Thread by @ARK_kandu

《臨床診断モデル想定者と公衆衛生モデル想定者のディスコミュニケーション》
室月淳 @junmurot ・宮城県立こども病院産科部長(東北大院教授)の下のツイートが荒れたようで，引用リツイートがたくさんタイムラインに流れてきたので，原因を探りに行ってみました。《続

https://twitter.com/junmurot/status/1419604912422350849

承前》原因と思われるところを書き留めておきます。

まず，当たり前すぎる話ですが，疾患の診断は患者の主訴(発熱だとか，せきが酷いとか)に対して，ときには検査も用いながら，原因＝疾患名を突き止め，治療にあたるわけですよね。

ここでは，検査は治療のための手段に過ぎません。《続

承前》すなわち，検査結果は診断治療のために合目的的に参照されるものに過ぎません。
これを「臨床診断モデル」と呼ぶことにしましょう。

一方，今，COVID-19 で問題になっている，PCR 検査や抗原検査を用いて感染者をスクリーニングする，という場合は，異なる考慮が必要になります。《続

承前》例えば，今，オリンピックでやっているスクリーニングは，PCR 検査で陽性とされた人を隔離する目的ですね。PCR 検査で SARS-CoV-2 が 発見されれば感染可能性ありとして，隔離するわけです。
ここではこれを「公衆衛生モデル」と呼ぶことにしましょう。《続

承前》臨床診断モデルを前提とすると，無症状かつ人に感染可能性がない人は，治療必要性がないので，医療の対象とはなりません。

感染可能性は「結果としてうつさなかった」と回帰的・結果論的に考えられるのですが，従来株で80％の人が感染させないとされているので，想定はできます。《続

承前》また，検査に関する考え方も，臨床診断モデルでは，治療必要性との関係で合目的的に考えられることになります。検査結果がどうあろうと，疾患の診断・治療に寄与しなければ，真陽性とは言えない，ということになります。《続

承前》一方，公衆衛生モデルでは，新規の PCR 検査陽性者は，実際に感染させるかどうかは問題にならず，全員が隔離対象となります。

PCR 検査陽性＝隔離対象という意味で，コンタミネーション(＝検体汚染)・検体取違え(これはいずれのモデルでも偽陽性)を除き，陽性＝真陽性になります。《続

承前》大切なのは，臨床診断モデルに則って話をする場面と，公衆衛生モデルに則って話をする場合とをきちんと分けることでしょう。

オリンピックのスクリーニングを問題にしているときに「無症状かつ感染可能性がなければ偽陽性」といってもしょうがありません。《続

https://twitter.com/junmurot/status/1421479823508066314

承前・了》専門家が，國井修先生 @SamKunii や，influenzer 先生 @influenzer3 のように，臨床医学と公衆衛生学両方に明るく，両モデルの適用場面をきちんと区別して話してくれるとは限りません。

聞く側が，両モデルでは偽陽性の定義すら異なりうる，ということを意識して聞きたいものです。