U.1 5/10
pp.19-21
「マーター・リッチモンド(病院)」の「解剖室で臓物の細切れ」云々の憎まれ口で、マリガンがどうやら病院勤めとわかる。
臓物は第4挿話の臓物と響く。
なるほど。スティーヴンの怒りとマリガンの冷淡さが「畜生』で交錯する。
#三月ユリシーズノート
こういうところ、善し悪しではなくやはり読んだ論文などには影響されるのであります。
#三月ユリシーズノート
スティーヴンの母が病院でとちくるって、医者を「ピーター・ティーズル様(sir Peter Teazle)」と勘違いし「キルトの掛け布団のキンポウゲ(buttercup)をむしり取る」ときたが、さあ、「sir Peter Teazle」とは何か!?
#三月ユリシーズノート
ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5…
#三月ユリシーズノート
#三月ユリシーズノート
ファーガスの歌に挟まれた、母親の死の床と「小僧っこなれど、おいらはどろんと、姿を消せるぞ」などの関係は次回ノート。
オマケは郵便船と猫w
#三月ユリシーズノート
Who will go drive with Fergus now,
And pierce the deep wood's woven shade,
And dance upon the level shore?
Young man, lift up your russet brow,
And lift your tender eyelids, maid,
And brood on hopes and fear no more.
Upon love's bitter mystery;
For Fergus rules the brazen cars,
And rules the shadows of the wood,
And the white breast of the dim sea
And all dishevelled wandering stars.
#三月ユリシーズノート
第1挿話でマリガンが胴声で引用するのが下記部分。
And no more turn aside and brood
Upon love's bitter mystery;
For Fergus rules the brazen cars,
この後はユリシーズでは端折られてるが、スティーヴンはその書かれてない三行を、
#三月ユリシーズノート
母自身の思い出の品が列記され、それらが「今はどこに?」と問うていると思わせて、快傑ターコウの歌、
小僧っこなれど
おいらはどろんと
姿を消せるぞ
で、小僧っこスティーヴンは(『肖像』最後で)母の前からどろんと姿を消したことを連想してしまう。
#三月ユリシーズノート
もはや顔をそむけて思い乱れるなかれ(And no more turn aside and brood)
イェィツの原詩のこの前段は、
Young man, lift up your russet brow,
And lift your tender eyelids, maid,
And brood on hopes and fear no more.
#三月ユリシーズノート
#三月ユリシーズノート
#三月ユリシーズノート
和モーゼ・耶蘇余所しく・おれがために折れ、破れて我らがために、はおいておいてw
school kip が「稚児宿」で、このあと頻出する kip を色宿と訳すが、せいぜい安宿くらいの意味ではないかしらん。
#三月ユリシーズノート
戴冠式の歌は、coronation day が給料日のことでもあるそうで、マリガンの他人の給料を当て込んだはしゃぎようがかわいい。(簒奪者め)
また、ここでも金勘定。
スティーヴンの給料が4ポンド=80シリング。
ミリーのフォトガールの週給が12シリング6ペンス。
薄給。
#三月ユリシーズノート
で、『ダブリナーズ』の『出会い』で、ひとり6ペンスの4人分を徴収し、来なかった一人分を罰金にしたのを思い出し、うーん、ジョイスはとにかく四分の一を取り上げるんだなあ、とw
#三月ユリシーズノート
U.1 7/10
p.25
やっとマーテロウ塔の中へ。
スティーヴン、髭剃り器を「クロンゴウズ(学校)で舟形の香入れを運んだっけ」と丸谷文庫『肖像』p.78 を「あの頃とは違うが同じ自分」と思い出す。入れ物の連想連鎖(石鹸泡、胆汁、香)
「鍵は持ってる?」スティーヴンは持ってるが、ブルームは忘れる。
マーテロウ塔の鍵は、二重扉で内鍵はバカでかいそうです。
スティーヴンが持って出てマリガンに簒奪されるのは外鍵。
#三月ユリシーズノート
ヘインズはハンモックから椅子へ。
マリガンは椅子。
スティーヴンは旅行カバン。
椅子は二脚。
この座り方だとスティーヴンが居候っぽく見えるが…。
この後の「家賃は誰が払ったのか」問題に。
#三月ユリシーズノート
マリガン「溶けちまいそうだぜ、(…)蝋燭の言い分があったじゃないか…。おっと、しーッ! その話はもうやめ!」
蝋燭のように溶けそうだ、が何かの不謹慎なジョーク? イカロスの翼が蝋燭のように溶ける? 亡霊蝋燭の流れ?
