動画『それはスカンジナビアではなくてベネズエラ』を訳してみた。サンダースや AOC などの民主社会主義者はアメリカをどうしたいのか。彼らの政策は、北欧諸国がモデルだという彼らの主張を反映しているだろうか。ベネズエラ出身のデビー・ダスーザが説明します。
私の生まれ故郷で、家族がまだ住んでいるベネズエラ - 不可。
キューバ - 不可。
ジンバブエ - 不可。
ソ連 - 不可。
毛沢東体制の中国 - 不可。
スウェーデン、デンマーク、ノルウェー - 優。

これが現時点での社会主義者の通信簿だという。
ベネズエラ、キューバ、ジンバブエ、ソ連、毛沢東の中国は、かつては優だったかもしれない。しかし、こうした国々の成績が不可になると、二度と優に戻ることはなく、すぐに記憶から消し去られてしまう。

だが、スカンジナビアのパラダイスはどうだ? 北欧諸国は期待を裏切ることはない。
サンダース、ザ・スクワッド(注1)、そして数を増す民主社会主義者たちが追い詰められるたびに、「デンマークのように」という言葉が救いの手を差し伸べる。「いやいや、私たちが目指すのは、今のベネズエラではなくデンマークだよ」

心にもないことを。そろそろ気付いた方がいい。手遅れになる前に。
まず、スカンジナビア諸国について知っておくべきことをまとめてみよう。

スカンジナビア諸国は、富の創造においては資本主義者であり、富の分配においては社会主義者である。

これらの国の法人税は約20%だ。アメリカよりも高くない。
アメリカとは異なり、ノルウェーにもスウェーデンにもデンマークにも、政府が設定した最低賃金は存在しない。

多くの場合、新しい事業を始めるのはとても簡単である。個人負担の医療を選ぶことや、私立の学校に通うこともできる。
確かに、北欧諸国は手厚い福祉国家である。しかし、富裕層もミドル・クラスも貧困層も、全員がシステムにお金を払い込む。誰も税務署員の目を逃れることはできない。全員が25%の付加価値税を支払うからだ。何かを購入したときに支払うこの販売税は、逆累進的な税である。
すなわち、収入に対する割合で考えれば、金持ちよりも貧者や中流家庭に重くのしかかる税なのである。

アメリカの社会主義者はこのコンセプトをまったく受け入れることができない。彼らは富裕層のみに税金をもっと支払わせたいからだ。アメリカの税制は既に非常に累進的であるにもかかわらず。
上位10%の富裕層が全所得税の70%を支払っている。だが、社会主義者は満足することを知らないようだ。

では、アメリカの左派がスカンジナビア・モデルを拒否するなら、彼らが望むモデルは何なのか?
ショーン・ペン、マイケル・ムーア、ビル・エアーズ(注2)など、アメリカ左派の大物社会主義を称揚するとき、どこを訪ねるかを考えればよい。そこにヒントがある。バーニー・サンダースを最後にコペンハーゲンで見たのはいつだっただろうか?

最初がソ連。次にキューバ。そしてベネズエラである。
ベネズエラの社会主義の基本は、現在のアメリカの社会主義と同様に、社会に分断の種を蒔くことだ。ベネズエラの左派は、国を貧者と富者に分けただけでなく、白人と黒人と褐色の肌の人々、すなわちヨーロッパ系、アフリカ系、先住民で分けた。
ウーゴ・チャベスは、黒人と先住民という自分の出自を最大限活用した。ベネズエラの社会主義者は、アメリカの左派よりもずっと前に、コロンブスの像を倒した。
敵役の階級を確立してしまえば、彼らの富を取り上げるのは難しくない。チャベスや彼の後継者であるニコラス・マドゥロは、望んだものを常に手に入れる。道徳的に明確にしておきたいのであれば、「盗む」と言ってもいいだろう。フランス革命やロシア革命のときと同様に、「平等」の名においてだ。
もちろん、始まりは違った。それはいつものこと。初期の大統領選挙運動では、チャベスは自分が中道だと売り込んだ。財産の没収は後からやってきた。チャベスやマドゥロが銃口を突きつけることで達成したことを、アメリカの左派は収入、富、相続に対して非常に高い税率を課すことで達成しようとする。
しかし、銃の話を議論から外すわけにはいかない。2010年、ベネズエラの社会主義者は、銃による暴力を止めるという名目で、善良な市民に武器を放棄させるキャンペーンを始めた。これは、「デスアルマ・ラ・ビオレンシア」と呼ばれた。武装を解除された市民たちが…
…社会主義政府の腐敗と圧政に対して抗議を始めたとき、チャベス、そしてその後を継いだマドゥロは、「コレクティボ」と呼ばれる暴力犯罪集団を解き放ち、市民を脅した。特にターゲットとなったのは、小規模事業主、起業家、農家、聖職者などだった。スカンジナビアにはコレクティボやAntifaはいない。
ベネズエラはいまや教訓となった。ゴミ箱をあさっている人々や、食品、トイレット・ペーパー、ガソリンを手に入れるために列をなしている人々をニュースで見たことがあるだろう。こうした人々はすべて一般の市民だ。
国のリーダーたちが腹を空かせることはない。チャビスタと呼ばれる社会主義者のエリートは、高級レストランで食事し、欧州で休暇を過ごす。奇跡のようだが、いつもそういう結果になるのだ。
アメリカの左派は、私たちをストックホルムに連れていくのだと言い募る。しかし、その政策はベネズエラの首都カラカスを目指している。かつては豊かで自由だった私の故国は、社会主義に破壊された。

アメリカよ、気を付けた方がいい。

デビー・ダスーザでした。(了)

英文: prageru.com/video/they-say…
注1: ザ・スクワッド – アレクサンドリア・オカシオ・コルテス (AOC) など、2018年下院議員選挙で初当選した4人の民主党女性議員を総称してザ・スクワッドと呼ぶ。

注2: ビル・エアーズ - 1960年代にベトナム反戦運動で名を馳せた活動家。後に大学教授。
追加の読み物1:
デンマークのエコノミストが語る、デンマークは社会主義の国ではありませんよ、というお話です。
togetter.com/li/1432285
追加の読み物2:
ベネズエラの現状についての詳細はこちら。デビー・ダスーザさんの動画『社会主義がベネズエラに何をしたか』(2017年8月公開)
togetter.com/li/1324646

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(翻訳は以下スレッドで↓)
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