動画『汚い手を使って選挙に勝つ方法: 郵便投票』を訳してみた。米国では投票をすべて郵送で行おうとする動きがある。これはよいアイデアなのか? エリック・エガーズが説明します。(米国では不在者投票/事前投票の一環として、郵便投票が既に一部で実施されています)
Image
総郵便投票制に問題はあるだろうか?

単純な話に見える。投票用紙に記入して、郵便ポストに投函する。投票日に誰かが票を数える。既に不在者投票ではそうやっているではないか? 総郵便投票制と何が違うのか?

一番の違いは、不在者投票では有権者が自ら投票用紙を請求するという点だ。 Image
総郵便投票制では、投票用紙は自動的に大量に発送される。普段は投票所に出向いていた何百万もの人々が、郵便で投票するようになる。

この方法で実施された国政選挙はこれまでない。そして、総郵便投票制が不安視される当然の理由がいくつかある。 Image
理由その1: 役所の能力不足。

役所が新しい大きなプロジェクトに準備不足のまま取り掛かるとき、良い結果が生まれないということは、私が説明するまでもないだろう。郵便投票に関連する混乱は既に発生している。 Image
ウィスコンシンは、コロナウイルス時代に入って最初に予備選挙を行った州の1つだ。その結果、郵便投票の数が増大した(注: 投票所の人ごみを避けるため)。予想どおり、深刻な混乱が起きた。何千もの投票用紙が発送されなかった。選挙の翌日、1,600枚の投票用紙が郵便処理センターで見つかった。 Image
署名がなかったり、その他の情報が記入されていなかったりしたため、23,000票が無効になった。

これらは、1つの州で行われた1回の予備選挙で判明したエラーである。一般的に、予備選挙の投票率は本選挙よりも低い。 Image
ペンシルベニアでは、郵便投票の増加が予想されたため、準備のために予備選挙の投票日を遅らせたが、それでもその量に対応できなかった。選挙から一週間たっても、フィラデルフィアの票の半分は開票されないままだった。 Image
バージニアでは、不正確な情報が記載された投票申込用紙が50万通以上発送された。申込用紙は間違った住所や物故者に届いた。1通はペット宛てに送られた。

最適な状況であっても、役所は郵便投票の処理に苦労している。最適な状況でなくなればどうなるのか? 実際に起こってほしくないシナリオである。 Image
これが、不安視される理由その2につながる。穴だらけのセキュリティである。

NYタイムズ紙が2012年の記事で郵便投票についてどう書いたか見てみよう。留意してほしいのは、これは、総郵便投票ではなく、従来の不在者投票について書かれた記事だということである。 Image
「郵便投票は、その影響がどうであれ、他の方法に比べて不正が簡単だという点については、党派を超えた意見の一致がある」

笑いごとではない。 Image
2020年5月、史上初の総郵便投票選挙がニュージャージーで行われた。1か月後、郵便投票に関する犯罪行為で4人が起訴されたが、そのうち2人は選挙で選ばれた公職者だった。ある工作員は、記入済みの投票用紙や未記入の投票用紙を郵便箱から盗んだと告白した。 Image
別の工作員は、有権者の署名のデータベースを作り、応援する候補者に投票するためにそれを使った。こうした詳細を私たちが知ることができたのは、彼らが捕まったからである。 Image
選挙の不正は、ペテン師たちが新しい武器を手に入れたため、より簡単になっている。票の収穫(ハーベスティング)である。これは、第三者、通常は運動員や活動家が有権者の自宅を訪れ、票を回収する行為を指す。

票の収穫では、有権者は投函する必要すらない。票の収穫者が回収しにきてくれるのである。 Image
特定の候補に投票するように有権者にプレッシャーをかけたり、票を破棄したり、投票する意図のない人にかわって投票用紙に記入したりなど、不正の機会は果てしない。

高齢者をターゲットにした票の収穫には名前も付いている。「グラニー・ファーミング」(おばあちゃん栽培)である。 Image
不安視の理由その3。
最終結果が出るのが大きく遅れる可能性がある。

