ブラッドボーンのボス戦の反省がどうSekiroに生かされているという話

まずブラッドボーンは様々な新システムが実装された。武器の変形に銃にリゲイン、こういったシステムは戦闘を革新しなかった。何故なら使う必要が無かったからだ
この「必要ない」というのは「いらない」とか「無意味」という話ではない。あくまで言葉の通り必要ではないというだけの話

相手の攻撃パターンを覚えて、適切なタイミングで回避して殴れば、全てを使いこなした時より苦労するものの、とりあえず通常クリアはできるという意味での「必要ない」だ
せっかく色々なシステムを入れても、プレイヤーが使わなければ意味がない。ゲームシステムへの理解度が高い一部のプレイヤーを除けば、これらのシステムはあまり使用されなかった

なぜそうなるのかと言うと、ステータス配分やキャラビルドシステムがあるからだ。
キャラビルドシステムがある場合、ゲームはプレイヤーが遊びたいキャラで攻略できるように、ある程度、普遍的な作りをする必要がある

戦士系なら専用技のジャンプ強打連打で超簡単に倒せるけど、魔法系はクリア不能、みたいなボスが現れては困るのだ
それはつまり「戦士系固有の技や、魔法使い系固有の技を要求する、特別なプレイ体験は実現できない」ということ

ひいてはどのボスも「殴って避けるが出来たら倒せる」あたりになり、そのためプレイヤーは特殊な操作に習熟する必要がなく、故にどんなシステムを入れても戦闘は革新しない
ステータス配分システムを導入したが故に、ボスの作りに制限がかかり、そのせいで導入した新システムを使用しなくても勝てるゲームになったため、下手~普通くらいのプレイヤーのゲーム体験に大きな変化が起こらなかったというのが、このゲームの課題だった
それに対する回答として Sekiro はステータス配分システムやキャラビルド周りを大幅に削減、主人公はプレイヤーの分身ではなく、一人のキャラクターに変更された

これによって技量やゲーム理解度に関係なく、全てのプレイヤーの戦闘に、特別な動作を加え革新を起こすことに成功している
ザコやボスは多様なプレイヤーキャラに対応するのではなく、唯一の主人公である狼で対面したとき最も面白くなるように調整されている

様々な武器や魔法使いビルドなど幅広く対応するためのコストを全て狼のためだけに集中した敵とのやり取りは非常に優れたものに仕上がっている
しかし、この Sekiro のシステムには一つの問題があって、このゲームの弾きシステムは習熟するとプレイヤーが強くなりすぎるという問題がある

そしてそれを超えて強い敵を出そうとすれば、弾けない攻撃を沢山出すことになるが「強敵相手に使えなくなるなら何の為に練習したのか」という事になるわな
弾けない攻撃を出さないという縛りで、かつ強い敵を出そうと思ったら、今度は「AIに適切な状況判断をさせフェイントなども織り交ぜて戦わせる」という事になるが、3D空間の戦闘でそれが出来る強いAIを組もうとするとコストが指数関数的に上昇してしまう
そのため Sekiro のシステムで「プレイヤーの習熟を裏切らない」「常識的な制作コスト」という範囲で強いボスを作ろうと思ったら、プレイヤーに対して複数の択を迫って、それに対してプレイヤーが適切に対応を取れたらご褒美としてダメージ、という音ゲー型になってしまう
音ゲー型になると習熟するプレイヤーはどこまでも習熟しメチャクチャ上手くなる一方で、そうでないプレイヤーはそこそこ触ったら止めてしまう。音符に合わせてボタンを押すのが好きか嫌いかという話になるからな
主人公を一人にして特定のシステムの使用をプレイヤーに要求しつつボスを専用仕様にする方法は、革新的な体験をプレイヤーにもたらす一方で、同時に「革新的な戦闘システム以外の全てのプレイスタイルの否定」も起こる

このトレードオフこそがゲーム開発最大の難題
そして彼らは、この難題に真っ向から立ち向かい続け、それぞれの作品で異なる回答を出している

プレイトレイラーを見る限り、次回作のエルデンリングでは、更に別の回答も見つけたようだ
個人的に、次回作では「アルティメット技」のような物を使用したターン制バトルへの回帰が行われると予想している

「個々の攻撃を避けて殴る」という小さな攻防より、ひとまわり大きいサイズの「敵の猛攻状態を凌ぐ・こちらのアルティメット技を溜めて大打撃を与える」という大枠が追加され
それをもって擬似的にターン制バトルを再現し、戦闘の普遍性を保ちつつ、戦いに大きな流れをつけてプレイヤーの感情を揺さぶる。という手法が取られるのではないかと思う
ソウル系に比べて Sekiro は戦闘単位を極小化したため音ゲーに寄ってしまった

「避けて殴る→離れる→避けて殴る」という戦闘から「弾いて弾いて突きを受けて弾いて崩す→離れる→」という細かい単位にすると、どうしてもアクションより音ゲーに寄るのは避けられない
当然この問題には気づいているだろうから、これに対処する手法として、1段階大きな単位を作り「アルティメットを貯める→溜まりそう→溜まっているから」のような大きな判断基準を戦闘に組み込むのではないだろうか、というのが予想の根拠だ

まあ当たるも八卦という事で

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アニメの博士役は何で男なのか? っつーと簡単で、女性は巨大企業の下で安定した生活を贈りたがるから、基本的に悪役側か助手でしか出せない

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6 Oct
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ボスって強くするのは簡単なんだけど、面白くするのはクソ難しいんですよ、強くするだけならHIT時の怯み無くして、HP増やして、プレイヤーより強い攻撃を打たせれば絶対強いんでぶっちゃけバカでも作れます
デモンズソウルはそれに対して、強くて面白いボス難しいから、ボスもステージの一部としてパズルに寄せて、謎を解いたらプレイヤーの勝ちにしようって仕組み

このやり方は強さと面白さを両立させる最善手の1つだけど、問題は、1回分かっちゃうと簡単に攻略されるから、動画で簡単にボコられる
その後のダークソウル1のボスは、分かってれば勝てる系と、分かってても辛い系の混在になって、最終ボスは分かってても辛い系というダークソウルの基盤ができあがった

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問題点があるとすれば、ボス戦の「パズル化」である

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これに対して「やっぱり失敗は恐れたほうが良いのか」ってのも少し違う話で

世の中には、正しい意見がたくさんあるんですよ

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