#珍種紹介 カワネジガイに準じて日本産淡水貝 #七大珍種 当確なのはヒダリマキモノアラガイ。近年も北海道・東北に複数の産地が知られ、目にする機会はカワネジガイより僅かに多いですが、本州の大半で絶滅したので稀少性はほぼ双璧です。殻表に毛羽立った螺肋を多数巡らし、生貝はまるでワラジムシ。
和名が誤解を招きがちですがやはりヒラマキガイ科です。本種が属す 𝘊𝘶𝘭𝘮𝘦𝘯𝘦𝘭𝘭𝘢 はカワネジガイ属 𝘊𝘢𝘮𝘱𝘵𝘰𝘤𝘦𝘳𝘢𝘴 の亜属または異名とされるなど諸説あり。お顔はカワネジガイ同様赤黒い体表に白斑を散在しますが、頭触角根元外側の鰭状の突起が、より大きく目立つ点が異なります。…
私が見たのは8月、浅い沼の水辺で、水深1〜5 cmに沈んだ枯れ葉の上に、高密度でびっしりと生貝がいました。戦前の東京や大阪でも同様の光景が見られたに違いありません。冬季のデータは全くないので、カワネジガイのごとく渇水期に陸貝生活をするかどうかはまだわかりません。…
本種の原記載はネット上にないので画像を挙げます(本邦初公開かも)。
Lindholm, W.A. 1929. Einige neue Mollusken (Pelecypoda und Gastropoda) aus den Gewässern Sudost-Siberians. 𝘋𝘰𝘬𝘭𝘢𝘥𝘺 𝘈𝘬𝘢𝘥𝘦𝘮𝘪𝘪 𝘕𝘢𝘶𝘬 𝘚𝘚𝘚𝘙, (12): 302–306.
このうち 305–306 (2つに分けます):
タイプ産地はロシア沿海州の「ヤコブレフカ村ウスリ地区 Daubiché 川(ウスリー川源流の1つ)、氾濫原の3つの異なる三日月湖」。
現在の学名は 𝘊𝘶𝘭𝘮𝘦𝘯𝘦𝘭𝘭𝘢 𝘳𝘦𝘻𝘷𝘰𝘫𝘪 (Lindholm, 1929)。
なおこの文献は 𝘚𝘵𝘦𝘯𝘰𝘵𝘩𝘺𝘳𝘢 𝘳𝘦𝘤𝘰𝘯𝘥𝘪𝘵𝘢 エゾミズゴマツボの原記載も含みます。
タイプ産地の訳の冒頭が変でした。「ウスリー地方のヤコブレフカ村」の方がより適切か。