アメリカ人は、投票締め切りの後、数時間以内に勝敗がわかることに慣れている。もちろん、接戦の場合は結果が出るまでにもっと時間がかかることもある。しかし、長くかかればかかるほど、選挙の正当性が失われていくように見える。 Image
これは、2000年の大統領選挙、ブッシュとゴアの戦いで起きた。問題となったのは、フロリダという1つの州だった。最高裁判所が判決を下して結果が確定するまで1か月以上かかった。 Image
郵便投票に大きく依存する国政選挙が行われれば、最終結果が出るのが大幅に遅れることはほぼ間違いない。郵便局から開票担当者まで、システムはそれ用に設計されていないのだ。 Image
大量の郵便投票が行われた接戦の選挙において、結果に関する訴訟が起きるのは避けようがない。これにより、最終結果が出るのはさらに遅くなる。そして、複数の州で訴訟が起こる可能性も高い。これは社会不安の原因となる。有権者が不正選挙についてフラストレーションを溜め、懸念を抱くからだ。 Image
役所の能力不足。穴だらけのセキュリティ。長い遅延。

これらは、まっとうな人が総郵便投票制について抱くべき懸念の一部にすぎない。 Image
解決策は何か?

簡単である。不在者投票をする必要があれば、投票用紙を請求しよう。そうでなければ、これまでと同じように投票所に出向いて投票しよう。

政府説明責任研究所の調査報道記者のエリック・エガーズでした。(了)

英文スクリプト: prageru.com/video/how-to-s… Image
追記: 動画内に出てくる「票の収穫(ハーベスティング)」の詳細については、こちらもご参照ください。↓

togetter.com/li/1480942

• • •

Missing some Tweet in this thread? You can try to force a refresh
 

Keep Current with tarafuku10

tarafuku10 Profile picture

Stay in touch and get notified when new unrolls are available from this author!

Read all threads

This Thread may be Removed Anytime!

PDF

Twitter may remove this content at anytime! Save it as PDF for later use!

Try unrolling a thread yourself!

how to unroll video
  1. Follow @ThreadReaderApp to mention us!

  2. From a Twitter thread mention us with a keyword "unroll"
@threadreaderapp unroll

Practice here first or read more on our help page!

More from @tarafuku10

21 Oct
ケミ・ベイデノック(Kemi Badenoch)平等問題担当副大臣(イギリス保守党)の国会演説。

BLMや批判的人種理論は政治的なものであり、学校で教えるべきものではない。

「白人の特権」を事実として教えることは、法に反している。

(翻訳は以下スレッドで↓)
私たちが反対しているのは、議論の分かれる政治理念を、あたかも明白な事実のように教えること。(中略)。

人種間の関係に関する危険なトレンドについて話したい。これは私自身にも深く関連することだ。そのトレンドとは、批判的人種理論の推進である。
これは、黒さゆえに私を被害者とみなし、白さゆえに白人を抑圧者とみなすイデオロギーである。はっきりといっておかなければならないことは、政府は批判的人種理論に明白に反対する立場であるということだ。一部の学校は、反資本主義のBLMグループを公然と支援することを決定した。
Read 7 tweets
21 Oct
動画『赤い州と青い州: どちらに住みたいか?』を訳してみた。共和党が強い州と民主党が強い州。どちらの方が住みやすい州でしょうか? 税金、治安、雇用、健康などの面から、エコノミストのスティーヴン・ムーアが考察します。(赤は共和党の、青は民主党のシンボルカラーです)
Image
私たちはユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ、すなわちアメリカの名のもと、数々の州が1つにまとまった国のはずだった。しかし、いろんな意味で、私たちはとても異なる2つの国民に分かれてしまった。

アメリカには赤い州がある。

そして、アメリカには青い州がある。 Image
赤い州は、政策として保守主義、小さい政府、自由市場を志向する。低い税率、規制緩和、厳格な犯罪取り締まり、労働者の自由などが特徴だ。フロリダ、テキサス、テネシー、アリゾナ、ユタなどがそうである。 Image
Read 23 tweets
21 Sep
動画『アメリカの黒人が直面する問題: トップ5 』を訳してみた。ブラック・アメリカが直面する問題の上位5つについて、作家のタリーブ・スタークスが解説します。レイシズムや警察の暴力はリストに入っているでしょうか?
アメリカの黒人が直面している重大な問題は何だろうか。私が考えるトップ5を以下に説明したい。

