前世紀で水素原子が量子力学構築に果たした役割は大きいし、その物理は推理に推理を重ね、実験に実験を重ねて、人類が手にした叡智。でも今世紀は原子物理学や物性物理学の最初で扱われるべき対象だと考えています。例えば水素原子の摂動論を細かくやる必要は物理学徒全員に必要かと思うわけです。
「その物理は推理に推理を重ね、実験に実験を重ねて、人類が手にした叡智だから、水素原子を量子力学の授業から外すな」という主張があれば、水素原子よりも素粒子の標準理論こそがその位置にあるべきで、素粒子標準理論を量子力学の授業で教えるか?という問題でもあります。
自分はこの動画講義のスタイルが一番良い気がしています。「量子力学」ではなく、「原子物理」と銘打って、水素原子も扱い、最後には素粒子標準理論まで解説されています。これが現代的な1つのスタイルとして推奨されるかなと思っています。
現代の量子力学の講義では、測定理論などの量子そのものの内容を提供するべきだと思います。量子力学は情報理論の1つに過ぎず、「なぜ自然は量子力学という特別な情報理論を選んだのか」という基礎物理学として重要な問題もあり、また量子コンピュータなどの多くの量子技術の源ともなるからです。
軌道角運動量の固有関数である球面調和関数も、量子ビットとしての二準位スピンの角運動量が確かに本物の角運動量であることを理解するための保存則の議論で必要であり、また量子ビット制御にも重要です。現代的な量子力学でも活躍します。

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23 Feb
メメント・モリが注目ワードに上がっていますが、自分の「生」ときちんと向き合って、そして自らの血を常に沸き立たたせながら、自由に大きく生きられるようにと、特に若い物理学徒の皆さんに向けて祈っています。
今は若者であろうと、年寄りであろうと、誰であろうと、有形無形の様々な「銃口」を向けられる激動の時代の始まりです。これからは明日自分はこの世界にいないかもという感覚も生まれる時代でしょう。そういう環境の中で「撃つなら撃て。十分に生きた!」と言い切れる人生は、一つの理想だと思います。
長い人生でも短い人生でも、その中には春夏秋冬がきちんと納まっていると言った昔の人もいました。人生は長短ではなく、その内容です。老人であろうと若者であろうと、悔いの無い自由な生き方を模索することこそが大切な時代なのだろうとおもっています。
Read 13 tweets
23 Feb
過去の量子力学の教科書で多い誤解は、

(1)ド・ブロイ波(物質波)は物理的な実在。

(2)測定時間とエネルギー測定誤差にはδtδE≥(ℏ/2)という不確定性関係がある。

(3)古典力学を正準量子化すると正しい量子力学がいつでも得られる。

というのがありますが、どれも正しくないです。
(1)について、量子力学に出てくるψ(x)は物理的実在の波ではなく、対象系の情報としての波動関数です。
Read 4 tweets
11 Apr 20
これは駄目な解答の典型例ですね。ちゃんと物理学者に答えさせないから、こうなるのです。⇒
<どんなに科学が発達しても「タイムマシン」を絶対に作れない理由 <子どもの素朴な疑問に学者が本気で答えます> a.msn.com/01/ja-jp/BB12s…
引用『「過去の時間」は「変化する前の世界」であり、「未来の時間」は「変化するであろう先の世界」になります。どちらも、「現実の“物”の世界」としては存在していません』
引用『すなわち、私たちが想像するタイムマシンが、物の世界の法則に従う機械である以上、存在していない物の世界を行ったり来たりできないのです。SF作家は、「世界」が存在し「時間」もあるらしい、ならば、「過去や未来の世界」も存在するはずだ、と誤解したのでしょう』
Read 5 tweets
17 Feb 20
観測ばかりしていると、より踊り出す反ゼノン効果も場合によっては起きたりする。
また踊っている対象が出す光を受動的に観測する間接測定ならば、量子ゼノン効果も反ゼノン効果も起きません。いくら観測ばかりしても、起きません。
Read 10 tweets
23 Dec 19
時間論の哲学者が「今」を考えるために、時間間隔の零極限(Δt→0)ではなく、形而上的(神学的?)に直上のΔt=0を考えたがるのだが、実験に基づいた物理学の観点からは、Δt=0はナンセンスな設定としか言いようがない。
その系を特徴づける「時間スケール」というものを、思考や解析において物理学者は重要視する。例えば系の物理量の時間発展をフーリエ変換して得られる関数にピークを出す周波数がωあれば、その逆数(1/ω)をとることで、その系のダイナミクスを牛耳っている時間スケールを知ることができる。
そして例えば初期状態を「今」に当たる瞬間に準備したければ、Δt<<1/ωとなる短い時間の間にそれを行えば、その「今」における操作が完了したことになる。結局Δt<<1/ωであれば、Δt→0の極限さえも実験でとる必要はない。ましてや「Δt=0」という形而上学的な概念は不必要なのだ。
Read 5 tweets
17 Dec 19
最近では量子力学は情報理論の一種であるという理解が広がってきました。波動関数(量子状態)は、物理的に実在するモノではなく、観測者にとっての対象系の情報の束です。そして前世紀に騒がれた「観測問題」も、そもそも存在しなかったことが分かっています。
波動関数の収縮の話をしましょう。例えば1つの粒子の波動関数の絶対値の2乗は、その粒子の存在確率密度を与えます。ここでは、地球と月以外にその粒子は存在していない場合を考えてみましょう。
地球に粒子があるかないかを測定で調べて、あると分かったまさにその瞬間、月に存在しないことが分かったので、月の領域の波動関数は瞬間に零になります。
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