の主張の当否を判断する際にも、相手の主張が成立する条件の部分について検証できれば、「専門家」とか「偉い」とかいう謎の基準で物事を判断しなくてもよくなるというメリットあります。PCR検査の議論においても「専門家」とか「偉い」とか謎の基準が横行しましたよね。

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