●デルタ株由来の変異株AY.4.2がイギリスで増加中
→デルタ株からの枝分かれで、spike領域にY145HとA222Y変異を持つもののようです。
イギリスでの流行株の7-8%まで増えてきており、増殖力がデルタ株より10%ほど高い可能性があるというコメントもあるようですが、本当に増殖力の差なのかは個人的には疑問です。
米国においては一度デルタ株に駆逐されている点。そしてワクチンが進んだ現時点のイギリスでは、デルタ株を押しのけて増加している点からは免疫逃避変異株である可能性を個人的には疑います。
新規感染者数が増加傾向のイギリスの現状では、AY.2がさらに免疫逃避変異を獲得する素地も整っています。
Delta Plus Sub-Variant, Possibly More Contagious Than Delta, Found in These Countries
newsweek.com/delta-plus-sub…
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・デルタ株からの変異株であるAY4.2サブ変異株(sub-variant)が、イギリスで最近増加している事から注目を集めている。現時点でGISAODすでに世界29か国で見つかっている。
Outbreak.InfoがGISAIDデータベースを用いて作成したデータによると、この変異株はほぼすべてがイギリスに限局しているが、複数の症例が米国、カナダ、オーストラリア、西ヨーロッパの一部で報告されている。
10月18日以降に世界でシークエンスされ同定された15,459件のAY.4.2のうち、14,705件がイギリスからのものであった。次にルーマニア、ポーランド、アイルランド、バングラディッシュと続いている。オーストラリアや日本は1件のみ、米国では7件、カナダでは6件が報告されているのみだ。
Outbreak.Infoは、イギリスでAY.4.2感染例が急増しており、すでに新規感染例の7-8%を占めている事を示した。
・Wellcome Sanger Instituteが作成したグラフは、まず4月中旬頃からデルタ株が増加し、その後にデルタ株が変異したDelta AY.4.2の症例が増加し始めている事を示している。 Image
・AY4.2はDelta AY.4変異株からさらに枝分かれしたものであり、それ自体はデルタ株を起源としている。spike遺伝子にY145HとA222Yの2つの変異を有しているのが特徴である。
・2017年から2019年まで米国FDA長官だったScott Gottlieb氏は、週末にかけての一連のツイートでイギリスで急増中の本変異株について言及し、感染性増強や免疫逃避能を獲得していないかについて緊急な検討(urgent research)が必要であると述べている。
彼はAY.4.2を"Delta plus"(デルタプラス)と呼んでいるが、この用語はもともとK417N変異を持つデルタ株に対して用いられたものである。AY.4.2に対してもこの用語を用いて良いのか(interchangeable)は不明である。多くの研究者は単純にAY.4.2と呼んでいる。
・10月15日に、英国保健安全局は、AY.4.2が「イギリスにおいて拡大」しており、現在この変異株について評価を行っている、とする報告書を発表した。
・本変異株については、現時点でイギリス、WHO、米国CDCのいずれもVOCとしてはリストアップしていない。
・University College LondonのFrancois Balloux氏は週末に発信したツイートの中で、AY.4.2がデルタ株(parent variant)よりも約10%ほど感染力が強い可能性があると推定した。
・University College LondonのChristina Pagel教授は、以前にNewsweek誌に次のように語っている。「AY.4.2が悲惨な結果をもたらすだろうとは私は考えていません。10%程度の優位性は、デルタ株がアルファ株に対して持っていたようなほどの違いはありません。
・・・しかし、次に出てくる変異株は注意が必要だと思っています!」
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→米国でのAY.4.2の動態は以下です。
一時期出現したAY.4.2がデルタ株に駆逐されたような動態を取っています。
米国とイギリスでの動態の違いは、時期の違いを考えると、増殖力の違いよりも免疫学的選択圧が原因と考えるのが自然なような気がします。
ワクチン接種+既感染によりイギリスの免疫保有率は、現時点で80-90%程度はあるかもしれません。
その状況下で優勢株になるのに必要な条件は、増殖力の差よりも免疫逃避能の果たす役割のほうが大きいかと。
まずはAY.4.2のワクチン免疫逃避能についての検討が必要だと思います。
いずれにせよ、高いワクチン接種率を背景に1日5万人の感染を許容しているイギリスの現状は、理論的にワクチン免疫逃避変異株を選択するリスクが非常に高いはずです。
集団免疫獲得で最終的に感染制圧するか、あるいはワクチン免疫逃避株出現でこれまでの成果が振り出しに戻ってしまうのか、時間と運の勝負になってきました。
covid.cdc.gov/covid-data-tra… Image

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21 Oct
●世界の状況
イギリスの重症者数再増加も明らかになってきました。
10/13の747人から8日間増加持続で850人へ。
8日間で103人(13.8%)増加。
→ICU/人工呼吸器重症者
米国は14518人で1日で278人減
イタリア355人で更新なし
フランス1049人で更新なし
イギリス850人で1日で27人増
