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Feb 27 10 tweets 1 min read
シオノギの内服薬の臨床試験がひと段落し厚労省への承認申請が行われました。臨床試験がどのように進むかを概説しつつ、今回の結果について考えてみます。いろいろ議論が出ているテーマであると思いますので。最初に、二重盲検法について。これは予断を排するための手段です。 shionogi.com/jp/ja/news/202…
臨床試験では、たとえば、乳糖という白い粉末を特効薬だと医師が患者に言いつつ投与すると治療効果が見られることが古くから知られています。そこで薬効を正しく評価するために、見かけがそっくりな偽薬を用意して、投与する医師も患者もどちらを飲むかがわからないようにします。これが二重盲検法。
これに対して医師も患者も中身がわかる状態での臨床試験はオープンラベルでの試験と呼ばれます。臨床試験の段階は三つ。最初はphase 1ですが、これは安全性と薬物の体内動態を調べるのが目的。若い成人男子が対象で比較的小規模に投与してみて有害事象がないことや薬の血中濃度などを測定します。
ここで問題なければphase 2へ。phase 2は薬効確認が中心です。人数が増えるので安全性もさらに検討されます。今回の治験では少人数でのphase2aと規模拡大のphase2bに分けて行われました。最初に数十人という少人数で感触を見てから規模を拡大へ。ここで効果が確認されれば大規模なphase 3へと展開。
phase2で効果が立証されるとPOC、proof of concept が達成されたというようなことが言われます。つまり薬が理論通り効くことが示されてということです。ここから、今回の治験のデータについて考察します。治験にとって不利だったのは重症化の確率が低いオミクロン株の感染者が中心となったことです。
ファイザーの同じ作用メカニズムの内服薬では、非接種高齢者の感染者、それも強毒型のデルタ株の感染者が対象でした。本当は日本でも同様に進められれば良かったのですが、悲しいかな高齢者はほとんど接種を終えていたため治験対象者が見つからなかった可能性があります。
医薬品の効果を測定するときに測定のダイナミックレンジが大きいほど効果の測定は容易になりますが、そもそも重症化のケースが少ないオミクロン株では、症状が軽いため効果が十分観察できず、一部の症状は有意に改善されたものの、12項目という効果の総合測定では統計的な有意差なしという結果に。
これは、実はファイザーの内服薬でも同様の現象は起きていて、高齢の非接種者、そして基礎疾患を持ついわゆるハイリスクグループでは確かに効果が見られていますが、この条件から外れたグループでは同様に効果に有意差なしとなっています。したがってシオノギの内服薬の効果は現状では判断が困難。
この段階で承認するかどうかは、科学的判断というよりも、正に政治的判断となります。感染力のあるウイルスは減少していますので、治験デザインを変えれば効果がより良く観察できるかもしれません。ファイザーのように非接種、高齢、基礎疾患ありで、なおかつ強毒型ウイルスの感染者という形。
効果の立証は不十分ですが、もしも認可されたとしてもハイリスクな方に限定して使用すべきだと思います。特例承認では、残念ながら臨床試験の規模が小さく安全性が十分担保されていないからです。医薬品の承認後に大規模投与が行われた後で致命的な副作用が見つかる可能性が残されているからです。

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Mar 1
このmRNA型生物製剤では生殖毒性の評価が全く行われていないことを書いておきたいと思います。これまでの不活化型ワクチンではウイルスそのものは不活化されている、つまり増殖できなくなっています。また皮下注射のように局部に留まるような方法で接種されますので全身への分布と作用は考慮不要。
ところが、今回、問題になっているものはmRNA型生物製剤と呼ぶべきもので実験的な生物製剤です。このことを意識しないで接種を受けている人がほとんどだと思います。mRNAを脂質ナノ粒子にくるんでヒトに投与するというものです。接種後にこれは全身を巡り、肝臓、副腎、卵巣などに蓄積されます。
このような製剤の場合には生殖毒性を動物実験で検証するのが必須です。生殖毒性の検証というのは接種された動物から生まれた子孫の個体に異常がないかどうかを調べることです。短期間で実用化されたために、接種後の体内動態の解析と急性毒性の検証がかろうじて行われただけなのが実態です。
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Mar 1
mdpi.com/1467-3045/44/3…  mRNA型生物製剤が、細胞内のLINE1を活性化することにより逆転写酵素が動き出しその結果、スパイクのmRNAがゲノムに組み込まれるということを示す論文が発表されました。つまり接種されたスパイク遺伝子のmRNAがゲノムに組み込まれて恒久的にスパイクを発現することに。
この論文の研究の出発点は、ファイザーmRNA生物製剤を接種した後の動物実験における体内動態のデータです。mRNA型生物製剤は接種された後に肝臓に集積することが既に示されています。そこで、筆者たちは肝臓由来の細胞株で実験を行いました。Huh7というこの分野ではよく知られた細胞です。
LINE1というのはヒトゲノムにたくさん見つかる反復配列ですが、これはレトロトランスポゾンと呼ばれる配列で、言うならば、過去にゲノムに取り込まれたレトロウイルスの残骸です。レトロウイルスというのは逆転写酵素を持つウイルスの総称です。
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Feb 25
想像していた副反応出現メカニズムが実際の検体で証明!スパイクタンパク質には膜貫通ドメインが存在するため、全長で発現してしまうと、体内各所の細胞の膜上に林立します。膜貫通ドメインというのはタンパク質に見られる構造です。この構造を持つタンパク質は膜タンパク質として発現します。
細胞の膜上でスパイクタンパク質が発現しているというのは、細胞が巨大なウイルスのようになったものです。既に感染を経験している人だと最初の接種後に、二回目だと全員で細胞の表面のスパイクタンパク質にIgG抗体が結合します。そうすると抗体のFc配列を目指してナチュラルキラー細胞が集合します。
ナチュラルキラー細胞は、がん細胞などを攻撃するリンパ球です。動画ではリンパ球のinfiltration という言葉が出てきますが、日本語で言うとリンパ球の浸潤ということになります。集まってきたナチュラルキラー細胞に攻撃されて、脳の血管内皮細胞であれば、脳出血がという仕組み。
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