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さて、#新型コロナウイルス#病理解剖 所見の話題で昨日は大変だったようですね👶ちょっとばぶがばたばたしていてあまり世間やタイムラインの動きを確認できていなかったんですけれども。
日本のニュースには所見だけが並べられて、それに対して素人さんがいろいろ言っているようですが、先ほどみつけたこのAFPのニュースはまぁ妥当なことを書いていますね👶headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200226-…
「病変は、重症急性呼吸器症候群(SARS)と類似性がある部分と違う部分がある」とのこと👶
あまりよろしくないとおもう産経の記事はこっちね👶
headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200304-…
さて、そもそも論として、病理医というのは病気でお亡くなりになった方を解剖する、病理解剖(剖検; ぼうけん、autopsy)というものも仕事の一つとしてとても重要です👶ばぶも200例以上やっています
病理解剖は、どんな病気で亡くなった方でも基本いたしますが、異状死という状況だと医療事故や犯罪などの可能性があるので法医学者が行い、そちらとはちょっと解剖としてもやり方や見るポイントが違います👶
病理解剖では、病気の診断、病気の状態、亡くなった時の全身状態・各部位の状態、病態の考察などまで行う、つまり、亡くなった時、病気はどういう具合であったか、なぜ亡くなったか(間接・直接の死因)などの究明を目的とします👶
日本病理学会のこのページにも解説があります👶
pathology.or.jp/ippan/pathdiag…
さて、病理解剖は、亡くなった方について行われるので、病気の最も末期の状態を観察することになります👶なので、基本的に非常に病気が進んでいるか、亡くなるような突然の大きな病変があったりすることが多いのです。もちろん老衰などの穏やかに所見の少ない死因もあります。
病理解剖というのはすべての臓器を順番に見ながら取り出していって所見をとり、さらにサンプルを作成して顕微鏡で観察して全身の状態を把握し診断していくものです👶
人が亡くなるときというのは全身状態は悪くなっていることがもちろんおおく、様々な臓器に所見が現れてきます👶
例えば心筋梗塞で亡くなった人の解剖の場合、心臓だけに所見があると思われる方もいるでしょう👶しかし実際には、心不全が起こるため、肝臓はパンパンに腫れ、肺には水があふれ、腎臓も膨らみ、人工呼吸器など使えば脳が溶けていたりします。
そのように全身に様々な所見がでるのですが、感染症の解剖の場合も同様です👶免疫系は激しく反応しているため細胞が増えたり、時に逆に減ったりすることもありますし、感染のある臓器では炎症の所見が強く取れるほか、全身状態がわるくなれば全身に所見があります。
さて、あまりよろしくない方の産経の記事ですが、まず題名が「新型コロナ 心臓、肝臓、脳にも異常」ですね👶上記の説明のように、だからなに、という題名です。亡くなった方では全身に所見がでることは普通だからですね。
「肺のほか脾臓(ひぞう)などのリンパ系器官、心臓や肝臓、腎臓、脳組織などにも異常がみられた」というのも上記の理由で別におかしくないことは簡単にお分かりいただけると思います👶
「肺では肺胞内の気体が減少・消失する現象がさまざまな程度で起こり、肺組織の出血や壊死(えし)もみられた」とありますが、これは肺炎の重症なものやARDSという状態では普通によくみられます👶
「リンパ系臓器の脾臓の顕著な縮小やリンパ節細胞の壊死も確認」についても感染症による死亡では別に珍しいことではありません👶解釈がかかれていない記事ですが、これをもとに、「やはり他の病気より激しいー!」「凶悪ウイルス~」というのは妥当ではないことがわかりますね。
良い方の記事、AFPでは、「病変は、重症急性呼吸器症候群(SARS)と類似性がある部分と違う部分がある」としており、過去の経験を活かしているように思います👶
「肺の断面に粘液性の分泌物が見られる」というのは上記の通り重症肺炎やARDSでは普通のことであり、特別ではないですが、治療上はよく注意が必要になりますね👶
「病変は肺の損傷にとどまらず免疫系統やその他の器官にも及んでいるが、具体的には臨床医との意見交換が必要」というコメントもわかりやすいですね👶感染症ですから免疫系統にも異常はでますし、臨床経過と照合して全体像を把握するのが大切です。
さらに、「2次性心筋症の可能性は比較的小さい」と述べられており、心臓の所見は大きなものではなかったのかなと思います👶心筋炎などについてはもっと所見がないと何とも言えませんね。
「新型コロナウイルス肺炎はSARSと類似性もあり、また独特な点もあるので、今後、これを解析するつもり」とのことで今後の報告が待たれます👶
SARSの解剖例についてはJEMのこれがよくまとまっています👶
rupress.org/jem/article-lo…
亡くなるような重症例では、SARS-CoV は全身にひろがりえること、様々な細胞に感染することから、ウイルス血症も怒っていることが推測されます👶
ウイルス血症というのは重症なときなどに、血液中にウイルスが流れる状態を言いますが、これは今回の新型コロナウイルスでも早い報告からRNAaemia が報告されているほか、たの報告でもあり、起こりうることです👶
thelancet.com/journals/lance…
また新型コロナウイルスの場合には糞便中や尿中にもウイルスが確認されていることからも自全身にウイルスが回ることも普通にありえると思います👶
これは、このウイルスが特殊なのではなく、インフルエンザや麻疹、ヘルペスウイルスなどでも起こりますが、ウイルス血症がひどくなると、免疫反応も強くおこります👶こうした状況で「サイトカインストーム」なども起こります。
サイトカインストームについては、免疫の制御できない過大な反応と考えていただければいいのですが、これも感染症の重度な場合や死亡例では起こっていることが多い現象で、この新型ウイルスに特別なことでは全くありません👶
というわけで何となく呟いてきましたが、❶病理解剖では多くの所見がでる、それはどんな病気でもなくなる場合を見ているわけで、多臓器に影響が及んでいることは珍しくない、ということ👶
❷感染症など炎症がつよくおこる病気ではとくに多臓器に影響がでたり、免疫系の異常が認められることは多く、特別なことではないこと👶
❸この病理解剖をもって、新型コロナウイルスがインフルエンザよりはるかに恐ろしいとか、全身をむしばむ特別なウイルスであるとは全く言えないこと👶などはお分かりいただけるかと思います。
病理解剖は重要な診断の手段ですが、やはり一部の所見だけで発表するのも良くないですし、報道も病理解剖の普通の状況を知らずに発表だけを馬鹿みたいに流してはいけませんね👶そして別にこの病理解剖の結果は特別ではないことは再度強調しておきたいと思います。
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