ウクライナのネオナチとアメリカ合衆国の危険な関係/マックス・ブルーメンソール(ザ・グレイゾーン)&アロン・マテ(ザ・リアルニュース・ネットワーク)

US is Arming Neo-Nazis in Ukraine/ Max Blumenthal (The Grayzone) & Aaron Mate (The Real News Network) 2018/02/05 (全訳)
①アロン・マテ:リアル・ニュースのアロン・マテです。東ヨーロッパで最近顕著なネオ・ナチズムとアンチ・セマチズムの勃興は、実はアメリカ合衆国政府と密接な関係があります。
②アロン・マテ:最近、ポーランド議会で、第二次世界大戦中のポーランド国内でナチスのホロコーストにポーランド人が関わっていた事実にポーランド市民が言及する事を禁止する法律が成立したばかりです。
③アロン・マテ:この法律では「ポーランド死のキャンプ」という言葉の使用も処罰の対象になってしまいます。ポーランド極右政権は、アメリカ合衆国の親密な同盟なのです。
④アロン・マテ:昨年7月の「法と正義」党首で首相のヤロスワフ・カチンスキー訪米は、トランプ大統領によって暖かく歓迎されました。一方、アメリカ合衆国がネオナチとして知られるウクライナ極右民兵組織Azov軍団に武器を送り、軍事顧問まで派遣していることが暴露されたばかりです。
⑤アロン・マテ:マックス・ブルーメンソールはベストセラー著者で、ザ・グレイゾーン・プロジェクトの編集長です。彼は最近、「議会で禁止を議論しながら、ウクライナのネオナチを武器を送り支援するアメリカ合衆国政府の偽善」という記事をリアル・ニュースで発表しました。
⑥アロン・マテ:ようこそ、マックス。さっそく、あなたがリアル・ニュースでウクライナについて発表した記事の内容から始めることにしましょう。あなたは、それを「アメリカ合衆国の隠密なウクライナ・ネオナチズム支援という名のスキャンダルなエピソード」と呼びましたね。
⑦アロン・マテ:どういうことなのか、説明してください。

マックス・ブルーメンソール:Azov軍団はストリート・デマゴーグのアンドレ・ベレツキーが創立したネオナチ白人至上国家主義政党ウクライナ愛国党の全面的支援を受けて成長した民兵組織でした。

※Andriy Biletsky
⑧マックス:ベレツキーは白人至上主義を謳いあげ、ヨーロッパを再び白人だけのものすると公約にしています。彼の言葉を引用すると、例えば「ウクライにおいて人種混合を禁止する」といったようなものです。
⑨マックス:彼の民兵組織が活動を特に活発化するようになったのは、東ウクライナのドンバス地域で内戦が始まってからです。このネオナチは発足するとすぐに、人々のほとんどがロシア語を母国語とするドンバスで公用語としてのロシア語の使用を禁止しようとしました。
⑩マックス:反発した市民による大規模な抗議デモとAzov軍団の衝突はすぐに内戦(というより虐殺)に発展していきました。民兵組織として始まったAzov軍団は、この時ウクライナ国家警備隊とウクライナ国軍に正式に編入され、その一連隊になりました。
⑪マックス:この国軍編入を実行したのは国務省のアーセン・アボコフという人物です。アボコフはもう一人の白人至上主義、ネオナチを標榜する人物ドミトリー・ヤロシをキエフの警視総監に抜擢しました。

※Arsen Avakov
※Dmytro Yarosh
⑫マックス:私たちはこれら一連の人物とホロコースト否認の関連を見てきましたが、特に2014年にマイダンのクーデターでウクライナの民主的に選出された政権を倒して以来たいへん活発化しています。
⑬マックス:リベラルのティモシー・スナイダーやネオコンのジェイミー・カーチェらはマイダン内にネオナチは存在しないと主張していますが、実際には国軍の制服を着たネオナチがキエフの大通りをパレードしています。それをこの場を借りて一連のレポートで紹介したいと思います。