#三月ユリシーズノート
グロウガン婆ちゃん(誰?)の tea/water の軽口から「in the one pot」を「お茶筒とお尿筒(しとづつ)」として延々とお茶とオシッコを混ぜ合わせる。
第4挿話の tea pot と chamberpot に響いている。
「五行の本文に十頁の注釈をつける」
…それくらいやれと(汗)
#三月ユリシーズノート
グロウガン婆ちゃん、マリガン(アイルランド)の小唄にのせて、
メアリー・アンの婆ちゃんは
人目なんぞはくそくらえ
ペチコートをば捲り上げ…
と、『肖像』の鳥女を揶揄している。
このあたり、マリガンはずっとスティーヴンの『肖像』に否定的な言及。
#三月ユリシーズノート
●ブルームのユダヤ的妄想に登場する老婆
●「ミルク罐の輪に二の腕を通して」=「ティーポットの把手に親指をかけて」
●「とろっとしたミルクを注ぐ」=「どろりとしたクリーム」
●「おれたちの国は(…)馬糞と肺病病みの痰ばかし」=ブルームの裏庭の糞話
#三月ユリシーズノート
「老いてひっそりと、朝の世から入ってきた、もしや遣わされた使者か。(…)牝牛中の絹、かつまた貧しき老婆、ともに昔の名だ。(…)征服者と浮かれた裏切り者の双方に仕える仙女(…)仕えに来たのか責めに来たのか、どっちなのかはわからない」
#三月ユリシーズノート
その流れで、スティーヴンは「おれをこの女は軽んずる」と思うのもよくわからん。そこまで卑屈にならんでも…。
#三月ユリシーズノート
#三月ユリシーズノート
老婆がミルクの値段を正確に計算する原文。
That's a shilling and one and two is two and two, sir.
読書会では、頭の回転よりも身体で覚えた計算ではないかという指摘。
そういう読みを排除する、単位を補足しすぎる鼎訳より柳瀬訳がいいと思う。
#三月ユリシーズノート
U.1 p.31
マリガンが引用する詩は件のアルジー(スウィンバーン)の『The Oblation』(献身)。
これについては下記の小林さん論文参照w
ジョイスへの扉―『若き日の芸術家の肖像』を開く十二の鍵 高橋渡・河原真也・田多良俊樹 編著 amazon.co.jp/dp/4269721502/…
#三月ユリシーズノート
p.32
「戴冠式(給料日)」→「今日は詩人一同、酒宴を張らねばならない日」→「月一の浸り日」→『海酔浴』→「アイルランド全土が湾流に洗われてるよ」
#三月ユリシーズノート
「独知の噬臍。良心。まだここに染みが」と、ヘインズを「良心の呵責を感じているイギリス人」と評しているのは、マリガン? スティーヴン? 視点人物が曖昧になる。
#三月ユリシーズノート
「あたいからもよ、キンチ」とマリガンを女言葉に訳すのは、手をスティーヴンの腕にのせるという仕草からか? 意味は「おれも金は出せない」ということか。
それ以外、p.33が「読めてしまう」のは、きっと見落としがあるから。
#三月ユリシーズノート
#三月ユリシーズノート
ともかく、仕切りに服装がちぐはぐだと気にしているのがスティーヴンなら喪服との関連で納得はいくが、マリガンならなにをちぐはぐだと言ってるのか。まあ、性格はちぐはぐですが。
#三月ユリシーズノート
いよいよマーテロウ塔の外へ。
マリガン「こらお座りだ! わんきゃんうるさいぞ!」は本当に犬がいるのか?
#三月ユリシーズノート
p.36
スティーヴンのハムレット編。前振り。
自分の「くすんだ喪服姿」を第三者の目から見るスティーヴン。
#三月ユリシーズノート