動画『風力と太陽光の何が問題か?』を訳してみた。風力、太陽光、バッテリーは、ほんとうにクリーンなエネルギーなのか? 実は高い代償が隠されているのではないか? マンハッタン・インスティチュート上席フェローのマーク・ミルズが、環境と経済の両面から説明します。
「アンオブタニウム」について聞いたことがあるだろうか?
これは、映画『アバター』の舞台である惑星パンドラで見つかった魔法のエネルギー鉱物だ。SF 映画のファンタジーである。しかし、環境保護運動家は、この地球でそれを見つけたと考えている。風力と太陽光である。
これは、映画『アバター』の舞台である惑星パンドラで見つかった魔法のエネルギー鉱物だ。SF 映画のファンタジーである。しかし、環境保護運動家は、この地球でそれを見つけたと考えている。風力と太陽光である。
彼らは、十分な量の風力発電装置と太陽光発電装置を建設し、その電力を十分な数のバッテリーに保存することで、人類が必要とするすべてのエネルギーを供給できると考えている。
単純な事実として、それは不可能だ。地球を守ることが目標であるのなら、それを望むべきでもない。
単純な事実として、それは不可能だ。地球を守ることが目標であるのなら、それを望むべきでもない。
理由を理解するために、これまであまり議論されてこなかった単純な物理の現実についていくつか考えてみよう。
すべてのエネルギー源には、超えることのできない限界がある。太陽の光子を電子に変換する際、その効率は最大でも約33%である。現在最先端の太陽光テクノロジーでは、その効率は26%である。
すべてのエネルギー源には、超えることのできない限界がある。太陽の光子を電子に変換する際、その効率は最大でも約33%である。現在最先端の太陽光テクノロジーでは、その効率は26%である。
風力については、最大効率が60%で、最先端の装置で実現できる効率は45%である。したがって、風力も太陽光も極限の効率にかなり近づいているといえる。まもなく技術が飛躍的に進歩するとPRしているが、それは単純に不可能である。また、風力発電と太陽光発電は、風が吹き、日が照るときだけ機能する。
しかし、エネルギーは常に必要だ。解決策は、バッテリーを使用することだという。しかし、ここでも、物理と化学がその実現を非常に困難にする。
世界最大のバッテリー工場について考えてみよう。テスラがネバダに建設した工場である。
世界最大のバッテリー工場について考えてみよう。テスラがネバダに建設した工場である。
この工場をもってしても、アメリカがたった1日で消費する電力を保存するのに十分なバッテリーを作るには500年かかる。20年の月日が経ち、何十億ドルもの補助金が注ぎ込まれたにもかかわらず、風力と太陽光により生成された電力は、現在の世界の電力量の3%にすら及ばないのも当然といえる。
経済の話を横に置いておくにしても、環境を守りたいという気持ちがあるのなら、風力、太陽光、バッテリーによる解決策については再考したほうがいいかもしれない。なぜなら、機械がすべてそうであるように、これらの装置も再生可能でない材料から作られるからだ。
驚くような数字をいくつかあげよう。
驚くような数字をいくつかあげよう。
電気自動車のバッテリーの重さは約500kgである。これを1つ作るために、地上のどこかで250トン以上の土を掘り、移動し、処理する必要がある。
100メガワットの風力発電施設は75,000戸に電力を供給できるが、これを1つ建造するために、30,000トンの鉄鉱石と50,000トンのコンクリートが必要になる。
100メガワットの風力発電施設は75,000戸に電力を供給できるが、これを1つ建造するために、30,000トンの鉄鉱石と50,000トンのコンクリートが必要になる。
これに加え、巨大な羽根を作るために、リサイクル不可能なプラスチックを900トン使う必要がある。太陽光で同じ量の電力を生成しようとすれば、必要なセメント、鉄、ガラスの量は1.5倍になる。
他の鉱物も必要だ。これには、希土類金属と呼ばれる元素も含まれる。現在の計画では、コバルト、リチウム、ジスプロシウムなどの元素を掘り出すために、採掘量を世界でなんと200%から2000%増やす必要がある。
こうした鉱物はどこから来るのだろうか? 大規模な採掘作業を新たに始める必要がある。これらはアメリカにはほとんど存在しない。アメリカに敵対的な場所から輸入しなければならない場合もあれば、誰もが保護したいと考えている場所から輸入しなければならない場合もある。
豪州のインスティチュート・フォー・ア・サステイナブル・フューチャーは、エネルギー原料に対する世界的な “ゴールド”・ラッシュにより、「人の手が入っていないために高い生物学的多様性が維持されている人里離れた自然豊かな場所」に採鉱作業員が入っていくことになる、と警告する。
採掘作業をするのは誰なのか? 労働組合に守られた組合労働者でないことは確かだろう。
アムネスティ・インターナショナルは陰鬱な状況をこう描写する。「最先端テクノロジーのマーケティングと土砂を運ぶ子供たちの姿は、くっきりとした光と影をなす」
アムネスティ・インターナショナルは陰鬱な状況をこう描写する。「最先端テクノロジーのマーケティングと土砂を運ぶ子供たちの姿は、くっきりとした光と影をなす」
さらに、採掘自体にも、原料の精製や風力発電/太陽光発電/バッテリー用のハードウェアの製造に用いられるエネルギー集約型の工業プロセスにも、従来の方法で生成された電力が大量に必要である。
そして、廃棄物である。風力タービン、ソーラー・パネル、バッテリーの耐用期間は比較的短い。約20年だ。ガス・タービンなどの従来の発電装置の半分である。
国際再生可能エネルギー機関の計算によれば、…
国際再生可能エネルギー機関の計算によれば、…
…現在の計画を推し進めると、使い終わって廃棄されるソーラー・パネルは、2050年までに、重量にして現在の世界的なプラスチック・ゴミの2倍になるという。寿命の尽きた風力タービンとバッテリーを加えれば、ゴミの量は何百万トンも増える。まったく新しい環境課題が出現するのである。
これまでにない規模で採鉱を拡大し、数百万エーカーもの手つかずの自然を掘り返し、子供の就労を奨励し、壮大な廃棄物問題を引き起こす前に、ほぼ尽きることのない炭化水素を再評価してもいいのではないか。炭化水素こそ、この素晴らしい現代社会を可能にした燃料である。
そして、日進月歩で発展するテクノロジーが、炭化水素燃料をより簡単に取得し、よりクリーンに利用することを可能にしている。
一般的に、次のような有益な比較が成り立つ。
油井を1つ掘るのと、巨大な風力タービンを作るのにかかる費用はほぼ同じである。
一般的に、次のような有益な比較が成り立つ。
油井を1つ掘るのと、巨大な風力タービンを作るのにかかる費用はほぼ同じである。
風力タービンが1時間に生成するエネルギーはおおよそ石油1バレル分だが、油井は1時間に10バレル分生成できる。1バレルの石油または同等量の天然ガスを保管するためにかかる費用は50セントに満たない。しかし、石油1バレル分に含まれるエネルギーを蓄えるには、200ドル分のバッテリーが必要になる。
風力、太陽光、バッテリーは、人類のすべての電力ニーズを満たす魔法の解決策であると誰かに言われたら、「それが環境に与えるコストがわかっているのか」と尋ねればよい。
「アンオブタニウム」は映画では役目を果たした。しかし、私たちは映画の登場人物ではない。現実世界に生きているのである。
「アンオブタニウム」は映画では役目を果たした。しかし、私たちは映画の登場人物ではない。現実世界に生きているのである。
• • •
Missing some Tweet in this thread? You can try to
force a refresh
