Thread by @bokukoui

「前へならえ」にこだわるのは、やはり戦前の軍事色を帯びた教育の残滓なのでしょうか。その昔もっと「前へならえ」がうるさく、入学したての一年生が学校とは「前へならえ」をするところと思い込んで、授業中注意されたら立ち上がって「前へならえ」したという話があります。

https://twitter.com/izumium777/status/1401502684352442370

「前へならえ」の昔話は、何度かネタ本にした覚えもありますが、山中恒『子どもたちの太平洋戦争』が出典です。
amzn.to/3uZ2j8Q

最初のツイートの方が指摘されたように、教員が子供を必要以上にきっちり整列させたがるのは、権力を行使する喜びみたいなのもあるかもしれませんが、列のきれいさが教員としての指導力を反映するという思い込みからくる、上司の視線への忖度という面もあるのではと思います。

きれいに列を作りたがるのは、直接的な祖先は16世紀以降の欧州軍隊がやっていた、歩兵による方陣や横隊戦術にあるんじゃないかと思います。これは騎兵突撃への防御、一斉射撃のしやすさのほか、傭兵が戦場で逃亡するのを防ぐという意味もありました。

まあだから、やる気のない奴がサボるのを防ぐ、という意味も整列にはあるのかもしれません。傭兵ではなく御恩と奉公がインセンティヴの日本では、戦国時代に整列させてた話はあまり聞きません。むしろ一番首を取ろうと抜け駆けする奴を抑える方が、軍法で大事だった印象があります。

というわけで、無理に集められた兵隊にきちっと整列を鞭で叩きこんだプロイセンの軍隊でしたが、革命で国民国家を形成し、愛国心による戦意あふれるフランス国民軍の散兵戦術の前に、イエナとアウエルシュタットで大敗を喫しました。無理に並ばせてもボロが出るのが近代。

学校の整列強制を「防災対策になる」と擁護している人も見られましたが、避難する際に「前へならえ」とかさせて列のきれいさにこだわっているうちに津波が来たらどうするんでしょう。無秩序な群衆ではなるほどまずいかもしれませんが、思考停止した整列がその解決になるとも思えません。

そこで思い出される防災というか避難スローガンが「津波てんでんこ」であり、主体的に自分の判断で逃げる、他人と列を作ることにこだわるべきではない、という、昔の知恵のようでいて実はとても近代的なスローガンなんだなあと思わされます。強制整列は啓蒙専制主義段階ですな。

レジの列や避難所での物資配給の列などに応用が利く、という意見もありましたけど、レジで「前えならえ」してたら狂人でしょう。機械的な列づくりではなく、個人として主体的に秩序形成に参加する意思があれば、まあ実用上問題ない列はできるはずです。

整列への執念で私が不気味に感じて恐怖を覚えたのは、日体大の「集団行動」ですね。まさに主体性を放棄して集団のコマとさせる。何のためにこんなことをやるのか。演技終了後の演技者たちの涙も、洗脳されているようで肌に粟を生じさせます。