ソウルシリーズの歴史は高難易度3Dアクションゲームのボスの在り方の迷走の歴史でもある

ボスって強くするのは簡単なんだけど、面白くするのはクソ難しいんですよ、強くするだけならHIT時の怯み無くして、HP増やして、プレイヤーより強い攻撃を打たせれば絶対強いんでぶっちゃけバカでも作れます
デモンズソウルはそれに対して、強くて面白いボス難しいから、ボスもステージの一部としてパズルに寄せて、謎を解いたらプレイヤーの勝ちにしようって仕組み

このやり方は強さと面白さを両立させる最善手の1つだけど、問題は、1回分かっちゃうと簡単に攻略されるから、動画で簡単にボコられる
その後のダークソウル1のボスは、分かってれば勝てる系と、分かってても辛い系の混在になって、最終ボスは分かってても辛い系というダークソウルの基盤ができあがった

ただダークソウル2はブラボとの同時開発だったのでボスは簡単に作れるタイプばかりになってしまった感じ
ブラッドボーンはボスとの戦いを面白くするにはどうすれば良いのか? という所で様々な工夫が見られる。敵を殴るとダメージが返ってくるとか、銃によるパリィとか、武器が変形して色々な相手に対応できるとか、新たなシステムが次々採用された
採用された結果どうだったのかと言うと、特に意味は無かった。敵を殴ってライフ回復はリスクにリターンが見合ってなかったし、銃パリィは盾と変わらないし、武器の変形はボス戦ではイマイチ意味がなかった

武器の変形が無意味な理由は簡単で、ボスは怯まないので重い攻撃を打つ理由がないからだ
ダクソ2とブラボの対比から「ソウル系のシステムは道中を面白くしたり謎解き系ボスをやらせるのには向いていても、ガチ系のボス戦を面白くするのに根本的に向いていない」という事が薄々明らかになってきていた
向いてないシステムで面白いボス戦を作るには優れたスタッフの手作業で無理やり面白くするしかない。ブラボはスタッフの力でゴリ押ししたが、ダクソ2はスタッフが足りず失敗した

ここからダークソウル3に向けて開発スタッフの試行錯誤が始まる
ダークソウル3では新たなシステムが追加される事は無かった。ダークソウルシリーズの基盤は変えずに、人力だけでボス戦を何処まで面白くできるのか、ありったけの試行錯誤が行われている

ソウル3は謎解き系ボスも居るが、基本的に全てのボスがガチ寄りで、一体一体工夫が凝らされている
飛び道具だから楽になるとか、そういった事はなく、プレイヤーの全ての攻撃手段に対して、ある程度適切な反応ができるように設計されていて、一部の特殊なハメ技を除けば、どの職業で行っても激闘になるようデザインされている。恐らくアホみたいなコストが掛かったのではないかと思う
ボスにコストを裂きすぎた影響か、ダークソウル3の道中は2ほどゴミではないが、他のシリーズに比べて質が低く、プレイヤーに何かを語るような興味深い作りのステージというのは少ない、単なる通過点、単なる障害物のような場所が殆どで味が薄い
Sekiro では大きな変化が試された。ステータス配分などの従来のシステムは停止され、戦いのシステムを根本から見直して、ザコ敵からボスまで一貫したシステムで戦えるようにゲームは再設計された

革新的だったが、一方でダークソウルシリーズが持っていたかなり重要な長所も失ってしまった
それは「操作およびゲーム理解の単純さ」である。これを失うとどうなるか? 続編が作りにくくなるのである

これがSekiroの新システムで最高にエキサイティングなボス戦を手に入れた代償だ
複雑なゲームシステムは続編が作りにくい。なぜなら「プレイヤーが操作に熟達してしまう」からな

ダークソウル3をクリアしたからと行って、ダークソウル1が楽楽クリアできるかと言うとそうではない、なぜなら単純な操作を補う形で、様々な初見殺しやパズル要素があるからだ
だが Sekiro の操作に熟達したプレイヤーは、Sekiro2を楽にクリアしてしまうだろう

複雑な操作やシステム理解を求めるゲームは、それに頼って設計されるから、一度それに熟達すると他のゲームに乗り換えやすい「FPS上手い奴はゲームを乗り換えやすい理論」だな
FPSはそれでもいい、人間対人間だから、熟達したプレイヤーの実力に合った敵はいくらでも用意できる

だがアクションゲームのボス戦は対AI戦だ、複雑なシステムに熟達したプレイヤーを想定して作ったら新規は絶対に勝てないし、逆もしかりである
こういう問題が起こるのは、そもそも「自分より頑丈で力の強い相手と戦う」という基本的に面白くない活動を、クリエイターの知恵と工夫と執念で無理やり面白くしているからだ

当たり前だが人間が快感を感じるのは、自分より弱い敵と戦うときだ。強い敵と戦って面白いわけないだろ
だから、弱い敵と戦うシーンは誰が作ってもある程度は面白くなる。

質の低いゲームをプレイするとき「まあ遊べなくは無いけど、このクオリティで難しくなってきたら嫌だなぁ」みたいな気持ちになった事あるだろ? 低品質でも簡単なら暇つぶしでプレイする事はある
自分より強い敵と戦って面白さを感じるのは、異常な現象なんだ。人間ってのは強力な敵に対して、恐怖や焦燥、多大な精神的ストレスを感じる事はあっても、面白がりはしない、普通はな