※Timothy Snyder
⑭マックス:これは Azov軍団自身がそのホームページで紹介していた内容ですが、アメリカ軍の軍事トレーナーたちが軍団を訪ね、そこで軍事訓練を行い、兵站学上の情報を交換し合いました。
⑮マックス:写真にはナチスSSのシンボルであるウォルフエンジェルの徽章のついた制服を着たAzov軍団がナチス風の敬礼を交わしている様子が写っています。
⑯マックス:テキサスに本社を持つエア・トロニック社がアメリカ合衆国国務省の監督の下でPSRLミサイル発射砲を製造し、直接、Azov軍団に渡されました。このようにアメリカは実際にAzov軍団に武器を渡しているのです。
⑰マックス:私がウエッブサイトから削除した写真には、野外でこの武器を手にしたAzovが訓練している様子が写っていました。これは、ちょうどシリアやイラクでISISの戦闘員が外国から武器やトレーナーを受け入れるのに似ています。Azovはスエーデンの退役兵から狙撃のトレーニングを受けていました。
⑱マックス:また2016年のある時点で、フランス人ジョージ・モントを傭兵として雇い入れたことがありました。その後、モントは大量の武器・弾薬をAzovキャンプから持ち帰りました。それは数百ポンドのC-4火薬、自動機銃、グリネード・ローンチャーなどです。
⑲マックス:彼はそれを持って西ヨーロッパのサッカー場や、シナゴーグやモスクを攻撃する計画を立てていたのです。幸い、事件は未然に防ぐことができましたが、成功していたら近年のヨーロッパ史上で最も凄惨なテロ事件の一つになっていたことでしょう。
⑳マックス:さて先週、Azov軍団はまた一つ、新たにネオナチ国家組織を設立しました。政党メンバーとストリート民兵で構成されたその組織は、さっそくキエフ市街に派遣されましたが、彼らが標的にしているのは親露派を表明している人々だけではありません。
㉑マックス:彼らの言葉を借りると、「法と秩序の回復」がその目的なのだそうです。これは彼らが表明しているより大きな目標「レコンキスタ(国土回復)」の一部で、イデオロギーの中心人物であるアンドレ・ベレツキーが考案したものです。
㉒マックス:それは、文字通りヨーロッパから有色人種を追放し、白人だけの国土を「回復」することを目指すものです。ウクライナはヨーロッパ白人国土回復運動の前哨基地となるというのが、彼の言葉です。
㉓マックス:ですから今、武装した数百のネオナチ軍団がキエフ市議会を占拠し、より過激な直接要求を突きつけているところです。プロシェンコを弱腰だと非難して、NATO加盟を強く突きつけているのですが、プロシェンコ大統領がこれほど弱く見えたことは今までありませんでした。
㉔マックス:なぜプロNATOの極右から彼がこれほど批判されるのか私にはわかりません。こうした事がアメリカをはじめとする西側メディアで報道されることは決してありません。彼らはウクライナのユダヤ人コミュニティだけでなく、一般のウクライナ人をも脅かしています。
㉕アロン・マテ:作家のヨーゼフ・ロートが「ウクライナは世界のどの国にも増して、ホロコーストで活躍したユダヤ人虐殺者たちの銅像が街頭に目立つ」と書いています。ゾッとする話だと思います。

※Joseph Roth
㉖アロン・マテ:米議会で、これ以上ウクライナのネオナチに武器を送らないという法案が議題に載っていましたが、けっきょく否決されましたね。そうですか?
㉗マックス:まだ審議中です。防衛権限法など、これまでもAzovに武器を送ることを禁止する法案が議論されてきましたが、トランプ政権がレイシオン社製最新鋭タンデム・チャージ対戦車ミサイルをアメリカ合衆国NATO大使カート・ブォルカーを経由してAzovに送ることを許可したばかりです。
㉘マックス:それについて私は別に記事で書きましたが、ブォルカーはレイシオン社と非常につながりの深い人物です。Azovへの武器供給に終始積極的に動いてきました。

※ Kurt Volker
㉙マックス:なぜなら、Azovはすでに正式な国軍の一部として編成され、しかもベストファイターと見做されているので、武器供給の口実作りがずっと容易になったからです。Azovの中核である600名のメンバーがすでに「ウクライナ国家秩序回復」の名目でキエフに配属されました。
㉚マックス:ウクライナの複数のメディアによると、彼らの制服を一揃い作るだけでも170万ドル掛かるそうです。ウクライナにそれを揃えるお金があるのでしょうか?武器を常に最新鋭の状態に保つための資金をどこから持ってくるのでしょうか?
㉛マックス:アメリカ政府とウクライナ内務省のアーセン・アヴァコフの密接な結びつきを考えないで説明することはできません。

