”関東大震災までは、全部いっかんづけです。二かんづけなんていうのは戦争たけなわになってからですね。（中略）そうなると、どの店も二個とか三個とかまとめて出すようになってきたんです。”（『面談たべもの誌』 石毛直道） 
吉野寿司三代目吉野昇雄によると、二かんづけ（二個セット）が流行りだしたのは昭和１２，３年、日中戦争の頃からだといいます。
（もっとも吉野昇雄は、『鮓・鮨・すし―すしの事典』においては、二貫漬けが流行ったのは戦後からと主張しています）
（もっとも吉野昇雄は、『鮓・鮨・すし―すしの事典』においては、二貫漬けが流行ったのは戦後からと主張しています）
日比野光敏は『すしの事典』において二個セットとなった理由を複数あげていますが、その一つに、戦争原因説があります。
”次に、戦中戦後の食糧難に起源を求める説。”
”次に、戦中戦後の食糧難に起源を求める説。”
”すしダネが豊富にそろった時代であれば一通りのすしダネを食べているうちに満腹となったが、食材入手が困難になると、全種類のすしダネを握ってもらっても満腹にならない。そこで、ひとタネあたり二つずつ握るようになったというものである。”
しかし、戦後の食糧難が終わっても、二個セットという習慣は残り続けました。
昭和３０年の雑誌『週刊東京』１０月第１週号において、古川緑波は次のように述べています。
”近頃のすし屋は必ず二個握つて寄越す”
昭和３０年の雑誌『週刊東京』１０月第１週号において、古川緑波は次のように述べています。
”近頃のすし屋は必ず二個握つて寄越す”
”少なくとも、戦前は、一個ずつだつたものである。一人前と言うと、二つ持つて来たのは、そば屋の、もり・かけだけで、すしは（タチ席においては）二個出すなんてことは、しなかつたものである。”
”それを、何処でも二個宛ヅケるようになつたのは戦後の現象だ。”
”それを、何処でも二個宛ヅケるようになつたのは戦後の現象だ。”
古川緑波は、二個セットになった理由を次のように考えます。
”すし屋にしてみれば、第一、倍売れるから率がいいし、勘定の手間も省けるから、いいだろうが”
幸寿司主人杉山宗吉や青山大寿司主人大前錦次郎の主張と同じ、効率と勘定の手間という理由です。
”すし屋にしてみれば、第一、倍売れるから率がいいし、勘定の手間も省けるから、いいだろうが”
幸寿司主人杉山宗吉や青山大寿司主人大前錦次郎の主張と同じ、効率と勘定の手間という理由です。
このように二個セットになった理由については、諸説紛々としています。
チコちゃんの「華屋与兵衛説」は捏造された嘘なので論外として、私は消去法により、これら諸説の中から「勘定の手間を省くため」説を推したいと思います。
チコちゃんの「華屋与兵衛説」は捏造された嘘なので論外として、私は消去法により、これら諸説の中から「勘定の手間を省くため」説を推したいと思います。
まず「戦中の食糧難説」ですが、二個セットが始まったのは食糧難の前であり、食糧難が終わった現在も続いていることを考えると、妥当とは言えません。
他に「大きな寿司が小さくなった際に二個セットとなった」説がありますが（『すしの事典』 日比野光敏）、二個セットの習慣はまだ寿司が大きかった戦前から始まっています。
また、「大きな寿司が小さくなったことが原因」ならば、一人前セット（８から１０個）の場合も２個づつ握るはずですが、実際には１個づつ握っています。
「勘定の手間を省くため」説にはこの種の欠点がありません。
また、実際に二個セットで握っていた幸寿司や青山大寿司の主人が、勘定のためであると証言していることも大きいです。
また、実際に二個セットで握っていた幸寿司や青山大寿司の主人が、勘定のためであると証言していることも大きいです。
５月２６日から６月１０日にかけて、戦後の寿司はなぜ小さくなっていったかについて考察しました。
twilog.org/ksk18681912/da…
twilog.org/ksk18681912/da…
女性客が増えた、箸を使うようになった、握りが柔らかくなった等様々な原因が考えられますが、寿司が小さくなった結果、一人が食べる寿司の数は戦前の７個から、現在は８－１０個に増えています。
つまり、勘定のために記憶すべき寿司の数が増えていったのです。
つまり、勘定のために記憶すべき寿司の数が増えていったのです。
吉野昇雄や古川緑波のように、二個セットにして売る寿司屋が戦後増えたと観察する人がいます。
「勘定の手間を省くため」説ならば、戦後そのような寿司屋が増えた理由も説明できるのです。
「勘定の手間を省くため」説ならば、戦後そのような寿司屋が増えた理由も説明できるのです。
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