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4 Nov, 18 tweets, 1 min read
ジョン・グレイ『猫に学ぶ』(鈴木晶訳 みすず書房)

ー人間生活の大半は幸福の追求だが、猫の世界では、幸福とは、彼らの幸福を現実に脅かすものが取り除かれたときに、自動的に戻る状態のことだ(…)
人間がなかなか手に入れられない幸福が、猫には生まれつき与えられているのだ。P6
著者は、モンテーニュとウィトゲンシュタインの哲学は「人間を哲学から癒す」ための哲学だったと説く。
人が何かを考えるとき、その言語には過去の形而上学体系の残滓が散乱している。それらを発掘し、自分たちが現実だと考えていたことがじつは虚妄であると知ることこそが彼らの「哲学」だった。
ー猫に抽象的思考が欠けていることは、猫が人間よりも劣っていることを示しているのではなく、彼らの自由な精神の証である。概括的思考の能力は、迷信的な言語崇拝へと容易に横滑りする。
自分が触れ、嗅ぎ、見ることに頼っている猫は、言語には支配されない。P7
人が、モンテーニュやウィトゲンシュタインのような「反哲学」を服用することで、ようやくその境地が垣間見ることのかなう世界、言語や夢や自己イメージによって曇らされていない濃密な世界に、猫は最初から生きている。
猫は自己イメージを持たない。猫は、1970年にアメリカの心理学者ゴードン・ギャップ・ジュニアが開発したミラーテスト(鏡像自己認知テスト)にパスしなかった。猫は自分の鏡像に関心を示さないか、あるいはそれが他の猫であるかのように反応する。
つまり、猫には欺瞞的な自意識はないのだ。
ー猫は人間的な自己意識を獲得しなかった。もちろん猫だって自分と自分の外にある世界とを識別しているが、世界とやりとりするのは彼らのなかにある自我や自己ではなく、猫自身である。P89
自我を媒介せず、世界に棲みつくこと。著者は猫の倫理は「無私の利己主義」だという。

ー自分と自分の愛する者のことしか考えないという点では、猫は利己主義である。自分のイメージをもたないため、それを保存・拡大しようとは思わないという点では、無私である。P89
猫は自意識を持たず、つねに猫自身だ。
夢を見ることも、後悔することもなく、つねに現在に浸って、あえて言えば生まれつき幸福でいる。人間は自分から逃げ出すことで幸福になろうとするが、猫は自分しかいなくとも幸福だ。猫には孤独がない。
愛猫家は猫を擬人化し、猫の中に自分自身を見出して愛しているのではない。猫があまりに自分(人間)と違うから愛するのである。「犬とはちがい、猫は人間もどきにはならなかった」。猫は飼育種となった後も、野生の頃と殆ど遺伝子が変わっていない。人がいなくなればまたすぐに野生化するだろう。
ー猫は我々人間と交流するし、彼らなりのやり方で人間を愛するが、その存在の最も深い次元では、我々とは全く異質の存在だ。猫が人間世界に入ってきたおかげで、人間は世界の外を見られるようになった。
我々人間は、必死に幸福を追求しても必ず失敗するのはなぜかを、猫から学ぶことができる。P37
さて、人は猫に何を学ぶことができるだろうか。著者は最後にその十か条を挙げている。

ー1.人間に対して理性的になれと説教しないこと。
人間は自分の信じたいことを補強するために理性を用いるが、自分の信じていることが正しいかどうかを発見することはまずない。↓
これは不幸なことだが、これについては誰も何もできない。もし人間の不合理さについて嫌気がさしたら、あるいは危険を感じたら、黙って立ち去りなさい。

2.時間が足りないと嘆くのは馬鹿げている。
時間が足りないというのは、時間の過ごし方を知らないということだ。↓
3.苦しみに意味を見出すのはやめよ

4.他人を愛さなくてはならないと感じるよりも、無関心でいるほうがいい。
普遍的な愛ほど危険な理想はあまりない。無関心でいるように努める方がよい。それが親切に変わるかもしれない。↓
5.幸福を追求することを忘れれば、幸福になれるかもしれない。
幸福は追いかければ見つかるというものではない。何が自分を幸福にしてくれるのか、わかっていないのだから。そうではなく、いちばん興味のあることをやれば、幸福のことなど何一つ知らなくても幸福になれるだろう。↓
6.人生は物語ではない。
人生を物語だと考えると、最後まで書きたくなる。だが、人間は自分の人生がどんなふうに終わるのかを知らない。或いは、終わるまでに何が起きるかを知らない。台本は捨ててしまった方がいい。書かれない人生の方が、自分で思いつくどんな物語よりも遥かに生きる価値がある。
7.闇を恐れるな。大事なものの多くは夜に見つかる。
時に闇の中にちらりと見えた暗示に従った方がいい。それがどこに導いてくれるかは絶対に分からない。

8.眠る喜びのために眠れ
目が覚めたときもっと働けるように眠るというのは、みじめな生き方だ。得をするためではなく、楽しみのために眠れ。
9.幸福にしてあげると言ってくる人には気をつけろ。
幸福にしてあげると言ってくる人は、自分がちょっぴりあなたより幸福だからそう言ってくるのだ。彼らにはあなたの苦しみが必要なのだ。それがないと彼らは生きる意味が減ってしまうからだ。あなたのために生きていると言ってくる人を信用するな。
10.少しでも猫のように生きる術を学べなかったら、残念がらずに気晴らしという人間的な世界に戻れ。
猫のように生きるということは、自分が生きている人生以上に何も求めないということだ。それは慰めのない人生を意味するから、あなたには耐えられないかもしれない。

