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#三月ユリシーズノート
はい、私、ガボ・ジョイスは、今ここマーテロウ塔にいます!

おしい! そのマーテロウ塔じゃない!www
失礼しました! 私、ただいまマーテロウ塔の屋上におります!
あ、誰か階段から現れました!

#三月ユリシーズノート
U.1 1/10
pp.11-12(柳瀬尚紀訳 河出書房新社 2016年初版) 

ある意味人気者のバック・マリガンです! 友だちにはなりたくないけど飲み会にいたら勝手に騒いでくれるので無口な私には便利なタイプ。

あざとく手元に「手鏡と剃刀が十字に重ねて」、なんやら唱えております!

#三月ユリシーズノート
このバック・マリガン、リオポウルド・ブルームに比較して、べらぼうに外見的特徴描写が豊富。

順不同で曰く、ふっくら、ふくらか、うま面、グレーの目、色淡いオークの木目色で淡褐色の金髪、コックニーなまり、頑丈ながっしりした胴体、歯並びよく、金色の歯、ごろごろ喉、

#三月ユリシーズノート
肉襞の陰ができた顔、無愛想な卵形のあご。こんなのが、とにかく喋りまくり動き回る第1挿話。

p.12 で自身が「ぴょこぴょこ快活、いかにも牡鹿(バック)らいし」と言うが、これは「マーラキー・マリガン」を強弱弱格で発音するということ。「マ」ーラキー・「マ」リガンか。

#三月ユリシーズノート
読書会では「ぜんぜんバックらしくない」と指摘というか、まったくだ。しかし牡鹿らしい動作は随所に出てくるのです、と南谷さん。

そんなマリガン、我らがスティーヴンに「キンチ!」と呼びかける。

謎のキンチ。意味を確定できたらノーベル・ユリシーズ賞。

#三月ユリシーズノート
「三度重々しく祝福する」をメモしたのは、このあと「三」が山ほど出てくるから(と後付けの意味付け)。三はカトリックではマジックナンバー。

「ちらりと鏡の下を覗き(…)引っこんでろい!」
絵のように、のびてきた顎髭に兵舎から首を出すなと命令したんじゃなかろうか。

#三月ユリシーズノート
そして、マリガン宗教エロネタの始まり。
「キリメト」は「christine」とキリストの女性形を「女(メ)」でうけたんだろうけど、いまメモ見て、「お神さんの方がよくない?」とか不遜なことを書いている私w

さらに「肉体にして霊魂にして槍満創痍(やりまんそうい)

#三月ユリシーズノート
さらに「肉体にして霊魂にして鮮血にして槍満創痍(やりまんそうい)」ときた。
「body and soul and blood and onus」
とりあえず、祈りの文句を重ねて、blood にエロネタを突っ込んだ(と柳瀬さんは思った(と私は思った))。

で、血→白血球→ひげ剃り泡という連想芸人。

#三月ユリシーズノート
「二度、力強く甲高い汽笛」はおそらくp.14の郵便船。この郵便船が第4挿話に手紙をw

それと少し首を傾げるのは、マリガンの容姿が「芸術の保護者だった中世の『とある』高僧を思わせる」というのは明確にあてがある対象を(柳瀬さんは)特定しているのか?(アクィナス?)

#三月ユリシーズノート
ノート写真の右の「座っている場所」は、読書会で出たこのあとのマーテロウ塔の中の話。メモできるスペースがここしかなかったのでした。(読めない文字だらけのノートが続きます…)

あ、そうだ。鼎訳のマラカイ・マリガンでは強弱弱格にならない。音に拘る柳瀬訳の剛腕。

#三月ユリシーズノート
「マラカイ」の最後は二重母音なので強弱弱格ではあるが、「マラキ」の方が発音的には正しいのでは?という一連リプライをいただきました。ありがとうございます!

「マラカイ」で下品な駄洒落を思いついて書こうとしていた私を思いとどまらせた神の声www

#三月ユリシーズノート
U.1 2/10
pp.13-14
この辺、とりあえずは「読める」んですよね。なんとなく読める。読めるもんだからするっと読み落としている山ほどの意味があるはず。

と思って、いま読み返してはいけません! 終わりません! ノートだけに絞ります!

