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2 Nov, 18 tweets, 1 min read
ジョナサン・シルバータウン『なぜあの人のジョークは面白いのか?』(水谷淳訳 東洋経済新聞社)

笑うとき、脳ではどんなプロセスが起こっているのか。
笑いの起源は?進化的な獲得の経緯は?人間にとって笑うことの持つ意味とは何か? ImageImageImage
笑いとは何か。笑いにもいろいろな種があるが、そこに共通する最も一般的な定義はなんだろう?
よく、笑いは「緊張と弛緩」によって起こると言われるが、それでは緊張とはどういうことだろうか。
著者は緊張とは、「不調和の検知」であるとする。
脳ー心の仕事は「予測する」ということだ。予測するーすなわち仮説を立てるということである。
脳ー心は、感覚入力を受けて、絶えず仮説を生成している。物事を認識するとは、そこに客観的に実在するものを受け取るということではなく、「仮説としての対象を計算する」ということなのである。
ユーモアは、この脳ー心の基本的なメカニズムを利用する。
ユーモアを認識するにはまず、以前の経験に基づいていくつかの予想を立て、そのフリに含まれている情報にそれを当てはめる。
仮説とは、さらなる情報と突き合わせて検証する必要のある暫定的な考えのことだ。
そのさらなる情報は、「オチ」によって与えられる。オチの情報を受けて、人は、最初の仮説を修正しなければならなくなる。
「フリ」と「オチ」、この2つの仮説がかち合うことで不調和が解消される。笑いは、フリによる不調和(緊張)、オチによるその解消(緩和)によって引き起こされる。
笑うとき、脳の中ではどんなプロセスが起こっているのか、そのメカニズムを見てみよう。
主に関わっているのは、思考(理解する)、感情(面白がる)、運動制御(笑うという身体行動)の3つのプロセスだ。
ー不調和を検知するのは大脳皮質の二つの領域(右中側頭回と左下頭頂小葉)であることが分かった。不調和を解消するのは、別の二つの領域(左上前頭回と左下頭頂小葉)である。(…)
これらの脳領域は、不調和の検知→不調和の解消→愉快な感覚という神経回路でつながっている。↓
そこから先は、神経活動が視床下部や脳幹に広がって筋肉が動くことで、愉快な感覚が実際の身体的な笑いに変わる。
このような実験によって、人間の脳がユーモアを処理するプロセスの各段階が不調和解消仮説と一致することが裏付けられている。P58-59
ユーモアは、不調和とその解消である。だがなぜ、それが「楽しい」のか。
進化のどこかで、不調和とその解消という神経プロセスが、「楽しさ」の感覚と結びついたのだと考えられる。
それでは、「楽しさ」とはそもそも何だろう。「楽しさ」にはどんな進化的利点があったのだろうか。
「楽しさ」の進化論的な存在理由、それは「楽しさ」が生存や繁殖に繋がる行動を促すものだ、ということだ。端的に、セックスと食事に人を駆り立てるのは、それが「栄養が摂れるから」「子孫を残せるから」ではなく、「楽しいから」なのである。
さて、そもそも「笑う」という行為の起源には、哺乳類、とりわけ社会性の種に共通する「遊戯発声」があった。それは「異常なし」を仲間に伝えるためのシグナルだったと思われる。笑いが伝染しやすいのは、その意味で納得できる。
そののち、ユーモアが笑いの引き金として新たに付け加えられ、もともとの遊戯発声が持っていた、楽しさ、安全性、自発性、伝染性という特徴が引き継がれた。
笑いには進化論的にどんな経緯、意味があるのか。人が笑うとき脳がどのように反応しているのかを見ることで、笑うということの歴史について仮説を立てることができる。
人の体や心が、昔から今のようであったはずはない。それを知ることは、今の体や心もまた、過度的なものだと思い出させてくれる。
笑いは、まず、社会性の哺乳類に共通して見られる「遊戯発声」がベースになっている。仲間同士で「異常なし」を伝えあう機能で、だから笑いは伝播しやすいし、笑いは安心や安全の感覚をもたらして、くつろいだ楽しい気分を喚び起す。↓
後になって、その基盤に、いわゆる「ユーモア」の機能が結び合わされた。
ユーモアは、それ自体は「不調和の検知とその解消」という脳の予測機能の働きに過ぎない。進化のどこかで、それが「遊戯発声」が共有されるときの、くつろいだ楽しい気分と結びつき、現在の「笑う」という行為が生じてきた。↓
著者は、ユーモアが楽しい気分と結びついたのは、異性へのアプローチのためではなかったか、と仮説を立てている。
ユーモアでは、「フリ」も「オチ」も、いわば取るに足らない、バカバカしい意味が好まれる。本格的な不調和は、ユーモアではなく恐怖として体験される。↓
ユーモアは、いわば「戯れ」というフレームを要求するのだ。
男が女にアプローチするとき、ユーモアによって戯れを仕掛けることで、性的な関係を求めていく。そのプロセスが、ユーモアと楽しい気分とを結びつけていったのではないか、ということである。
仮説の信憑性は置いておくとしても、ユーモアの感覚に優れた人は、人に安心感を与え、人間関係の緊張感を緩和する役割を果たすのは確かである。
人の複雑な関係性のなかで、群れが安心の感覚を共有するために、ユーモアという言わば「高次の遊戯発声」が要請されたのは想像に難くない。

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