私たちの現在点:ウクライナ「これまで」と「これから」~一局集中時代の終末 /マイク・スレボダ(モスクワ国際関係アナリスト) &アーニャ・パーレムピル(ザ・レッドライン/ザ・グレイゾーン)/ 後編

Forever War in Ukraine or End of Unipolar World? /Mark Sleboda & Anya Parampil 2022/03/05(全訳)
①マーク:アメリカがヨーロッパを梃子上げしました。アメリカとアメリカ企業とそれと関係するすべてのヨーロッパの企業とが緊密に結びついて働きながら、ロシアに空前絶後の経済制裁を始めました。
②アーニャ:次はその制裁について話してください。というのはバイデン大統領が一般教書演説の中でロシアのオリガルヒに狙いを定めると言ったからです。
③マーク:ロシアの人々はロシアのオリガルヒが嫌いです。ただ、ロシアのオリガルヒはアメリカのオリガルヒのように政府を思いのままに操る力を持っていません。プーチンが彼らの政治的パワーを奪いましたから。現在のロシアのオリガルヒは国の利益に奉仕するように仕向けられています。
④マーク:中国と似ていますね。私はマイケル・マックフォウルのツィートを見ました。彼はオバマ政権下で駐ロシア大使をしていた人物です。彼は「私はロシアの金持ちの友人みんなに言いたい。金目になるものを全て持って、すぐに逃げなさい。」と書きました。

※Michael Mcfaul & Obama
⑤マーク:こんな事は言いたくありませんが、一般のロシア人は、ロシアのオリガルヒがアメリカに行って身包み剥がれた上に処刑されたところでそれほど腹を立てないでしょうね。

アーニャ:ロシアの7つの銀行が※SWIFTから排除されました。その衝撃はどうですか?
⑥※SWIFT: 国際銀行間通信協会 (Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication) 世界の銀行間の国際金融取引を仲介するネットワーク。ドルを基本としている。1973年設立、ベルギーに本社を持つ。制裁の手段として過去に利用された経緯がある。 続く→
⑦続き→2012年、イラン核開発(平和利用)に対する制裁として全てのイランの銀行を国際ネットワークから切り離したとき、イランの通貨リヤルが大暴落した。2014年、イスラエルへのボイコットを拒否する代わりに、逆に親パレスチナ活動家からの電話を遮断した。
⑧マーク:彼らは意図的にエネルギー部門をそこに含みませんでした。エネルギーがこなくなるとヨーロッパは生きていけなくなることを知っているからです。現在、夥しい数の制裁がロシアに課せられています。ロシアの中央銀行をSWIFTが攻撃しています。それから、…
⑨アーニャ:ロシアの航空業務もそうですね。