アロン・マテ:ここで少し、ポーランドについて話をしてください。
㉜アロン・マテ:最近、ポーランド議会でかつてのナチスとポーランドの協力関係について言及したり批判したりすることを禁止する法律が成立したばかりです。それ以上に、私はそれに対するアメリカ合衆国国務省のコメントにショックを受けました。
㉝アロン・マテ:国務省の見解は「批判は同盟国との友好関係や戦略的関係を損ねる恐れがある。我々の同盟関係に分裂が生じればただ敵を利するだけだ」というものでした。
㉞アロン・マテ:ポーランドとアメリカ政府の関係、それから、これはマックスの専門域ですが、ポーランドとイスラエルの関係について話してください。イスラエルはこのポーランドの新法に批判的なようですが。

マックス:ウクライナではポーランドより早く同様の法律が成立していました。
㉟マックス:ステパン・バンデラやローマン・シュケビッチなどのナチス協力者への批判をウクライナ市民に禁じる法律です。彼らを銘打った大通りやストリート、メモリアルがウクライナ中にあります。

※Stepan Bandera ※Roman Shukhevych
㊱マックス:エフレイム・ラザレフが「キエフのステパン・バンデラ大通りは、ユダヤ人大虐殺が行われた現場の一つであるバビ・ヤー広場に通じている。ホロコーストの歴史で広く知られた事実だ」と書いています。全く、反吐が出る話ですが、これについてアメリカのユダヤ人協会は沈黙を守っています。
㊲マックス:ポーランドの政党「法と正義」党首で首相であるヤロスワフ・カチンスキーが訪米した際、トランプは彼を暖かく迎えました。歓迎の演説でトランプは「文明の衝突」について、多くの言語を使用しました。

※Jarosław Kaczyński
㊳マックス:ポーランド議会で「ポーランド死のキャンプ」という言葉が禁止され、ホロコーストの協力者たちが、ユダヤ人の大虐殺した殺人者たちが名誉を回復しました。
㊴マックス:それについて、イスラエル政府は憤慨し、今週、イスラエルのメディアはホロコースト生還者で解放後イスラエルに来た “ボビーズ(おばあちゃんたち)”を特集しました。
㊵マックス:しかし、その裏で昨年、イスラエル政府はポーランドの「法と正義」の間で、ポーランド死のキャンプという表現を禁止する必要性を認めるという覚書を取り交わしていたのです。メディアはこのことについて全く触れませんでした。
㊶マックス:実はイスラエルには、その狭い国家利害のためにナチス・ドイツを含むアンチ・セミティズムと協力してきたという長い歴史があるのです。
㊷マックス:最近の事としては、トランプが勝手にイスラエルの首都をエルサレムにと宣言して大使館を移した事が国連で問題となって取り上げられた時、非難決議にポーランドは棄権しました。ポーランドは1450万ドル分のパトリオット・ミサイルを輸入する契約をイスラエルと交わしたばかりです。
㊸マックス:パトリオット・ミサイルはイスラエル製です。東ヨーロッパはイスラエルの軍事産業のたいへん有望な市場なのです。
㊹マックス:いずれにせよ、1946~1948年のナクバで自らパレスチナ人に対してホロコーストを実行し、現在に至るまでガザで強制収容所を展開しているイスラエルは、ポーランドやウクライナを批判できる立場にないのです。
㊺アロン・マテ:歴史的理解を深めるために、シオニズム運動の活動家とアンチ・セミティズムとの共同関係について、モデレート・レベルのポド・キャストに一つのエピソードがありますのでそちらも是非ご視聴ください。
㊻アロン・マテ:ジョセフ・モサードをゲストに迎え、聞き手はマックス・ブルーメンソールとベン・ノートンでお送りします。マックス、どうもありがとうございました。

