Thread by @Derive_ip

先日、東洋経済ONLINEの実効再生産数と東京都発表の週平均の対前週比の関係について話したので、簡易的実効再生産数の計算について説明を補足しておこうと思います。キーポイントは、Serial Intervalを平均値に固定してしまうということです。これが大事。

https://twitter.com/Derive_ip/status/1462029712033665025

実効再生産数は、感染者１人が何人に感染させてしまうかを示す指標なのですが、感染させてしまう期間はまちまちで不明で、これが困難の大元です。なので、とりあえずこの数値を全ての感染で同じ値を使ってしまうことにします。平均値は4.8日とか言われているのですが、もう簡単に５日ってことで。

すると、５日後の新規感染者の週累計は、実効再生産数倍(R倍)になることが解ります。というのも、感染者は５日後にR人に感染させるのですから。この関係を用いて実効再生産数を計算するのが、いわゆる感染研方式です。
niid.go.jp/niid/ja/diseas…

さて、この５日ずらし法を７日ずらしに変更した場合はどうなるでしょうか？感染拡大が指数法則に従うということを考えれば、R倍だったものをR^7/5倍にすればよいことが解ります。この関係を用いて計算する方法がいわゆる東洋経済方式です。
toyokeizai.net/sp/visual/tko/…

意外と簡単ですよね。こんなんでちゃんと計算できているのか思ってしまうのですが、Cori et al. AJE 2013の方法という厚労省のADBでの資料でも使われている方法と比較しても、割と巧く計算できているのです。Cori et al. AJE 2013自体も１週間windowを使っているのですけど。
academic.oup.com/aje/article/17…

で、数日前に指摘したかったことは、実効再生産数に変な幻想を持っている人がいるのかなということです。実効再生産数が１を超えると感染拡大という知識が定着したからなのかもしれないですが、そこの判断だけなら週平均の対前週比で十分なのですよね。

それに、第３波のときに東京都では「7日間平均を前週7割以下に」という目標が掲げられたのですが、これは私の理解では、実効再生産数を目標にしてしまうと一般の人に解り難いから、ほぼ等価な週平均の対前週比を目標にしたのだろうと思っていました。www3.nhk.or.jp/news/special/c…

それ以外にも、実効再生産数を用いた予測が大外しをすることが続いたりして、実効再生産数に変な期待をすることはやめて、シンプルな指標を使うようになったのだと思っています。
www3.nhk.or.jp/news/html/2020…

そもそも、実効再生産数というのは、観察された感染者数の推移から、１人の感染者が何人に感染させたかの情報を復元する計算なので、その情報が必要でなければ計算する必要もないようにも思えるのですよね。

１人の感染者が何人に感染させるのかの基準に統一にすれば、他の感染症（インフルやはしか）と比較してどうなのかということが解ったりするだろうけど、そんな指標に変換したからといって、未来予想の精度が向上するなんてことはないのだし。

しかも、実効再生産数は、計算方法からも解ると思いますが、Serial Intervalというのが重要な因子なのにもかかわらず、この数値自体が推定するしかない不確実な量だったりします。それどころか、感染拡大防止の介入をすると短くなるって結果もあったり。

https://twitter.com/Derive_ip/status/1285882087057133568

実効再生産数は、以前はご神託であるかのように崇められていましたけど、みんなが思っているほど頼りになるような指標ではないと思うのです。