天才的なクリエイターが、人間の本能的な忌避感や嫌悪感を超える何かを提供することで初めて娯楽になる
ソウルシリーズ(+ブラボや隻狼)のボス戦では、その何かを探して様々な事が試みられてきた。人間はいかなる場合なら自分より強い敵に立ち向かうことに快感を覚えるのかという、人間の精神構造や本能に対する探求でもあった

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8 Oct
俺の若い頃の趣味の1つがMMORPGでネカマやる事だったんだけど、ある時、いろんな人格を同じゲームで演じて、同じ人間がそれぞれどう対応するか見てみようというかなり悪趣味な事を試した事がある
一番他人から優しくされたのは「地位が高い男」で、一番他人から攻撃されたのは「性的魅力の無い女」というのはもう当たり前なのでどうでも良いとして

意外なことに、我儘で強欲な人間は人間関係に全然苦労しないという事にかなり驚いた記憶がある
我儘で強欲な人間のイメージとしては、物を恵んで貰える事はあっても、継続的な人間関係は築けないだろうというのがあった

ところがどっこい、他のアカウントと比較しても多めのフレンドが居たし何かと呼ばれる状態だった
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8 Oct
オタク向け作品と一般向けの作品の差ってのは、どれだけクリエイターが力技で通したかで決まる

オタクはクリエイターに力があれば非現実的だろうが矛盾があろうが全部目を瞑る。逆に一般人は技術なんか興味ないから「こんなんおかしくね?」って部分を嫌がって見なくなる
オタクは現実的にはありえない人間関係やコミュニケーションがあっても何も感じないし技術的に優れていたら惹かれて買う、一般人はその逆、その差が大きいほど「オタク向け作品」というわけだ
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気持ち悪さというのは、乗り物酔いもそうだが「座っているのに体が動いている」という認知と現実のギャップに三半規管がやられて酔うわけだ
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8 Oct
アニメの博士役は何で男なのか? っつーと簡単で、女性は巨大企業の下で安定した生活を贈りたがるから、基本的に悪役側か助手でしか出せない

娯楽は基本的に主人公側がリスクテイクとしないと盛り上がらんから、女は非現実的になって共感を得られないか、現実的な女出してエンタメとして失敗するかだ
この問題を解消する方法としてハーレム型の物語構造が使用されるわけだ、ハーレムの主である男に全責任を被せつつ、女に超人的な働きをさせることで、まあ共感を失わない程度に現実的なフィクションキャラを制作できる
キャラクター製作時の問題として「能力は大きな嘘を吐いても良いが、価値観や性格の嘘は小さくしなければ観客の共感を失う」という縛りがある

細腕の女がデカい剣を振り回して大男を力で負かしても許されるが、女科学者が社会に認められない形で主人公に技術を提供するような非現実的な性格は使えない
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7 Oct
ブラッドボーンのボス戦の反省がどうSekiroに生かされているという話

まずブラッドボーンは様々な新システムが実装された。武器の変形に銃にリゲイン、こういったシステムは戦闘を革新しなかった。何故なら使う必要が無かったからだ
この「必要ない」というのは「いらない」とか「無意味」という話ではない。あくまで言葉の通り必要ではないというだけの話

相手の攻撃パターンを覚えて、適切なタイミングで回避して殴れば、全てを使いこなした時より苦労するものの、とりあえず通常クリアはできるという意味での「必要ない」だ
せっかく色々なシステムを入れても、プレイヤーが使わなければ意味がない。ゲームシステムへの理解度が高い一部のプレイヤーを除けば、これらのシステムはあまり使用されなかった

なぜそうなるのかと言うと、ステータス配分やキャラビルドシステムがあるからだ。
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6 Oct
Epic で配っていた仁王プレイ、PC向けキーコンフィグにかなりの苦心の跡があって好感触。この手のゲームでは珍しくほぼデフォルト採用

ステージはかなり作り込まれている。ただ分岐があるだけでなく分岐の辿り方によって難易度に変化がある所が好感触
問題点があるとすれば、ボス戦の「パズル化」である

アクションゲームというのはお互いのアクションに対して相手のリアクションがあって成立する「相手の動きに対して正解の行動を取る」というのはゲームではなく時間制限付きのパズルだ。パズルはゲームではない
通常ステージにはプレイヤーを面白がらせようと様々な仕掛けが施されており。死体からアイテムを回収したとき死ぬ直前の音声が再生されるが、これが非常に凝っていて面白い

梯子の上の死体が「すまねえ、これも生き残る為だ…」んで下の死体が「あいつ梯子を上げやがった…!」とか言う
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6 Oct
「失敗を恐れるな」ってのは正しい意見なんだけど、一方で失敗を恐れず鳴ってる踏切に突入するのは、得られる物(数十秒とスリル)に対して失う物(命)が大きすぎて割りに合わないので、これは失敗を恐れて踏みとどまったほうが良い
これに対して「やっぱり失敗は恐れたほうが良いのか」ってのも少し違う話で

世の中には、正しい意見がたくさんあるんですよ

失敗を恐れてはいけないという意見は正しいし、失敗を恐れた方がいいという意見も正しい
じゃあどうすれば良いのかと言うと「自分の中に正しい意見をいくつも保管しておいて、状況に応じて最適そうなものを出していく」んです

例えば、向ワクチン派の意見も、反ワクチン派の意見も、一部のバカやカルトを除けばどちらも「正しい事を言っている」わけです
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