オリジナル動画はこちらでご覧いただけます。
㊼解説:先々週、米議会はウクライナ支援に新たに136億ドルを供与することを決定しました。たった一晩で決めました。さらに例のゼレンスキーの演説の後、そこにさらに8億ドルが追加されました。
㊽これは人道支援及び軍事支援という名目ですが、ブレークスルー・ニュースが明らかにした内訳を見ると次のようになっています。

※ブレークスルーの人々
㊾❶800基のスティンガー・ミサイル・システム:肩に担いで発射する対空ミサイルです。
❷2000基のジャベリン・ミサイル・システム:肩に担いで発射する対戦車・対装甲車ミサイルです。
❸6000基のAT4システム:対戦車・対装甲車ミサイルです。
㊿❹100基の折りたたみ翼式ドローン:背中に担いで持ち運び、どこからでも発射できます。人間の集団や戦車攻撃用。
❺100基の擲弾発射器(グリネード・ローンチャー)
❻500丁のライフル
❼1000丁のピストル
❽400丁のマシンガン
❾400丁のショットガン
➓カートリッジ2000万個以上の弾薬
51. ⓫25000セットのボディ・アーマーとヘルメット

ただし、ここにはドンバス市民に向かってウクライナ軍が実際に使用しているクラスター爆弾や白燐爆弾は表記されていません。さらにここに潜在的には生物化学兵器が加わることになるでしょう。
52. 西側のウクライナへの武器支援の歴史は古く、すでに第二次世界大戦終結直後から始まっていて、東ヨーロッパは東西冷戦の主戦場でしたが、ソ連崩壊後、一気に西が攻勢に転じていきます。武器支援以上に恐ろしいのは思想的な洗脳で、バンデラ主義(ナチズム)が深く浸透していきました。
53. それがウクライナでは少なくとも二世代において徹底していったことになります。ナチズムが国家のプロパガンダとして行われる事の脅威は歴史が繰り返し証明しています。
54. 3月16日、ウクライナ’24’のテレビ・ホストのファカールディン・シャラフマルがアドルフ・アイヒマンの次の言葉
「一つの国民を丸ごと破壊するためには、まず子どもを皆殺しにすることから始めなくてはならない」
を引用し、
55. 「ロシアでは、私たちはナチスとかファシストとかと呼ばれているので、私自身、アドルフ・アイヒマンの言葉を引用しないわけにはいきません。一つの国民を丸ごと破壊するためには、まず子どもを皆殺しにすることから始めなければならない、と」述べました。
56. シャラフマルもビレツキーもアヴォコフもヤローシもゼレンスキーもかつてはこれらのいたいけな子どもたちの一人だったことを思うと本当にやりきれない気持ちになります。
57. もちろん、過去の忌まわしい記憶から西ウクライナを含めてウクライナ市民の多くがナチスに支配されることを嫌っており、30年にわたってたくさんの人々が逮捕され、拷問され、あるいは処刑され続けていることを頭に入れておくことが重要です。
58. 2010年から2014年まで大統領を務めたヴィクトル・ヤヌコーヴィチは決して傑出した政治家ではなかったにせよ、彼を大統領に選んだ国民にはウクライナのナチス化に抵抗するウクライナ市民の強い気持ちがあったからでした。

(了)
59. 次回予告⑴:ロシア軍事専門家アンドレイ・マチヤーノフが語るロシアのウクライナ・ディナチフィケーション(非ナチス化)/エヴァ・バートレット(聞き手)
Russian Military expert Andrei Martyanov on Russia's denazification operation in the Ukraine(全訳)
をお送りします。
60. 現在の軍事的状況、ここに至る経緯とこれからの予想を解説します。聞き手は世界で最も勇気ある女性の一人、エヴァ・バートレット。ロシア軍が市民を虐殺しているとか、負けて逃げているとかデマが飛び交っている今、状況を正しく把握しておくことは重要です。お楽しみに。
61. 予告⑵:シオニズムとアンチ・セミティズム(反ユダヤ主義)/
ジョセフ・マッサード(政治歴史学)/マックス・ブルーメンソール/ベン・ノートン
Zionism and anti-Semitism: Scholar Joseph Massad on the sordid historical alliance(全訳)

お楽しみに♪😉

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