#三月ユリシーズノート
「切っ刃のキンチ」(Kinch, the knife-blade) 匕首のキンチよりはいいよね。K-K がキ-キだし。まあ、寄らば斬る的な鋭利な知性のスティーヴンというのを冷やかしているマリガンの図?

#三月ユリシーズノート
ヘインズの人となりが少々。
黒豹がどうのと譫言をいう危ないやつで、マリガンが救ったとスティーヴンがいう「溺れかけた人間」とはこのヘインズのことか? ヘインズ、どっかの戦争帰りのPTSDみたいな感じ?(と思わせて、このあとのヘインズの正体不明感がなんとも)

#三月ユリシーズノート
p.14
「高座」
英語に不自由しているので、元の単語を見間違えておりましたw 「gunrest」は「砲座」と訳してあって、「高座」は「perch」。噺家マリガンが「ひょいと高座から飛び降り」る感じ。

「青っ洟緑」snotgreenは、鼻と緑(アイルランドのケルト色)の鞄語。

#三月ユリシーズノート
「睾丸締めつける海」 は南谷さんの詳細な解説をどうぞw


「葡萄酒色の海にて」はホメロスの決め台詞で、「洋々と!(ターラッター!)」はクセノフォン「アナバシス」で海を見た兵士の叫び。鼎訳「海ダ!」に「ターラッター!」とルビをと思うが。

#三月ユリシーズノート
「キングズタウンの港江を出て行く郵便船は、何艘だったのか?」問題。

mailboat が単数なんで一艘だとは思いますが、p.21 の海には、「二音ずつ」「絡み合う和音」と、二艘を思わせるのですが…。

#三月ユリシーズノート
アルジーとは、詩人アルジャーノン・チャールズ・スウィンバーン、ご存知『アルジャーノンに花束を』のアルジャーノンのモデルのことだそうです。マリガンはアルジーの「Triumph of Time」という詩から「a  great sweet mother」と引用して目の前の海を表している。

#三月ユリシーズノート
ここでノートにゴチャゴチャ書いているのは、原文に当たるなら「ガブラー版ユリシーズ」を見なきゃだめ!という話。

私の見た電子版は「a  great sweet mother」が「a  grey sweet mother」とあり、これをなぜ「大いなる慈母」と「灰色」を隠しちゃうのか首を傾げながらも、

#三月ユリシーズノート
マリガンは「グレーの探るような目を(グレーの)海からスティーヴンに向け」て「叔母がね、きみがおふくろさんを殺したと思っている」と言い、p.16 では喪服を「グレー」のズボンに履き変えろとスティーヴンを責めるので、グレーはマリガンがスティーヴンを非難する色なのか!

#三月ユリシーズノート
だからこそ「a  grey sweet mother」とマリガンに間違った引用をさせたのか!と、私は大喜び。

…ところが間違ってんのは、私家版ユリシーズの方だったというオチw
この部分は、他に「superb sweet mother」「fantastic sweet mom」「fantastic candy mom」などもう無法地帯w

#三月ユリシーズノート
#三月ユリシーズノート
U.1 3/10

マリガン「お話がね、きみがおふくろさんを殺したと思っているんた」
スティーヴン「誰かが殺したんだろ」

鼎訳注には、父親説があるとのことですが、そのまま読めば「殺したのは神だ」と言ってるじゃないのかしらん。
マリガンは母の死にひざをついて祈ることすらしない「棄教者」スティーヴンを揶揄し、スティーヴンの宗教的立場も母親との確執(『肖像』最後あたり)も知っている、ということをスティーヴンも知っているので、神を母親殺しの犯人と当てこするのは自然ではないか。

#三月ユリシーズノート
この絵は、
アンジーを引用してマリガンが「大いなる慈母」と表す海を、自分のほつれた袖(『肖像』ラストの四月二十六日のようには仕立て直してもらえない袖)越しに見ながら、海の緑から母の胆汁の色を連想して、茶色の経帷子に包まれた母の記憶に苛まれる。