マーク:はい。現在、私たちは今、分断された世界に移行しようとしているのです。ヨーロッパ諸国がロシアのすべての航空機の領空立入を禁止しました。お返しとしてロシアはヨーロッパのすべての航空機の領空立入を禁止しました。ロシアの領空は膨大です。
⑩マーク:世界の航空機が通るスペースの1/3がロシア上空です。シベリア上空が飛べないので、アジア行きのヨーロッパ航空便が破綻しつつあります。世界中で大規模な経済的、政治的、文化的、社会的な契約破棄の嵐が吹き荒れているのです。そして物理的にも。貨物船も貨車も航空機も使えない。
⑪マーク:新しい冷戦時代の到来です。ロシアだけが敵ではありません。中国も標的となっています。アメリカ合衆国はすでに中国を厳しく罰すると発表しました。中国がロシア制裁を拒否しているというのがその理由です。馬鹿げた話です。
⑫マーク:今、私たちが経験しているのは一極集中世界の終焉です。いま、私たちは歴史の転換点にいるのです。しかし、安定した多極的世界も未だ生まれていない。なぜなら、アメリカが自らを頂点とした、そして崩れゆく一極集中世界に強く執着しているからです。
⑬マーク:そして、それを保持するために、ロシアや中国やイランや、その他の国々に強い圧力をかけている。とりあえず、私たちの前に立ち現れる世界は二極的世界でしょう。ソ連崩壊から30年後の今、再びそれが現れようとしているのです。
⑭アーニャ:ここ数年、私は集中的にベネズエラを取材してきました。普通の人々からトップランクの外交官まで、たくさんの人に直接会って話をしてきました。また世界中の人々と話をしてきました。その過程で、私はあることを実感するようになりました。
⑮アーニャ:世界のさまざまな場所で今、何が最重要な事なのかを実感するようになっていったのです。それは大小さまざまなたくさんの川がやがて一つの大きな海に合流していくような感覚です。ロシア、中国、イラン、ベネズエラ、…システムやイデオロギーにおいて、もちろんいろいろな違いがあります。
⑯アーニャ:けれども、みんな共通の脅威を経験してきました。トルコでさえ、そうです。私たちは今、みんなで力を合わせて、これまでとは違った一つのオールタナティブな世界を構築しようとしているように思えるのです。
⑰アーニャ:アメリカ合衆国やヨーロッパに依存しない、脅かされない、もう一つの国際経済金融ネットワークです。けれども、今のあなたの話から判断すると、少なくともヨーロッパはアメリカから独立できそうもないということではないでしょうか。
⑱アーニャ:その結果としてヨーロッパの普通の人々が受ける経済的打撃はとてつもないものとなるでしょう。オラフ・シュルツが自らの政治キャリアに死刑宣告するような宣言に署名したばかりです。
⑲マーク:そうです。西側がロシアに課した制裁の結果として、もし幸にしてそれが大恐慌でなければの話ですが、私たちはこれから地球規模の大不況を経験することになるでしょう。それを誰もが覚悟しなければなりません。
⑳マーク:ロシアの購買力をドルに換算して、ロシア経済はイタリアよりも小さいなどという人がいますが、全くナンセンスです。ドルに結びつけて考えるといろいろな事が現実から外れます。
㉑マーク:ロシアは小麦と他の数種類の穀物の世界最大の輸出国であり、天然ガスの世界最大の輸出国であり、年によって世界第一位、二位を争う石油輸出国であり、世界第三位のチタン産出国であり、世界の40%の肥料の供給国でもあります。それを彼らは自分の方から切り離そうとしている。
㉒マーク:今、西側がやろうとしている事は、全世界が必要としているそれらのコモデティを、すでにパンデミックで深刻な物不足に陥っている世界市場から完全に締め出すことです。石油価格は急騰し、今日は1バレルあたり100ドルを超えました。ガスの価格は記録破りに高騰しました。
㉓マーク:ヨーロッパで1,000立方メートルあたり2,300ドルを超えました。すでに深刻なガス不足です。1年前に比べて、1,000%の高騰です。ガスや石油は、彼らが家の暖房や工業で必要とするものです。小麦の価格が天井知らずに上がっています。また、ロシアは世界第二位のアルミニウム輸出国です。
㉔マーク:アルミニウムは飛行機をはじめ、さまざまな工業に必要なものですが、かつてなかったほど価格が高騰しています。そして、これに緊急に対処できるいかなる方法もありません。その意味するところは、物価全般においてとんでもないインフレが起こるということです。
㉕マーク:石油は、食糧生産を含む全ての産業の基盤です。石油の価格が高騰すれば、当然、世界で食糧供給のコストが高騰する。
㉖マーク:先進国では熾烈なインフレ、生活の質の低下、今ですら心細い年金生活者の暮らしを綿埃のようにあっさりと吹き飛ばしてしまうことを意味し、発展途上国においては文字通りの饑餓地獄を意味します。例えば、エジプトは60%の小麦をロシアからの輸入に頼っていますが、それが来なくなる。
㉗アーニャ:「アラブの春」で街じゅうがデモの人々で溢れ、30年間君臨してきたムバラク政権があっけなく倒れたのは、ロシアで大規模な山火事があって小麦が損害を被ったことが原因だったと記憶しています。マーク、私は正しいですか?

マーク:あれはロシアが気候変動の打撃を被っていた年でした。
㉘マーク:そこに山火事がトドメを刺したのです。ですから、答えはイエスです。ちょうどカリフォルニアや西海岸が山火事の被害を被ったように、ロシアもあの時被害を被ったのです。あの年のロシアの小麦の大被害が北アフリカの政治的不安定の引き金になりました。
㉙マーク:もちろん、それはたくさんある原因の一つに過ぎませんが。

アーニャ:たくさんの原因があるのですね。でも。

マーク:体制を急速に不安定化させていった原因の一つであることは確かですね。
㉚マーク:アラブの春で独裁者が次々と倒されて行った時、抗議の民衆が皆口々に叫んでいたのは、「腹が減った。パンよこせ!」でした。(笑)

アーニャ:ここで少し話題をヨーロッパから離したいと思います。この問題に関して中国の役割をどう思いますか?
㉛アーニャ:中国はロシアとウクライナの仲介をしたいと言っています。中国はプーチンの意思決定や今回の軍事行動にどのような役割を演じる事ができますか?

