#入門現代の量子力学 では正準量子化を敢えて除外しました。その理由は、
①物理量が演算子化し、それが作用する複素数値の波動関数が現れて、誤解させるような無駄な神秘性を感じさせること。
②現代的量子力学ではハミルトニアンという物理量の形でさえ、本来は実験で決定されるべきもの。
です。
①物理量が演算子化し、それが作用する複素数値の波動関数が現れて、誤解させるような無駄な神秘性を感じさせること。
②現代的量子力学ではハミルトニアンという物理量の形でさえ、本来は実験で決定されるべきもの。
です。
①は前期量子論＋正準量子化という従来の教科書路線で出てくるもので、解析力学の勉強も必要な長く険しい道でした。波動関数の意味が最後まで曖昧なため、存在しない観測問題に人々を縛り付け、多世界解釈などの不要な様々な解釈まで作り出したわけです。それを避けるために正準量子化を除外しました。
②は正準量子化だと、「ハミルトニアンはこういう形」と書いてから、実験でその形は検証されたという順になります。しかし正準量子化が常に正しいハミルトニアンを与える保証はありません。例えば演算子順序の問題もありますし、そもそも量子重力などで、それが成功する保証はどこにもないのです。
ですから、科学として健全な流れにするために、まずは状態トモグラフィの概念を説明した後で、P87脚注では、その状態の時間発展からハミルトニアンの形を実験で決定する量子プロセストモグラフィに触れています。
また量子コンピュータ実装技術が進んできた昨今では、冷却原子系のように、自由な形のハミルトニアンを実験的に設計できる時代になってまいりました。量子多体系のハミルトニアンの形は、自然が最初から与えているものだけではなく、自由にデザインし、制御できるようになってきました。
量子コンピュータ実装技術を使ってハミルトニアンをデザインする時代に、正準量子化のハミルトニアンを天下り的に書くのは時代遅れです。
量子コンピュータは概念としても重要で、ハミルトニアンを含む、任意の物理量を操作論的に定義してくれます。あらゆるユニタリー操作（量子計算）を実現できるユニバーサル量子コンピュータが完成すれば、その系の物理量を実験レベルで自由に制御できる時代が始まるのです。これが現代的量子力学です。
今回の教科書は予定されていたページ数ぎりぎりまで内容を詰め込んで、密度が濃くなっております。そのため、脚注にも重要な情報がありますので、よくチェックして頂いて、その意味を深く考えて頂ければ幸いです。
また新しい量子力学の登頂ルートを行くには、旧ルート（前期量子論＋正準量子化）の思考の轍から脱出することが不可欠となります。正準量子化によるこれまでの洗脳を意識的に解除しながら、読まれることをお勧めします。
#入門現代の量子力学
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