イタリア103日減→47日増→34日減
フランス83日減→29日増→52日減
イギリス28日増→25日減→8日増
worldometers.info/coronavirus/ Image
→イギリス:8日連続感染者4万人超も新たな対策はなし
マスク着用やソーシャルディスタンス再開に、ここまで熟慮が必要な理由が私には良く分かりません。
ロックダウン的なものを検討する前に、すぐに試みて良い対策だと思うのですが・・・
Read 5 tweets
21 Oct
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→東京都の推移
東京都の7日間移動平均は43.6人。
昨年6月26日の41.6人以来の低値。
東京都 新型コロナ 新たに36人感染確認
www3.nhk.or.jp/news/html/2021…
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36人が新型コロナウイルスに感染していることを確認
都の基準で集計した21日時点の重症の患者は、20日より3人減って24人
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1) 感染者報告数
7日間移動平均の推移
→586→602→632→664→687→720→734(緊宣)
→757→791→823→882→946→1012→1068
→1100→1180→1278→1373→1386→1346→1454
→1554→1763→1955→2224→2501→2920→3105
→3214→3337→3479→3647→3820→3893→4037
→4135→3979→3984→3976→4156→4231→4264
→4275→4527→4697→4774→4722→4719→4733
→4659→4637→4471→4353→4185→3971→3784
→3708→3521→3369→3140→2899→2725→2549
→2414→2231→2041→1837→1652→1496→1384
→1333→1244→1132→1011→946→887→815
Read 14 tweets
21 Oct
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→1本鎖RNAウイルスであるコロナウイルスでも、異なる株の重複感染例で組み換えが起こる事は知られています。
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今回見つかったのは部位的には感染性、免疫逃避に影響を与える箇所ではないとしています。
アルファ株とデルタ株の組換え体とみられるSARS-CoV-2ウイルスの検出について
niid.go.jp/niid/ja/2019-n…
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・国立感染症研究所は、SARS-CoV-2ウイルスのアルファ株とデルタ株の組換え体とみられるSARS-CoV-2ウイルスを国内で6検体検出した。
Read 8 tweets
21 Oct
(続き)

普通に呼吸しているだけでエアロゾルが発生する事が分かっています。
その意味で、「エアロゾル発生手技(aerosol‐generating procedure)を行う際には・・・」的な感染対策の使い分けもほぼ意味をなしていません。
まだ日本のガイドライン的なものにはそのような記載を見つけるのですが・・・
→空気感染については、最近、Scienceに以下のreviewが出ています。
空気感染をリアルワールドに適用できる納得可能な形で再定義したものになっています。
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Read 4 tweets
21 Oct
●HEPAフィルター空気清浄機は空気中のSARS-CoV-2を効率良く除去する
→natureの未査読論文に関する記事です。
COVID-19病棟に空気清浄機を設置する事で、空気中からウイルスが除去されているのを確認。
PPE着用でもマスクの漏れ等で起こり得る、院内感染を防ぐ手段として有用であると結論しています。
ウイルスのみでなく、病原性細菌が病棟の空気中を浮遊しているという興味深い知見も得られたようです。
個人的には一般外来での空気清浄機の使用も検討して良いのではないかと考えました。
COVID-19病棟ではfull PPEを着用し、病棟の換気も確保されています。
ところが外来では室内の障害物の多さ、診療上の会話量も含め、病棟よりも換気に関しては条件が悪い可能性が高いです。
Read 25 tweets
20 Oct
●世界の状況
感染者数急増局面のイギリス。
ICU/人工呼吸器重症者数も増加傾向に転じた?
10/13の747人から7日間増加傾向持続で823人へ。
→ICU/人工呼吸器重症者
米国は14796人で1日で96人減
イタリア355人で1日で3人減
フランス1049人で12日で151人減
イギリス823人で1日で32人増
イタリア103日減→47日増→33日減
フランス83日減→29日増→51日減
イギリス28日増→25日減→7日増
worldometers.info/coronavirus/
→ハワイ:11/1よりワクチン接種完了を条件に旅行可能
そもそも国外からの米国渡航者については、11/8以降からはワクチン接種完了が条件になる事が決定済み。
ハワイについては、アメリカ国内からの渡航についてもワクチン接種完了が条件となります。
www3.nhk.or.jp/news/html/2021…
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