マーク:中国は国際政治の表舞台でたいへん上手に外交政治劇を演じます。国際社会において自らを表現するプライマリー手段ですから当然です。
㉜マーク:それはロシアも同じです。国際法に則った正しい行動を尊重します。しかし、ドンバスの二州を独立共和国と認めてしまう事で、台湾やウイグルや香港独立の先例を作ってしまうのではないかと中国は心配しています。しかし、その一方で、中国の現実の政治的ポジションというものがあります。
㉝マーク:中国のメディアは、まずウクライナで起きている出来事を説明する言葉の中から細心の注意を払って「侵略」という表現を全て取り除きました。これはメディアをめぐる政治劇です。アメリカがある国を侵略するとき、アメリカのメディアはそれを侵略と言わず「干渉」と表現します。
㉞マーク:そして他の国がやると、それを「侵略」だと非難します。それはプロパガンダマシーンがいかに作用するかというだけの話で、アメリカであれロシアであれ中国であれ、世界中どこの国でも見られることでしょう。
㉟マーク:ニューヨークタイムズの記事が明らかにしたことによると、数ヶ月前に、確か12月だったと思いますが、ロシアがウクライナ国境の兵力を増強している。その時、私はロシアは軍事介入するだろうと予測しましたが、同意する者はほとんどいませんでした。
㊱マーク:それはともかくとして、その時、アメリカは情報局を伴って中国に行き、「へイ!これは問題になりそうだぞ。私たちはあなたにロシアを止めてもらいたい」と言ったそうです。
ご存じのように、アメリカは台湾、香港、ウイグルを中国から分離させるために様々なことをしてきました。
㊲マーク:中国に人権運動や草の根運動を装った大量のテロリストを送り込んで目にあまる破壊行動を繰り広げたり、かと思うとメディアを使って中国が深刻な人権侵害をしているとデマを流したり、またそのありもしない人権侵害を使って大規模な経済制裁を課したりしてきました。
㊳マーク:貿易、関税、制裁など、フルスケールの経済戦争を中国に仕掛けてきたのです。また、台湾海峡や南シナ海では大艦隊を行ったり来たりさせて武力による威嚇を繰り返してきました。
㊴マーク:QUADを作って、アメリカ、日本、インド、オーストラリアを引き入れ、中国包囲網を強化しました。アジア太平洋地域でミサイル・軍事基地を増強してきました。そこで、「「へい!これは問題になりそうだぞ。私たちはあなたにロシアを止めてもらいたい」と言われても、どうでしょうか?