#三月ユリシーズノート
一方、第4挿話ではブルームが腎臓をチラシに包んで脇ポケットに入れている。

というとりとめもないものです。

#三月ユリシーズノート
が、このあたりは、小林さんの論文『「心とは何か」を学ぶこと』(『ジョイスへの扉』所収)を先に読んじゃったので、自分の感想なのかも定かではなくなっておりますw
小林さんの『海を眺めるスティーヴン・デダラス――『ユリシーズ』のはじまり』も。

webmedia.akashi.co.jp/posts/2115

#三月ユリシーズノート
その他、セコレグの元ネタ「セコハン」がすでに通用しない言葉かもしれないという衝撃(読書会にて)。

グレーのズボンは履けないのは喪服で通しているからという、屈折した感じ。

「こけ犬わんちゃん」は、p.88で「こけにこけたるこけ犬のむくろ」と響く。

#三月ユリシーズノート
マリガンがスティーヴンを「だんまり役者」と評し、p.22の「快傑ターコウ」が、第4挿話でブルームがオリエンタリズム妄想に『パントマイム』で浸るときにも出てくると勝手に読んで楽しんでおりましたが、このパントマイムは無言劇ではなく滑稽劇とのこと。勝手読みはダメw

#三月ユリシーズノート
#三月ユリシーズノート

そう言えば、私のユリシーズ読書会に臨む姿勢方針演説をしていなかった(訊かれてもいませんがw)。

●分からない言葉はググる。
●分からない表現は想像して、鼎訳の脚注を見て、想像する。
●直接的な解説本は読まない(答え合わせしない)。
●面白い読み方を探す。
最後のは、とにかく自分が読書を続けたいのと、お礼代わりに主催の皆さんが呆れるくらいのアホな解釈を提供して楽しんでもらいたいということでありますw 難しいよ!

ほぼ20年ぶりの初読を楽しんでおります。忘却力、万歳。

#三月ユリシーズノート
#三月ユリシーズノート
U.1 4/10
pp.17-18
ここで「鏡」が前面に。

スティーヴン、マリガンの手鏡を覗いて「これのほうでもおれに問う」の「これ」とは「鏡」か「鏡にうつった自分」か?
その鏡をとりあげて、マリガンはオスカー・ワイルドを引用し「鏡に己の顔の見えぬキャリバン(テンペストの化物)の激怒」と、「(詩人は)ロマンティシズムで自分のリアルが見えずに不機嫌だな」とスティーヴンを揶揄したのであろうか。

#三月ユリシーズノート
これに対して、スティーヴン「それ、アイルランド芸術の象徴だよ。僕(しもべ)のひび割れた鏡だ」と切り返し、そもそも「イングランドの(醜い)僕(キャリバン=アイルランド)としての自分がうつっているのを見ようとしないひび割れた鏡」がアイルランド芸術だ、と?

#三月ユリシーズノート
すると、先に戻って、「これのほうでもおれに問う」とき、鏡には「虱だらけのこけ犬面」がうつっている。つまり鏡の中のリアルなスティーヴン=キャリバンが「なぜお前の顔はそれほど醜いのか」と問うているのを見ていることになる?

#三月ユリシーズノート
「芸術の笹針(ランセット)」と「冷たい鋼鉄のペン」

手術用メスと詩人のペンを互いに怖がるスティーヴンとマリガン?

「クランリーの腕、こいつの腕」

『肖像』丸谷訳文庫p.459- の「クランリーの母親(女)を守る腕」への言及かな。

#三月ユリシーズノート
「クライブ・ケンプソープの部屋(…)牛津若道なんて嫌だってば!」

スティーヴンの妄想の中で、牛津(オックスフォード)でズボンをぬがされたりして若道ってるのは誰? マリガン?

#三月ユリシーズノート
マシュー・アーノルド(生活に駆られて働くだけの塊である労働者=大衆を尻目に、中産階級をヘレニズムとヘブライズムをあわせ持つ教養で俗物性から解放しようとした何様)の顔を、労働者の典型の「何も聞こえずの庭師」に見る皮肉。

kotento.com/2019/03/12/pos…

#三月ユリシーズノート
ちなみに、「何も聞こえずの庭師」=「A deaf gardener」の deaf は臆せず「聾(ろう)」と訳して下さい。

#三月ユリシーズノート
「我ら自身の為に、新しい異教主義、中心なる臍(オムパロス)」

シン・フェイン → マシュー・アーノルド → オムパロス

いや、これ、なんでこんな連想ゲームになるのかよくわからない。異教主義は皮肉? 

#三月ユリシーズノート
サンディコウブのマーテロウ塔がオムパロスなのは、世界各地(またはイギリス=アイルランド)のちょうど真ん中(臍)だからかも、とは思うけど、つながらない。

#三月ユリシーズノート
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