問題 #5: 被害者意識

自分を被害者と見なすこと以上に、その人の成長を妨げるものはない。なぜか? 被害者は、自分が置かれた状況に責任を持たないからだ。すべては、誰か別の人のせいである。
被害者は、自分の生活が改善されるチャンスはほとんどないと思っている。誰かに邪魔されているのに、どうして前に進むことができるのか? これらすべてが被害者を不幸せさと不満と怒りでいっぱいにする。
Read 21 tweets
10 Aug
掛谷先生 (@hkakeya) が訳された『風力および太陽光エネルギーに頼ることは可能か?』を書き起こしてみた。風力や太陽光などの自然エネルギーは、気候問題の解決策となるだろうか? それとも、私たちは天然ガス、原子力、石炭などに頼る必要があるだろうか?
風力や太陽光はエネルギー問題の解決策になるか。たしかに太陽と風はたくさんある。ただでクリーンだ。二酸化炭素も出さない。では何が問題なのか。なぜ風力と太陽光を合わせても世界の2%のエネルギーしか提供できないのか。
この問いに答えるには、エネルギーを安く大量に生み出す仕組みを理解せねばならない。何かを安く大量に作り出すには、それを作り出す全ての工程が、材料費を含めて安く大量に得られねばならない。たしかに太陽も風もただである。
Read 15 tweets
27 Jul
掛谷先生(@hkakeya)が訳された動画『あなたは歴史の道から外れているか』を書き起こしてみた。2015年8月公開のオバマ批判動画。話者は、著書『リベラル・ファシズム』がベストセラーとなったコラムニストのジョナ・ゴールドバーグです。

「(人類進歩の)歴史の道に外れている」これはバラク・オバマ大統領が好んで使う表現の一つだ。もちろん、彼だけではない。リベラルの政治家や活動家も長年好んで使ってきた。同性婚に反対なら、歴史の道に外れている。大麻の合法化に反対なら、時代遅れになる。
この言葉は外交政策でも多く使用される。例えば、最初の大統領就任演説でオバマ大統領はこう言った。「腐敗、欺瞞、反対意見を黙らせることで権力を維持する人は歴史の道に外れていると自覚すべきだ。」

2011年、エジプトのホスニ・ムバラク政権が崩壊したとき、米国は傍観しただけだった。
Read 18 tweets
6 Jul
動画『ファーガソンの嘘』を訳してみた。ほとんどの人が、2014年8月9日にミズーリ州ファーガソンで何が起きたか知っていると思っている。そして、ほとんどの人は間違っている。白人警官によるマイケル・ブラウン射殺事件について、ラリー・エルダーが事実に基づき解説します。
今世紀の最も重要な事件の1つが、2014年8月9日の昼過ぎに起きた。ミズーリ州セントルイス近郊のファーガソンでの出来事だった。

この事件のことは誰もが覚えている。「ファーガソン」の名を口にすれば、何の話をしているのかわからない人はいない。そう、警察の蛮行と人種的な不正義だ。
2014年9月、バラク・オバマ大統領は、国連でのスピーチでこの事件に触れた。「ミズーリ州のファーガソンという小さな町に世界が注目していることを私は知っている。若い男性が殺され、コミュニティは分断された。そう、私たちの国には、人種間の緊張、そして民族間の緊張がある」
Read 21 tweets

Did Thread Reader help you today?

Support us! We are indie developers!


This site is made by just two indie developers on a laptop doing marketing, support and development! Read more about the story.

Become a Premium Member ($3/month or $30/year) and get exclusive features!

Become Premium

Too expensive? Make a small donation by buying us coffee ($5) or help with server cost ($10)

Donate via Paypal Become our Patreon

Thank you for your support!

Follow Us on Twitter!