※QUAD
㊵マーク:いったいどのツラ下げてそんなことが言えるのだ、ということになるのではないでしょうか。ニューヨークタイムズによると、中国はそこで得た情報をそのままロシアに送って、「どうぞ、ご参考に」といったそうです。誰もが、中国が国連の場で発表する公式な外交スピーチを知っています。
㊶マーク:と同時に、水面下で中国がやっている中国の本当の外交にも気づいています。今回のことについても、ロシア政府と中国政府、プーチンと習近平は密接に連絡を取り合って共同作業をしています。
㊷マーク:両政府は、万一、あらゆる外交アプローチが失敗に終わって、安全保障が確保できず、ミンスク合意が水に流れてしまっても、その場合を想定して方針を練ってきました。
㊸アーニャ:インドはどうでしょうか?インドは今回の「ロシア批難決議(事実は非難決議condemning ではなく、嘆きの決議doploring)」に棄権しました。アラブ首長国連邦でさえ、棄権しました。
㊹マーク:イスラエルも制裁を拒否しています。避難決議には賛成票を投じましたが、制裁はしないと決定したのです。
インドについてですが、ソ連とインドの間には強い結びつきの長い歴史がありました。そしてそれはソ連崩壊後、ロシアとインドの間に引き継がれました。
㊺マーク:特に軍事技術の提携において、それは顕著でした。現在でもインドの武器の65%がロシア製です。最近、その市場にアメリカが強引に入り込んできているので、ロシアとしては面白くありません。その分、インドとアメリカの関係が親密になりますからね。
㊻マーク:というわけで、現在のロシア・インドの関係はかつてのように親密ではなくなりました。一方で、インドはロシアが中国と密接な同盟関係に入ったことが面白くありません。そしてロシアと中国は、インドがアメリカと親しくなり、QUADに加盟したことが面白くありません。
㊼マーク:今はアメリカ合衆国の覇権主義に対抗するためにユーラシア大陸の結束が必要な時ですから、なおさらです。それにもかかわらず、ロシアとインドの関係は依然として友好的だし、長い間積み重ねてきた友好の歴史を傷いたくないと両国は切に願っている。
㊽マーク:それにインドには国連の場で、搾取される国々を代表して帝国主義やアメリカ一極支配に抵抗の声を上げてきたという長い歴史があります。確かにインドと中国の間にはたくさんの意見の相違があるでしょう。
㊾マーク:しかし、中国も国連の場で、搾取される国々を代表して帝国主義やアメリカ一極支配に抵抗の声を上げてきた長い歴史を持つという、両者には共通点があります。
㊿マーク:そして、インドも中国も、アメリカが世界中でやってきた侵略とクーデターとレジーム・チェンジの数々についてよく知っているし、当然、2014年のクーデターから現在に至るウクライナでの経緯もたいへんよく知っているのです。そして、インド自身がアメリカの制裁の犠牲者でもあります。
51. マーク:そうかといって、表立ってロシアを支持することもできません。アメリカの経済制裁が怖いですからね。アメリカが送りつける脅迫状の恐怖を世界中の誰もが皆よく知っていますから。だから、最善の方法は距離を置くこと、つまり棄権が一番だということになるでしょう。
52. マーク:同時に、ロシアに嫌われても困るということもみんなが知っています。パキスタンのイムラン・カーン首相が訪露しました。
53. マーク:ロシアが軍事作戦を開始したその当日でした。モスクワの空港に降り立って、記者団に囲まれた彼が開口一番に言ったことは「ワクワクするような事が起きていますね。その現場にいる事は大変興味深いです」でした。そして小麦や天然ガスの輸入をはじめ多くの商業契約を取り付けて帰りました。
54.マーク:ですから、全てがカードの一枚なのです。グレート・パワーが競い合う政治ゲームの一枚なのです。もし、インドがアメリカに近づきすぎると、ロシアはパキスタンに近づく。パキスタンはすでに中国と親密な友好関係にあります。
55. マーク:多極的世界の、現実的利害の、諸々の政治的理由がインドに棄権表を投じさせたわけです。そして、インドはこれからも問題の枠外にとどまり続けることでしょう。しかし、ここに重要なことが一つあります。
56. マーク:それは、インドにせよ、中国にせよ、パキスタンにせよ、今回のことについて、本音でアメリカを支持している国は一つもいないということです。それは世界の半分以上の国々の本音でもあります。
57. アーニャ:最後に、最初の疑問に戻って会話を締めくくりたいと思います。どうして、また、どのようにして今回のロシアの軍事行動が起こったのかという疑問です。軍事作戦開始以来、マーク、あなたがどう分析しているか、私はずっと知りたいと思ってきました。
58. アーニャ:もう数ヶ月も前から、あなたはそれを予言していましたからね。ロシアがウクライナ国境に兵力を増強している時、アメリカのメディアはこぞって戦争を煽ることばかりやっていました。

