無邪気にインタビューに答える医師も悪いし、丁寧な報道が必要なのに、まるで因果関係があるように報じるTBSも最悪ですね。

ご遺族の無念はわかりますが、専門家の評価なしに出すべき事例ではない。

【独自】ワクチン接種後に190人以上死亡、遺族「詳細な調査を」
news.yahoo.co.jp/articles/9c43f…
そもそも米国には①VAERS②VSD③CISAという3つのシステムがあり、ワクチン接種後の有害事象を評価しています。

VAERSは有害事象報告制度。

とにかくワクチン接種後に起きた死亡例などの報告を集め、自然発生より増えていることがないかなど、統計学的な解析もしています。
cdc.gov/vaccinesafety/…
VSDは全米9つの民間病院群とCDCの共同プロジェクトで、電子カルテと紐付けることでワクチン接種の有無と診断名を結びつけることが可能です。

VSDの優れているところは、「ワクチン接種者と非接種者の頻度の比較」を行う疫学研究が可能なところです。
cdc.gov/vaccinesafety/…
CISAは報告制度ではなく医師同士の相談システム。

ワクチン接種後の症状について、医師がワクチンの専門家に相談できます。

しかし、このシステムに不審な症例の報告が連続してあがってきたら、VAERSやVSDでより詳細な調査が行われます。

cdc.gov/vaccinesafety/…
こういったシステムに加えて、FDAとCDCの医師が死亡例の評価をしている米国では、「現時点でワクチン接種が原因と判明した死亡例はない」と報告しています。

死亡例だけでなく、若年者の心筋炎以外に増加が懸念されている疾患もありません。

心筋炎は現在詳細評価中です。

cdc.gov/coronavirus/20…
米国では既にワクチンが2億8千万回以上打たれています。

mRNAワクチンに限定しても、2億回以上は確実に接種がされています。

これだけの数が接種された時点で、上記の3つのシステムで得られた知見を全て無視し、日本の死亡例のみで「ワクチンのせいで亡くなったのでは?」と報じる姿勢には呆れます。
厚労省が死亡例を「因果関係が評価不能」としたのは、ある意味科学的に誠実な態度です。

ワクチン接種者と非接種者の頻度の比較がないと、因果関係を示すことはできないからです。

しかし、これは「因果関係がありそう」という意味では全くありません。

ここは注意が必要。
mhlw.go.jp/stf/seisakunit…
また、首相官邸も公式Twitterで

・ワクチン接種が原因で、何らかの病気による死亡者が増えるという知見は得られていません。

・接種後の死亡と、接種を原因とする死亡は全く意味が異なります。

とハッキリと述べています。

こういった専門家による調査を無視し、「ワクチン接種後の死亡」を「ワクチン接種が原因の死亡」と誤解させた医師とメディアは、ものすごく罪深いと思います。

「政府が加速させるワクチン接種。接種との関連が不明のまま亡くなる人がいることも事実です。」

この一文には到底納得がいきません。
また、安全性に無邪気に疑問を投げかけるだけの報道は有害であるということも知るべきです。

ワクチン接種について必要な情報は、メリットがデメリットを上回るかということ。

ワクチンの効果に一切触れず、「ゼロリスクがゼロリスクではないのか」という議論をすること自体が無意味です。
WHOの「新型コロナワクチンの専門的な報道のあり方」にも、「ワクチンの効果を繰り返し伝えること」が重要だと記載されています。

ワクチンの効果は目に見えず、安全性への不安は実感を持って現れます。

なぜワクチンが必要なのか、誤解がないようフェアな報道すべきです。

who.int/news-room/feat…
この提案については、新型コロナワクチン公共情報タスクフォースがWHOと共同でメディアに情報提供を行っています。

WHO西太平洋地域事務局の芝田おぐさ先生の記事もご確認いただきたいと思います。

medicalnote.jp/nj_articles/21…
改めて、ワクチン接種後の死亡例は、ワクチン接種が原因というわけではありません。

人はワクチン接種の有無によらず突然命を落とすことがあります。

米国CDCはmRNAワクチン接種後の死亡とワクチンの因果関係は明らかなものはないとしています。

こういったことが正しく伝わる報道が必要です。
最後に、米国CDCのシステムについては、CDCでワクチン開発に携わっておられる紙谷先生(@SatoshiKamidani)の資料が参考になります。

こちらも是非読んでみてください。

ワクチンについて正確な理解が広まることを期待します。

mhlw.go.jp/content/106010…
もう一点だけ、大事なことです。

この件について、批判されるべきは安易な発言をした医師と、それをそのまま報じたTBSであり、ご遺族ではありません。

ワクチンを打った直後に家族を亡くした方が、ワクチンが原因と思うのは当然です。

今後の調査においてご家族が納得されるような説明が必要です。

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More from @mph_for_doctors

10 Jun
ゼロリスクとは言っていませんし、例えばアナフィラキシーは明確にワクチンのリスクですが、かといって死亡につながる疾患の増加が確認されていないのも事実なので。

科学をねじ曲げて「確かに一定数ワクチンが原因で死にます」と言うわけにもいかないですし、嘘を教えられた側も利益がないでしょう。
ワクチンの有効性と安全性の評価は、専門性が高い厳密な科学的プロセスの元で推論を行っています。

