この媒体以外も含めて、何回書いたかわからないのですが「ジェンダーフリー」は、英語段階で生煮えの概念をカタカナで官庁が輸入(or輸入的に造語)して固定化してしまった困った用語なのだと思います。つまり、↓
「何かがない」という言い方→もっと積極的に定義というのは、たとえば、①バリアフリー(バリアがない)→②ユニバーサル・デザイン(みんなで使えるデザイン)でも見られる経緯で、ある時期には英語でも使われていたのが、その後発展的に解消されるというのが典型的経路です。ところが↓
このバリアフリーを、①の段階で官庁が輸入してカタカナ語として固定したことで、バリアフリーは英語ではあまり使われなくなっても、日本での使用は残るというかたちになりました。これは、概念の発展から取り残されるという意味であまり好ましいパターンではないわけです。↓
ジェンダー・フリーはもっと困ったパターンで、「ジェンダー差別がない(ジェンダー差別フリー)」と言うはずだったのに、官庁が半分くらい造語的に「ジェンダー・フリー」でカタカナ語として固定してしまいました。つまり、本来であれば官庁によって「ジェンダー・フリー」でなく↓
「ジェンダー平等」として輸入されるべき概念だったところを、こともあろうに「ジェンダー・フリー」のかたちでカタカナ語として固定されてしまったわけです。そしてこの「ジェンダー・フリー」が、00年代のジェンダー・バッシングで、「ジェンダー(性差)がないわけないだろ!」と↓
叩かれることになりました。
==
このあたりの経緯がわかっていると、いろんなことが見えやすくなるかもしれません。

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23 Mar
最近、翻訳という仕事をご存じない方から、「もう翻訳は機械でできるはず」とか(これは、お客さんがそれでよいならご随意にどうぞ)、「プロ翻訳者は機械翻訳を使用し、それを直しているはず」というご認識(これはトンデモ)をご開陳いただくことが続いて頭を抱えています。
翻訳業務って、「このジャンルは(このジャンルが得意な)この事務所・この人にお願いする」みたいな大変細分化された業界なのですよ。ぽっと「翻訳会社と名前がつけばどこでもいい」みたいなかたちで仕事を出しても、ごみみたいな訳文もどきしか上がってこないのです。まして、機械にオマカセでは…。
機械翻訳の登場とともに、翻訳に関する「よのなか」の認識が、80年代ごろ(まだ、日本に翻訳という仕事があまり沢山なかったころ)に戻ってしまった感があります。当時は、「うちが出した翻訳が、こんなにめちゃくちゃだった」という愚痴を研究室のご先輩(某官庁中心)によく聞かされたものでした。
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21 Mar 20
ちょうど四半世紀くらい前、「ウェブを(英語)コーパスとして使う」ことが可能になったとき、最初に確認にかかったのが、グラフの「立ち上がり」局面に使われる用語でした。直前にコーパス言語学の先生に分けていただいたデータを頼りにしながらの作業で、ものすごく興奮したっけ。#何か思い出した
そのときは、曲線が下向きに転じたり、下がったりする場面で使われる表現を次に確認しにかかったのだけれど……。この間、手元のメモに増えるのは「立ち上がる」局面の表現ばかりなのが悲しい。
はなしが突然狭くなりますが、なぜ曲線の「上がる・下がる」系表現が必要だったかというと、日本語の技術文書では「変化する」という表現が超多用されるため。英語では「(急/徐々)に上/下がる」的に表現される場面が軒並み「変化」。適度にごまかして^^英訳するための表現が必要なのでした。
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11 Nov 19
事情を知らない方がごらんになって誤解されるといけないので説明しておきますが、これは、通常の意味での「翻訳界隈」の内部のはなしではありません。「翻訳」の2文字を使って行われている詐欺まがいのご商売のはなしです。
翻訳という職業について最大公約数的なことを書いておくと、仕事で日本語力以外に必要とされるのは、⑴英語力と⑵内容知識の2種。そして、⑵が⑴より上の場合に最低限必要とされるのレベル(1’)に常識的な職業養成期間で到達するのに必要なレベル(1”)に、上記で紹介される講座は達していません。
もう少し一般向けのはなしを書いておくと、翻訳の主力はたぶん3分野。量的に少ない側から先に説明すると、まず、⑴書籍翻訳(文芸だけではない)。これは、書籍として売れる製品を出力できてはじめて商売が成立。その前も師匠が直せるレベルの下訳を師匠との信頼関係のもとで出力できることが必須)。
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