マーク:彼らは、「正解」でしたね。(笑)
59. アーニャ:はい。でも、彼らは両者の対話の可能性をすっかりダメにするためにそれを使っているようです。話し合いができないようにするために、盛んに煽っていたのです。
60. アーニャ:「みろ!だから言わないこっちゃない。ロシアは侵略しただろ!だから、 ウクライナにはNATOが必要なんだ。ジェノバでいつまでもロシアと同じ席について話し合いなんて無駄なことなんだ」と。ある時点まで、プーチンは虚勢を張っていた。しかし、ついにやらざるを得なくなった。
61. アーニャ:いったい、いつ、どこでシフトが起きたのか、私は不思議に思っています。多くのアメリカ人が情報局の情報を信じなくなっていました。でも、本当はそうなるということをすっかり理解していたのでしょうか?
62. マーク:過去7年間、モスクワはキエフ政権がミンスク合意を履行するように根気強く努力し続けてきました。なぜなら、ミンスク合意こそが、2014年のクーデターで破壊されたキエフ政権と東ウクライナの関係を修復できる唯一の手段だったからです。
63. マーク:ミンスク合意は、まず、❶東ウクライナ・ドンバスの二州を自治州とし、そこの政治的・文化的・言語的権利を保証する。さらに❷ドンバスの二州にウクライナの外交政策決定について実効性のある拒否権を保証することです。それによって、初めてウクライナの中立性が回復されるのです。
64. マーク:なぜなら、その時からウクライナはもはやNATOに加盟することができなくなります。なぜなら、NATO加盟でウクライナが反露化することに反対して東ウクライナが拒否権を発動するからです。
65. マーク:反対に、ウクライナがロシア側の集団的安全保障組織、例えばユーラシア・ユニオンや上海協力機構に加入することもできません。西ウクライナが拒否権を発動するからです。そこで必然的にウクライナは中立とならざるを得ない。
66. マーク:しかし西側諸国は、まさにそのウクライナの中立そのものが我慢できないわけですよ。
67. マーク:あたかもミンスク合意を求めるようなフリをして、口先だけの芸当を演じながら、その裏でキエフ政権には「絶対に、ミンスク合意を履行するな」と言って、ウクライナ国内に事実上、NATOの基地を建設し、武器を送り続けてきたのです。
68. アーニャ:ちょうど、イスラエルとパレスチナのようですね。イスラエルはあたかも「交渉」を望んでいるかのように装いながら、実際にやっていることはパレスチナ人の土地を奪い、パレスチナ人を拷問し、パレスチナ人を殺していることで、違法な入植を続けています。
69. マーク:まさに、その通り!あたかも「交渉」を望んでいるように装いながら、その実は大量の武器と軍事顧問を送り、ドンバスの人々に向けて砲撃を続けされている。ドンバスの人々全員がロシアへ逃げていなくなってしまうか、完全にその権利を放棄する時が来るまで続けるつもりです。
70. マーク:その事を西側のメディアは全く報道しませんでしたが、すでに2014年と2015年の二年間だけでキエフの砲撃を受けて家を失った東ウクライナ人200万人がロシアへ逃げているのですよ。ロシアはそれをずっと見ているわけです。そして紛れもなく時限爆弾だと見ている。
71. ウクライナのNATO化、ドンバスに対する軍事攻撃の激化、...7年間です。そして、ロシアは最後の外交努力をしました。アメリカに通じる唯一の言語は「武力」であり、すべての原因はアメリカNATOの拡大・東進であるという事を十分に承知しながらです。しかし、やらないよりもマシだろうと思った。
72. マーク:アメリカの後ろ盾を得て、すっかり気が大きくなっているキエフ政権は、交渉上の最も基本的なイロハから拒否してきました。つまり、ミンスク合意の第一条です。お互いの政治的代表と同じ交渉の席について話し合うということを拒否したのです。
73. マーク:彼らは、ドンバスの代表者たちを「ロシアの傀儡」と呼び、単なるテロリストだと罵りました。「こんな奴らは知らない」と言いました。すると1年ほど前から、ロシアも同じ方法を採用するようになりました。
74. マーク:つまり、「ゼレンスキーはアメリカの傀儡だ。ゼレンスキーなんかと話しても無駄だ。直接、バイデンと話す。ゼレンスキーなんか知らない」というふうになったわけです。フランス、ドイツを含む交渉の機会であったノルマンディ・フォーマットの会談も彼らは意図的に潰しにかかってきました。
75. マーク:ロシアが、フランスとドイツに「どうぞ、あなた方のクライアント・ステートであるキエフ政権にミンスク合意を履行するように強く言ってください」と頼みました。「そうすることで、ウクライナに再び平和を取り戻すことができますから」と頭を下げました。
76. マーク:フランスとドイツは「ノー」と言いました。「私たちは絶対にそんなことはしない」と断りました。ロシア代表は言いました。「じゃあ、一体、交渉とは、外交の意味とは何なのですか?!」フランスとドイツはこうして外交の扉を閉ざしたのです。
77. マーク:後になって、この会談の議事録が公表されました。フランスもドイツも公表されたことに腹を立てています。ですから、ロシアはこの外交の最後の大きな努力をしました。最後の手段としてそれをやりました。
78. マーク:なぜなら、ロシアの安全保障を考えたとき、どこを見ても時限爆弾だらけでしかもチクッタックチックタック鳴っている。もちろん、ロシアは今回の作戦のコストがとてつもないものになることをよく知っていました。
79. マーク:ロシアの経済にとっても、ロシアが作戦の過程でウクライナ人を殺してしまうことについてもひどいことになるでしょう。少なくとも一人の東ウクライナ人も殺したくないのだから、絶対にしたくはなかった。
80. マーク:ロシア政府にとっても、ロシア軍にとっても、ウクライナでロシア語を母国語として話す人々は同じ人々と思っているのです。ロシアは自分をこんな状況に追い込みたくはなかった。しかし、今、それをやらなければ、状況はさらに悪くなって帰ってくることがわかっていた。
81. マーク:だから、彼らはそれをやったのです。最後の最後の手段です。私はプーチンが虚勢を張っているのでないことをみんな知っていると思います。彼はこの2ヶ月間、NATOとの国家安全保障を確保するために何度も何度も何度も交渉を試みました。合意を引き出すために、かなりの妥協案を出しました。
82. マーク:例えば、アメリカがヨーロッパに配備している数百発の核弾頭の撤去は要求しないつもりでした。しかし、ただただミンスク合意だけはどうしても譲れないことだったのです。それによってウクライナの中立を確保し、NATO加盟だけは防ぐことができるからです。
83. マーク:しかし、全ての努力が失敗に終わってしまったのです。肝心なことについては、ただひとつの譲歩も得ることができませんでした。ですから、ロシアは作戦を実行しました。最後の手段だったからです。
84. マーク:制裁はロシアにとっても、ロシアの経済にとっても、ロシアの人々にとって過酷極まりないものになるはずです。インターネットを見てください。フェイスブックからインスタグラムまでロシアを排除しました。世界最大の小売流通会社AmazonからDHS、ディズニー、… 何から何まで、全てです。
85. アーニャ:FIFA。スポーツ。