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4 Nov
デール・S・ライト『エッセンシャル仏教 教理・歴史・多様化』(佐々木閑監修 関根光宏・杉田真訳 みすず書房)

目次を見てもらうと分かるが、40年にわたり仏教を研究してきた著者が、釈迦像、その後の仏教多様化の歴史、仏教に通底する教理の核、修行、現代的な展開について概説する。
今は、日本の家制度と密接に結びついた伝統的な仏教のみならず、禅や瞑想など「今ここ」へ超脱するという思想的実践を通して、実存的に仏教の一端に触れている人も多いだろう。
それらの思想や実践の背景となっている智慧の領野をマッピングしておくことは無駄にはなるまい。
初期のパーリ語経典から、大乗仏教、密教、ヒンドゥー教との習合とインドにおける拡散、解体、そして中国に渡ってからの、法華、華厳、禅、浄土などの多様な歴史的展開、さらに朝鮮、日本、ベトナム、チベット、モンゴルへの波及が一望できてそれだけでも勉強になる。
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2 Nov
ジョナサン・シルバータウン『なぜあの人のジョークは面白いのか?』(水谷淳訳 東洋経済新聞社)

笑うとき、脳ではどんなプロセスが起こっているのか。
笑いの起源は?進化的な獲得の経緯は?人間にとって笑うことの持つ意味とは何か? ImageImageImage
笑いとは何か。笑いにもいろいろな種があるが、そこに共通する最も一般的な定義はなんだろう?
よく、笑いは「緊張と弛緩」によって起こると言われるが、それでは緊張とはどういうことだろうか。
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脳ー心の仕事は「予測する」ということだ。予測するーすなわち仮説を立てるということである。
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16 Oct
森田真生『僕たちはどう生きるか』(集英社)

ーこれまで反復していた自然がかつてのようには反復しなくなり、当たり前にいたはずの生き物たちが次々と滅びていく世界で、心を壊さず、しかも感じることをやめないで生きていくためには、大胆にこれまでの生き方を編み直していく必要がある。P3-4
本書は2020年3月30日(月)から書き始められる日記形式の連載をもとにしている。
コロナウィルスのパンデミックが広がっていき、「危機を阻止しようとする取り組みが、既存のシステムの順調な作動の急激な停止」をもたらした、その時間の中で、アクチュアル且つラディカルな思考が展開されている。
コロナ、急速な気候変動、これらの人間がもたらした旧来の人間の環境の危機的状況のなか、著者は、この状況を乗り越えていくためには、ラディカルな認識の転回が必要だとする。エコロジカルな転回だ。だがエコロジーとは何か。
ティモシー・モートンの「エコロジカルな自覚」という概念が引用される。
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15 Oct
若林理砂『東洋医学式凹んだココロをカラダから整える46の養生訓』(原書房)

人のココロは自分が思っている以上にカラダの状態に影響を受ける。
凹んでるなぁと思ったら、まず空腹、手足の冷え、寝不足、凝り、痛みや痒みといった、カラダの状態に意識を向けてみるといい。
多くの人は、自分のカラダについて、ぼんやりとしか認識していない。
カラダには個性、型がある。
また、カラダは睡眠、飲食、運動を通して、カラダをとりまく環境との、絶え間ない代謝、交換、共鳴の中にある。
ココロは、そのカラダのダイナミズムに伴う現象だ。まず、そのことをしっかり自覚する。
まずカラダの個性、型について、東洋医学では熱ー冷、湿ー乾の軸を交差し、熱湿タイプ、熱乾タイプ、冷湿タイプ、冷乾タイプの4タイプに分類する。
自分がどんな体質なのかを自覚しておくと、気分の浮き沈みの傾向や、その際どんな手当てをしてやればいいか、より明瞭に分かるようになる。
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14 Oct
太田啓子『これからの男の子たちへ』(大月書店)

男らしさ、男性性は、これまで社会的にポジティブな評価を受けてきた資質、能力だった。
もちろん、物事を遂行する上で、それはポジティブな側面も持つ。だが、光があれば闇もある。男性性のネガティブな側面は、これまであまりにも無視されてきた。
問題は、男性性そのものというより、男性のホモソーシャルな社会性のなかで、男性性が唯一絶対の価値として共有され、人間のそれ以外のさまざま美質が抑圧されてしまうことにある。
男性性の優位を競うホモソーシャルな社会の中では、”男らしくない”ゲイや女性は嫌悪され、嘲笑の対象となる。
男は、子供の頃から「誰が最も男らしいか」を競い合う価値観のなかで育つ。「男らしさ」とはどういうことか?
『男らしさの終焉』という著書の中で、社会心理学者のグレイソン・ペリーは、「男性性の4要素」を、①意気地なしはダメ、②大物感、③動じない強さ、④ぶちのめせ、とまとめている。
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13 Oct
『堀内誠一 旅と絵本とデザインと』(平凡社)

コロナ・ブックスで堀内誠一があったので購入。何となくは知っていたが、すごく広大な仕事をした人だったんだなぁと改めて。
特にエディトリアル・デザインの仕事。この人の手がける雑誌はただの情報媒体じゃなくて、雑めく芸術だ。本当に愉しい。
ー雑誌は音楽の組曲のように、いやもっと食事のコースに似ているかも知れません。アペリチフがあり、前菜、アントレがあり、メイン・ディッシュがあり、デザートや食後酒のツマミがあるという形を先ず想像します。↓
そして食べ方の好みに則して、デザートを増やしたり、なかにはチップスばかり集めたカタログ誌風な雑誌も作れるわけです。
いずれにせよエディトリアル・デザインは料理や作曲の工夫に似ています。面白いスケルツオを長くするのもいいが、延々とアダジオを歌いたい気もあるのです。
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