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3 Oct
#珍種紹介 日本の淡水貝の #七大珍種 にカワネジガイを含めることに異論は出ないでしょう。稀少性はもちろん、形の奇抜さや意表を突く所属など、これこそは貝通の夢にして憧れの種。この種に関するまとまった報告を一番最近公表したのがたまたま私なので、カワネジガイの凄さと魅力をご紹介します。...
何より目につくのは奇抜な殻です。左巻で、螺旋はほどけ、ドリル刃に似ています。しかも驚きなのはヒラマキガイ科の一員という点です。この科の大半の種は画像右下のような扁平な円盤状で、全く似ていません。また本種が属す 𝘊𝘢𝘮𝘱𝘵𝘰𝘤𝘦𝘳𝘢𝘴(狭義)の他種はインドとバングラデシュに各1種…
知られるだけで、その間の中国や東南アジアからは記録がありません。日本産は吉良哲明(1911)が大阪の水田用水路から報告し、そこには「無數に」「極めて多産」とあります。Walker (1919) の原記載も「大阪に多産」としています。その後平瀬信太郎(1922)が東京北区赤羽から同属の別種として…
Read 19 tweets
3 Oct
#珍種紹介 日本の汽水産貝類の #七大珍種 に当確なのは、背腹に扁圧された柿の種子状の独特な殻を持つオキヒラシイノミ。日本では山口県下関市(1970年代までに絶滅)と九州西岸(福岡〜鹿児島各県)の、内湾奥の海岸・河口に固有。岸辺にまとまって生えたハマボウなどの樹木が水面へオーバーハング.. Image
して昼も日蔭をなす場所の落葉や転石間を好み、産卵は樹幹を1〜2mも登って行う。この属の種は孵化後に浮游幼生期を経ると言われるが、これはインド産の1種について報告があるだけで、本種は水のないところで産卵するので直達発生の可能性がある。その場合分布域は狭いはずだが、現在は遠く離れた中国.. Image
南部〜ベトナム北部に産する種と同種されており、これは誤同定の可能性があるので再検討が必要。両者が別種だった場合、日本産は未記載種かつ西日本固有種となり稀少性は飛躍的に増大する。棲息環境の大半がコンクリート護岸などで失われ、九州以北の汽水性貝類のうち最も絶滅に近い状態..
Read 4 tweets
7 Sep
今日はサザエのお話を書こうかと思ってましたが、一昨日のヒミツナメクジを「なにこれかわいい」とお絵描きして下さった方もおられ、マンボウ博士に至っては #ヒミツナメクジチャレンジ なんて妙なタグまで作ってくれて、折角なのでその発見の経緯などご披露します。時は29年前の1992年まで遡ります。
前置きとして、ヒヅメガイ(オカミミガイ科)の話をせねばなりません。当時この種は、死殻がごく稀に南西諸島の浜辺に打ち上げられるだけで、誰も生きた姿を見たことのない幻の種でした。殻1個を拾っただけで報告の価値があるほどだったのです。その頃私は卒研生で、オカミミガイ科の分類の再検討を…
卒論の題材としていました。しかし、ヒヅメガイは最難関で到底出逢えるはずもなく、検討対象とするのは最初から諦めていました。そうした折、親しくしていた貝友から宮古島採集旅行に誘われ、参加を決めました。この島へ行くのは初めてでした。着いた日の晩、同室の2人は夕食後早々に港へ夜間採集に…
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6 Sep
ヒミツナメクジ科は俗にいうカタツムリやナメクジ等を含む汎有肺類に属し、いわゆるウミウシとは一線を画すので、「陸ウミウシ」という呼称は不適切で混乱を招くだけです。ヒミツナメクジも私はうるさいよ、だって第一発見者&記載者(共著ですが)だもん。その発見の経緯もいずれここに書こうかな。 Image
とりあえずこちらをどうぞ:
福田 宏 2017 (Mar.). ヒミツナメクジ. In 沖縄県環境部自然保護課 (編), 改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 第3版 (動物編) -レッドデータおきなわ-, 45, 512–513. 沖縄県環境部自然保護課, 那覇. Image
補足。この科はスナウミウシ目の一員ですが、スナウミウシ類もウミウシではありません。昔、ウミウシの仲間と考えられていた頃についた古い名前が、定着してしまって今更変えにくいだけです(「スナナメクジ」でもよいのですが噛みそうだし)。「スナウミウシはウミウシではない」と覚えましょう。
Read 4 tweets
6 Sep
軟体動物多様性学会会員各位
2020年度総会(文書にて実施)の審議・採決結果が事務局で集計されましたので、速報いたします。

有権者数:80名
投票数:48票(投票率60%)

<役員改選>
候補者全員信任:48票
よって、全候補者が信任されました。

2021–2022年度役員会(新は新任、氏名のABC順):
会長:石田 惣(新)
副会長:芳賀拓真(新)・多留聖典
事務局:花岡皆子・中野智之
会誌編集(*は英文誌兼任):浅見崇比呂*・福田 宏*(主幹)・芳賀拓真*・花岡皆子・早瀬善正(新)・飯島明子・石田 惣・岩崎敬二・亀田勇一*・柏尾 翔(新)・久保弘文(新)・元陳力昇(新)・中野智之*・
中山 凌(新)・齊藤 匠(新)・佐藤慎一*・多留聖典
理事:花岡皆子・飯島明子・桒原康裕
自然環境保全:安渓遊地

<審議事項1.2021年度予算案>
賛成:48票
反対:0票
白票:0票
よって、可決されました。

<審議事項2.軟体動物多様性学会全体として、ハチの干潟の保全活動に関わることの...
Read 7 tweets
5 Sep
肉抜き話へ戴いたコメントのうち、ミニ四駆と並び最も多かったのがRTと同様の趣旨。しかしサザエは日本・韓国の固有種です。近縁な別種は他国にもいますが、国民の大半が食材として認識してる種は他にない。皆さんご存知ないと思いますが私ゃサザエにはちとうるさいよ。その話は近々、稿を改めて。...
エスカルゴは私が知る限り、力任せに肉をブチ切ってます。食卓では常に前半分しかなく、全体が揃ったものを見た試しがありません。内臓塊はどうせ食わんから要らん、という合理主義でしょうか。日本では内臓を食べない場合でも綺麗に抜くのと対照的です。こういうのをお国柄というのかもしれません。..
要するに、巻貝を食す際にわざわざ完璧に抜こうとするのは日本人ぐらいです。ただし西欧でも、貝人(貝殻蒐集家)だけは昔から肉抜きをしていました。殻の奥に肉が少しでも残るのを嫌うからです。私は肉抜き論文の原稿作成段階ではこれを知らず「肉抜きは日本独自の技法」と書いて投稿したところ、...
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