マーク:スポーツ!スポーツは政治に利用すべきではないのではありませんか?ロシアは今、西側世界から完全に排除されようとしています。ドストエフスキーもチャイコフスキーもラフマニノフも知らない西側の子供たちがやがて大人になっていくことでしょうね。
86. マーク:ロシアも同じやり方で応じるでしょう。アメリカとヨーロッパがRTとスプートニクを排除しました。Google、Facebookが排除しました。ロシアはGoogleもフェイスブックも禁止しました。
87. アーニャ:ウィキペディア。

マーク:ウィキペディア!ウィキペディアは まさにCIAとMI6の道具です。

アーニャ:そうですね。(笑)
88. マーク:一極世界が瓦解し、世界は今、分断されつつある。わたしたちが目の前で目撃しているのはそれです。世界中がインターネットでつながる黄金時代は終わりました。いつか、お孫さんに「そういういい時代があったんだよ」と教えてあげてください。
89. マーク:中国を中心としたインターネットが構築されたし、イランも同じ試みをやっています。ロシアはカザフスタン、ベラルーシ、周囲の国々とインターネットを構築するでしょう。アラブ世界も同じ事をやるでしょう。それぞれの地域だけでつながるローカルなインターネットの時代になるのです。
90. アーニャ:マーク、あなたが今、説明してくれたように、地政学的シフト、経済的シフト、私たちの生活のあらゆる点でシフトが起きて、それが大きな衝撃となるでしょう。私としては、未来について、何かもっと楽観的なものが欲しいです。
91. アーニャ:けれど、あなたは国際関係アナリストであり、現実的なものの見方をしますから、それを尊重したいと思います。そして、それを世界と分かち合えることを希望します。分断されても、ワシントンとモスクワが何らかの形でつながっていられるように希望します。
92. マーク:そのためのメディアをなんとかして探し出さないといけませんね。(笑)

アーニャ:きっと見つかると思います。私はあなたがとても忙しい人だということを知っています。ありがとう、マーク。どこに行けば、あなたに会えますか?
93. マーク:今のところ、まだ私のツィッターとフェイスブックのアカウントは削除されていません。ブルーマークもついています。それが削除されたら、私は難民になりますね。もし、まだスプートニク・ラジオにアクセスできるなら、私はほとんど毎日出ています。
94. マーク:それからCGTNやパキスタン、インド、ブラジル、…非アメリカ系メディアのほとんどにたくさん出ています。
アーニャ、私を番組に呼んでくれてありがとう。私はグレイゾーンが大好きです。あなたもマックスも大好きです。グレイゾーンに呼ばれることは私にとって名誉です。
95. マーク:私の妻はクリミア出身で、私の家族は東ウクライナ出身ですから、私は個人的にもアナリストとしてもあまり聞かれることのない東ウクライナの声を伝えることができるでしょう。

