妊婦へのmRNAワクチン接種の安全性を示す論拠として、CDCや厚生労働省が引用するこの論文
妊婦に安全という証拠には程遠い内容でした。

Preliminary Findings of mRNA Covid-19 Vaccine Safety in Pregnant Persons
nejm.org/doi/full/10.10…
N Engl J Med 2021; 384:2273-2282
>V-safe(下図)の妊娠登録者、及びVAERSのデータを用い、妊娠におけるmRNA Covid-19ワクチンの安全性の特性を明らかにする。

論文は以下の方法で進められました
順に数値を追って行きます。

>v-safe参加者のうち、妊娠が確認されたのは35691人

この人数からワクチン接種後の副反応を調査しました。 Image
V-safeとVAERSのデータを用い、ワクチン副反応を調査した結果(下図)
調査にはCDCの全面バックアップを得たことが判ります。
安全性が未確認のこの段階で、35691人もの妊婦がワクチン接種を受けたことは、不道徳にも思えます。
ここは概略にして次へ飛びます。 Image
>V-safe登録者中、2021年2月28日までの段階で妊娠中にワクチン接種を受けたか、ワクチン接種前後に妊娠した人を特定、そこから2021年3月30日時点までで5230人に連絡。
>うち912は未達、86は参加拒否、274は基準合わず(妊娠最後の月経の30日以上前にワクチン接種を受けた等)

約一ヶ月の作業経過
>登録されたのは、2020年12月14日から2021年2月28日までにワクチン接種を受けた3958人

妊娠期にワクチンを受けた3958人が当試験の登録人数となります。
データの期間は2020年12月14日〜2021年2月28日の2ヶ月半です

次に内訳です。
>ワクチン接種を受けた時期
・受胎前後 92人(2.3%)
・妊娠第1期(〜12週) 1132人(28.6%)
・妊娠第2期(〜26週) 1714人(43.3%)
・妊娠第3期(〜40週) 1019人(25.7%)
・不明 1人

接種時期毎にコホートが整理され、ここからは各分類毎の結果から確率が導き出されると思われたのですが……
その結果は最後まで示されませんでした。
データは一時の聞き取り調査だったからです。

>妊娠を終えた827人の報告

登録者から聞き取り調査が出来た報告の総数。
残る3131人は依然妊娠中であり、その後も論文には言及が無く捨て置かれました。
ここに不自然かつ杜撰さを感じます。
この調査だけでは中間報告であり、本来は最後まで追跡調査して確率が算定できるものです。
加えて、流産に関しては初期に殆どが起こるため、2ヶ月半の短期調査では確率は偏重します。
これが当該論文の最大の問題であり、数値全体を毀損する原因となります。
>報告された827人のうち、
・712人(86.1%)の出産
・104人(12.6%)の自然流産
・1人(0.1%)の死産
・10人(1.2%)その他の結果(人工妊娠中絶および子宮外妊娠)
>104件中96件【92.3%】の流産が妊娠1期に発生

()内には分母を報告総数827人で取った割合が示されます。
流産は104件中の92.3%96件が妊娠1期に起こっています。実際に確率偏重が見られ、2ヶ月半のデータ調査でこれが解消できるとは思えません。
また、接種時期についてはコホート分けされておらず、本文中や表の欄外に散見出来るのみです。
>出産712の妊娠のうち700(98.3%)は、妊娠3期にワクチン接種

827人中700人は第3期に接種
残る127人は妊娠1期・2期に接種
という計算になります
さらに127人中12人は妊娠初期・中期の接種で無事出産
残る115人が流産や中絶、子宮外妊娠したことが計算できます。単純なる算数であり、かつ整合します
表4.(1段目):
自然流産: <20wk|10–26|104/827(12.6)‡

>104/827(12.6%)
表はこれを流産率としているのですが、項目には「自然流産:<20週」とあり、妊娠3期に予防接種をした700人はここから除かれる必要があります。827は分母には相応しくありません。 Image
前項の妊娠1期・2期に接種した人数127人で見れば、流産率は
▶104/127(81.7%)[人工中絶を除く]
という計算が導かれ、これは論争となった数値ですが、提示されたデータの矛盾から発した単なる算数の解です。
正しく算出するには接種時期ごとのコホートで出産までを追跡調査する必要があります。
>妊娠第1期(~12週)に1132人(28.6%)
>妊娠第2期(~26週)に1714人(43.3%)
という前述の被験者の結果を待たず、一時点の中途データにおいて時期の異なるコホートが混合されて弾き出されたのが、『104/827(12.6%)』という数字なのです。これは自然流産率として公言するに値する数値でしょうか。
>724人の新生児の有害事象
>早産(636人中60人[9.4%])
>低出生体重児(724人中23人[3.2%])
>先天性異常 (724人中16人[2.2%])
>新生児死亡  0

早産の分母には636という数字があり、これは根拠不明の数字です。
¶記号として表の欄外に説明があります。 Image
>¶ 分母には 、妊娠37週前に予防接種を受けた参加者のみが含まれます。

どうして流産の項ではこのような個別に必要十分な分母を算出しなかったのでしょうか。
理由は流産が先に起こり、流産率が高くなり過ぎたからではないでしょうか。
試験のデザインによる失敗です。
>調査中のVAERSには妊娠中の人へのワクチン接種に関する221件の報告。
最も多く報告された妊娠関連有害事象は,
自然流産(46例:第1期37例・第2期2例・第3期7例)
死産(3例)
子宮早期破裂(3例)
膣出血(3例)

当調査での自然流産104症例はVAERSに報告されていないようです(自主報告)。
>結論
暫定的な調査結果では、mRNAワクチンを接種した妊娠中の人に明らかな安全性兆候は示されなかった。しかしながら、母体、妊娠、乳児の転帰に関する情報を得るためには、妊娠初期にワクチンを接種した多数の女性の追跡調査を含む、より長期的な追跡調査が必要である。

結論は両義的です。
よく引用して言われるように、安全であると断じてはいません。
この暫定的で整合性のない中間報告の数字からは、明らかに安全であるとも危険であるとも言えません。
「妊娠初期にワクチン接種した多数の女性のより長期の追跡調査が必要」
ここには妊娠初期には注意が必要と言う特記的懸念があります。
この調査をしないまま、日本の当局は結論を出すのでしょうか。
CDCが引用して「明らかな安全性兆候が見られた」と言えばそれに盲従するのでしょうか。
これは妊婦と乳児の生命と健康に関わり、論文を違って解釈し、政治化する人の責任は大きいのです。
厚労省には論拠の再考を求め、本稿を終えます。
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