「暖かい季節になったら新型コロナウイルスは勝手にいなくなるというのは間違い」
というお話。
わかりやすさを重視して意訳しました。
Will COVID-19 go away on its own in warmer weather? ccdd.hsph.harvard.edu/will-covid-19-…
端的にいうと、「北半球で気温と湿度があがり、学校が休みの時期に入ると少しマシになることが期待されるが、それだけで急速に収束するとは考えにくい」です。
→間違いです。
SARSの流行を収束させたのは公衆衛生学的な介入の賜物。
特に感染者の隔離に成功したことが大きいです。
ただ、SARSは重症度が高く、感染力の強い人を隔離しやすかったという側面もありました。
今回も同じように行くかはわかりません。
→そうとは言えません。
新しいウイルスが必ずしも既知のウイルスと同じ特徴を持っているとは限りません。
これを理解するためには、「ウイルスに季節性があるの4つの理由」を学ぶ必要があります。
冬場は外気が寒く、乾燥しがちです。
特にインフルエンザは湿度に弱いことはかなりよく知られています。
しかし、コロナウイルスでの研究は私(教授)が知る限りありません。
赤道近くのシンガポールでも感染が見られることから、「暖かくて湿度が高ければ大丈夫」とは言えなさそうです。
学校がいい例ですが、冬場は屋内で固まって過ごしがちです。
2009年のH1N1型のパンデミックでは、夏休みに感染が激減し、9月に再燃しました。
しかし、新型コロナウイルスは子供の感染例が少ないです。
子供には感染しにくいのか、感染しても軽いだけなのかが鍵になります。
冬場にヒトの免疫力が落ちる可能性があり、メラトニンやビタミンDの影響などが指摘されています。
ビタミンDの補充が呼吸器感染を減らすという研究がありますが、インフルエンザの季節性に与える影響は低いとも考えられています。
この分野はもっと研究が必要です。
感染症の流行には宿主側の感受性(うつりやすさ)が大きな影響を与えます。
感受性が高い人が多ければ拡がりやすく、少なければ収束します。
この感受性が季節によって変化する可能性が考えられます。
ただし、必ずしも夏に収束しやすいとは言えません。
新しいウイルスは免疫を持っている人が少ないため、感染の拡大において非常に有利な立場にあります。
古くからいる、「特定の条件(季節など)」が発動しないと拡がりにくいウイルスとの比較は困難です。
H1N1型のインフルエンザも季節外れの4-5月に流行が起こりました。
新型コロナウイルスが他のコロナウイルスと同様に冬に拡がりやすいという可能性はありますが、おそらく「夏まで待てば大丈夫」とはならないでしょう。
学級閉鎖は有効な手段になり得ますが、無駄打ちに終わる可能性もあります。
子供が重要な感染源なのかどうかを調べることが先決です。