アーニャ:マーク、それにあなたの分析はいつも正しかったわ。
96. マーク:残念ながらね。私は自分の分析が外れてくれた方が幸せだと時々思います。では、また会う日まで。マーク・カサンドラ・スロボダでした。ごきげんよう。

オリジナルはこちらでご覧いただけます。
97. 解説:「世界は、世界を破壊したい人々で満ちている」

Forever War in Ukraine or End of Unipolar World? /Mark Sleboda & Anya Parampil 2022/03/05(全訳)を前編・後編2回に分けて紹介しました。
98. 読んでいただいて、明日にでも、否、今日にでもウクライナの戦争を終わらせる事ができるという事を明確に理解していただけたのではないかと思います。(まだ理解できない人は、もう一度最初から注意して読み直してね)。それは言うまでもなくもう7年も前から存在するミンスク合意の履行です。
99. 「NATOの拡大がウクライナを不安定にし、ロシアを不安定にし、ヨーロッパを不安定にし、世界全体をとんでもない破局に導いていくから、拡大はするべきではない」事は、冷戦の設計者であるジョージ・ケナンでさえ警告していた事です。
100. また国際関係の権威ジョン・ミアシェイマーが繰り返し警告してきたことです。そして、その「やってはいけないこと」を世界がやり、警告通りに今、世界が破局に向かっている。
101. ですから、それについての合理的な解答は一つ。「やってはいけないこと」を今すぐに止めることであって、それが具体的に言うと、ミンスク合意の履行だということになるわけです。ところが、現実を見ると、世界は解決と正反対の方向、破局に向かってどんどん加速しているようです。
102. それほど複雑でもないこの問題の本質を棚上げしてメディアでは、プーチンの悪魔化キャンペーンの嵐が吹き荒れています。
103. やらなければならないデモは「キエフにミンスク合意の履行を要求します!」でなければならないのに、全然やらない。
104. そのくせ「プーチンは悪魔だ」と言われれば、プーチンを悪魔のように憎む事ができ、「人道支援」と言われれば、ウクライナの場所さえよく知らないくせに、戦争継続・加熱の寄付ができる。しかも心から良い気持ちになってそれができる。寄付が政治行動であるという自覚すらない。
105. 自らの愚かさが招く大不況は、自らの生活を破壊し、世界そのものを破壊していくことになるでしょう。いったい、どこが「国民の生活が大事」なのでしょうか?その時になっても、愚かな人々はその不満の吐口を、その責任を誰か無実の対象に押し付けてしまうのでしょうね。

(了)
106. 次回は、Max Blumenthal: US is Arming Neo-Nazis in Ukraine/The Real News Network/2018/02/05 (全訳)を、お送りします。


まだリアル・ニュースにいた頃のアロン・マテがインタビューアーをしています。お楽しみに。✌️

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Mar 12
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Forever War in Ukraine or End of Unipolar World? /Mark Sleboda & Anya Parampil 2022/03/05(全訳) ImageImageImage
①マーク:モスクワは軍事キャンペーン最初の数日においてたくさんのミステイクを犯しました。それは作戦があまりにもソフト過ぎたという意味です。
キャンペーンの目的の一つはウクライナ人のあるグループを、ウクライナ人の別のグループの暴力から保護することでした。
②マーク:ロシアは初めからウクライナと戦争するつもりなど全くなかったし、今もないのです。ロシアが保護しようとしているのは他でもない東ウクライナ・※ドンバスの人々です。彼らは過去8年間にわたってキエフ政府の砲撃対象になってきました。
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Mar 7
ロシアにちょっかい出す度に3倍返しされてきた西欧(+アメリカ)帝国主義とロシアの歴史的関係/ジェラルド・ホーン教授 (ヒューストン大学、歴史学)

“History Doesn’t Repeat Itself, but It Often Rhymes” – Mark Twain
「歴史は繰り返さない。しかし、しばしば韻を踏む」– マーク・トゥエイン
①私は次の三つの時間的フェーズで捉えています。
❶〜1917年:ボルシェビキ革命以前
❷1917年〜1991年:ソビエト時代
❸1991年〜現在:ソ連崩壊から現在