非医療従事者の方々に「私はこう思う」とか「こちらの方が納得感がある」と言われても、やはり困るんですよね。

できるだけ詳細に説明していますので、元のツリーを辿っていただけると助かります。
不信感の根底にあるのはゼロリスクの強弁ではなく、漠然とした専門家への信頼性の欠如でしょう。

例えば医師の給与が平均に比べて高いとか、製薬会社が利益を出してるとかも関係していると思います。

現実には他の業種と変わらず、生計のために社会に価値を提供しようとしているだけなんですけどね。
Read 4 tweets
9 Jun
「体質などで受けられない人がいる」という指摘はピンとがズレていますが、一方で「受けたくないなら辞めてください」というにはもう少し法的な根拠がいると思います。

🇺🇸では現状緊急使用許可であり、これが本承認に変わると、雇用にあたり接種を要求することが可能です。

news.yahoo.co.jp/articles/337e4…
弁護士さんに喧嘩を売るわけではないのですが、一部の方はかなり誤解したままこの議論をされています。

「mRNAワクチンを打てない体質」というのはPEGアレルギーのみで、ものすごく稀なので別途議論するべきです。

個人の意思で打ちたくない人を雇用するリスクを病院が取れるのかという問題です。
つまりは医師、看護師、医学生、看護学生、他の医療に携わる人がワクチン接種を個人の意思で拒み、結果病院内で感染が拡大した時に、合理性に疑問のある個人の意思を守り人権を守るために、社会がそのコストを払うことを受け入れるのかという話です。

少なくとも他のワクチンは接種を求められますね。
Read 5 tweets
6 Aug 20
ハーバード公衆衛生大学院主催のイベント"When Public Health Means Business"第4回。

🇺🇸の尾身先生的なポジションのDr. Fauciがゲストでした。

講演聞きながらメモを取った内容を共有します。

なお、必ずしも網羅的ではないし、意訳も入ります。

出典は下記。

hsph.harvard.edu/coronavirus/co…
まず最初に驚いたのは、Dr. Fauciが午前中に患者さんの診察をしてからこの講演に参加したということです。

おそらくめちゃくちゃ忙しいと思いますが、まだ現役の医師です。

エネルギーとアドレナリンでなんとかやっていると。

お疲れさまです。
1. ここまでのアメリカが危機に陥った理由

・非常に強い人から人への感染力

・アメリカ国内での対応に大きなバラつきがあった

・感染を抑えたといっても一日20,000人の感染者が出ている中でreopenしたのはまずかった

・封鎖と完全開放の中間が必要だったが、一気に開放に向かってしまった
Read 24 tweets
8 Apr 20
BCG仮説について、非常に興味深い2本の論文の解析結果がTwitter上で共有されています。

結果は真逆に近いものであり、解釈は容易ではありません。

関心のある方が多いと思いますので、誠に勝手ながら私の目線で解釈させていただこうと思います。
まず最初に目的。

これは非医療従事者のみなさんが「BCGでコロナが防げる!」と思ってワクチンを打ちに走らないために書いています。

論文の批評(←)が目的ではありません。

SNS上の議論は上手くいかないことが多いので、ヒートアップしたら議論をやめますのでご了承ください。

それでは始めます。
1本目は国ごとのBCG接種政策とCOVID-19による死亡等との関係性をみています。

・赤色が今もBCGを打っている国
・緑色は昔打っていたがやめた国
・青色は今も昔も打っていない国

を表します。

100万人あたりの死者数が、赤色<緑色<青色となっているのは一目瞭然ですね。

Read 12 tweets
29 Feb 20
ハーバード公衆衛生大学院疫学教室のLipsitch教授より

「暖かい季節になったら新型コロナウイルスは勝手にいなくなるというのは間違い」

というお話。

わかりやすさを重視して意訳しました。

Will COVID-19 go away on its own in warmer weather? ccdd.hsph.harvard.edu/will-covid-19-…
トランプ大統領を含めて多くの人が「暖かくなったら新型コロナウイルスの流行は収束する」と言っていますが、本当でしょうか?

端的にいうと、「北半球で気温と湿度があがり、学校が休みの時期に入ると少しマシになることが期待されるが、それだけで急速に収束するとは考えにくい」です。
2003年のSARSは気温が上がって収束した?

→間違いです。

SARSの流行を収束させたのは公衆衛生学的な介入の賜物。

特に感染者の隔離に成功したことが大きいです。

ただ、SARSは重症度が高く、感染力の強い人を隔離しやすかったという側面もありました。

今回も同じように行くかはわかりません。
Read 10 tweets
17 Feb 20
少し頭を冷やしてきました。

まず最初に、ご心配をおかけしたみなさま誠に申し訳ありません。

私個人の発言の甘さ、人間性の未熟さが招いた騒動だと深く反省しております。

この件を振り返るにあたり、今回のCOVID-19の件について私が何を言いたかったかを整理させてください。
私が考えていたことは大きく分けて3つあります。

1点目は人権の問題です。

今回の騒動で非常に多くの方が中国の方に対して差別的な表現を用いられています。

中国人お断りとの看板をかけた飲食店もありました。

こちらでも、学内のラボで中国人を感染者扱いした人物が問題になったりしています。
私は同級生に中国人も多く、彼らのことを思うと胸が痛みます。

また、欧米ではアジア人の区別など期待できないので、私が差別される側に回るという危惧もありました。

例の医師も中国人は拒否しろと言い続け、武漢肺炎という侮蔑的な名称を用い続けています。

これにはずっと怒りを感じていました。
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