❶〜1917年:ボルシェビキ革命以前
過去数世紀にわたってヨーロッパ諸国はアフリカ大陸やアメリカ大陸を略奪・搾取する事で繁栄してきました。
②イギリス、フランスなどに代表されるそれら列強は地球規模のスーパーパワーでしたが、しかし、ヨーロッパ内部においては際立ったヘゲモニーを持ちえなかったのです。そのためにヨーロッパは内部に常に不安定性の危機を抱えていました。その矛盾を解消しようとしたのがナポレオン・ボナパルトでした。
Read 51 tweets
Jan 25
新連載!

『本当のアンソニー・ファウチ:ビル・ゲイツと巨大製薬業界が民主主義と公共衛生に仕掛けた地球戦争』/ロバート・F・ケネディ・Jr.著
The Real Anthony Fauci: Bill Gates, Big Pharma, and the Global War on Democracy and Public Health /Robert F. Kennedy Jr. (全訳・部分紹介) ImageImage
連載第一回

第一章:パンデミックの不始末 (MISMANAGEMENT OF A PANDEMIC) から

V: 最終解決:ワクチンか死か (FINAL SOLUTION: VACCINES OR BURST) Image
「ペストと闘う唯一の方法は、誠実さである。」  アルベール・カミュ『ペスト』
“The only means to fight a plague is honesty.”  Albert Camus, The plague Image
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Jan 5
続けてお贈りします。
コロナ最新ニュース (お正月特別爆弾💣号)

⑵世界最大のアンダーライターM-CAM社議長が語る「特許記録が教えるコロナウイルス驚愕の起源」

David E. Martin testifies at the German Corona Inquiry Committee July 9th, 2021

(長大なため要約です。)
①ライナー・フールミッシュ (Dr. Reiner Füllmich):最初にあなたから自己紹介してもらうのが一番いいと思います。あなたはM-CAM インターナショナル・イノベーション・リスク・マネジメント社の議長ですが、そう言われても一般の人にはわかりにくいですね。あなたは何をしている人ですか? Image
②ディビッド・マーチン(Dr. David E. Martin):企業的に言うと、1998年の設立以来、私たちは世界最大のアンダーライター企業としての地位を保ち続けています。世界168カ国にまたがり、組織、個人の無形資産を管理しています。 ImageImage
Read 99 tweets
Dec 25, 2021
コロナ最新ニュース

⑴mRNAワクチン発明者が語る、ワクチン接種義務化を絶対にしてはいけない理由

The Jimmy Dore Show/EXPLOSIVE Truth About Vaccines & COVID w/Inventor Of mRNA Vaccine Technology, Robert Malone
(オリジナルが1時間15分と長大なため、要約です。)
①ジミー:今日はソルク・インスティチュートの高名なワクチノロジスト、ロバート・マローネ博士をゲストにお招きしました。彼は試験管核酸細胞内導入技術のパイオニアであり、コロナウイルスmRNAワクチン発明者でもあります。みなさん、マローネ博士です。 Image
②マローネ博士:ありがとう、ジミー。この機会を与えてくれたことに心から感謝します。今日はあなたとあなたの視聴者に重要な事実を伝えることができるので、とてもワクワクしています。 Image
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Dec 22, 2021
@War_is_Spin 私が「現実的」可能性として恐れているのは、すでにボリッシがアメリカに「買われている」のではないかということです。かつてのCIAの仕事は今のNEDの仕事になったように、やり方はますますソフト化し巧妙化しています。チリの鉱物資源は生資源の輸出で加工さえしていない。まさに植民地経済なのです。
@War_is_Spin ②農産物は言うに及ばず、土地も鉱物資源も全てごく一部の人間の私有物です。仮にボリッシが「買われて」いないのならピノチェット勢力からの軍事クーデターが予想されるし、キューバ、ベネズエラ、ニカラグアなどと連携していない彼が独力で銅などの鉱物資源を国有化する事はますます難しいでしょう。
@War_is_Spin ③反対に「買われて」いるとしたら、その方がもっと話はわかりやすいです。ウイグルのET独立派やチベットのダライ・ラマ、香港の若者などを人道主義の名の下に囲い込み、日本の左翼政党も囲い込んでいるアメリカにを思えば、信じられない話ではありません。
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